女性向け風俗店を経営 海自幹部がブログに書いていた「ありえない内容」とは

女性向け風俗店を経営 海自幹部がブログに書いていた「ありえない内容」とは

日本初のイージス・システム搭載艦として1993年に就役した護衛艦「こんごう」。かつて1佐が艦長を務めていた 出典:海上自衛隊ホームページ

 2月6日発売の「 週刊文春 」で、衝撃の文春砲が炸裂した。数々の護衛艦の艦長を歴任した海上自衛隊の1等海佐が、公務のかたわらで女性向け性風俗店を16年間にわたって経営していたというのだ。自衛隊のスキャンダルについてちょくちょく調べていた筆者も、これには驚かされた。

「週刊文春」の記事中では風俗店経営の事実を中心に書かれていて、LINE上で艦艇の航行情報やスケジュールを漏らしていた点について詳細は触れられておらず、こちらは続報を期待したい。

■海上自衛官と推測可能なブログ内容

 週刊文春の記事をうけ、筆者もこれら1佐のキャリアにおける重要イベントと、経営していた風俗店サイト・ブログの書き込みや営業情報と突き合わせを行うことにした。サイトやツイッターアカウントは文春記者が本人を直撃した後に削除されたそうだが、一部はインターネットアーカイブに記録されていたので、それを参照している。

 なお、本稿は文春オンラインに掲載されているが、筆者は「週刊文春」の取材者とは別に動いている点は了承いただきたい。

 問題の1佐は、護衛艦『やまゆき』、『まきなみ』、『こんごう』、練習艦『かしま』、補給艦『ましゅう』と、計5隻で艦長を歴任している他、司令部勤務や教育に関与している。筆者が目にした海上自衛官のキャリアの中で、ここまで多くの艦艇の艦長を務めた人物は記憶にない。過去の海上幕僚長でも、だいたい2隻くらいしか艦長を経験していない。

 頻繁に更新されていた店舗ブログを見ると、企業のそれというより、中年のエロ親父のブログといった風情だ。大半が性愛(お上品な表現にした)に関するもので、中年の自慢ともつかない性愛話を読まされるのは苦痛以外の何物でもないのだが、それに混じった思い出話などから、個人情報もちらほら垣間見える。

■実態は本人が1人で回していたようだ

「入省」といった公務員を匂わせる記述や、「僕の仕事は、軍隊や葬儀屋と一緒で、『無くて良いのならば、それに越したことはない』ものである」という記述から、自衛隊関係者かと推測できる人は多いと思う。また、数年に一度引っ越しを繰り返している記述や、営業場所としてよく登場する東京(横浜)、京都、広島、佐世保という地名を見れば、少し詳しい人なら海上自衛隊の幹部クラスだと推測できる。これら4都市は、横須賀、舞鶴、呉、佐世保といった、海自の拠点の近くかそのものだ。

「風俗店を経営」とされているものの、艦上勤務では長期にわたってブログが更新されないことも度々あり、営業場所が転勤と共に変わっていたところを見る限り、実態は本人が1人で回していたようだ。純粋な経営者だったら、転勤にとらわれない営業もできたのだろうが、ブログ内の情報は書いた当人の表の顔を伺わせるに十分だった。もっとも、「週刊文春」によれば、客に自分が幹部自衛官だと明かしていたようなので、それ以前の問題なのだが……。

■北朝鮮ミサイル警戒中にも営業ツイート

 この1佐がイージス護衛艦『こんごう』艦長を務めていたのは2012年7月17日から2013年12月2日だが、この間に重要な任務に就いている。2013年4月から6月にかけて、北朝鮮のミサイル発射に対する破壊措置命令のため、『こんごう』は日本海で警戒にあたっていたが、その最中の5月9日に「4月から海外出張が続いており、まだ帰国予定がたっていません。予定が決まったらお知らせいたします。」とツイートしているのだ。

 緊迫化でも風俗営業を忘れないのは大した度胸だが、少々引っかかる部分があった。

 護衛艦に個人のスマートフォン用のWi-Fiスポットが設置されるようになったのは2018年からで、それ以前に護衛艦からインターネットにアクセスするには、共用のパソコンから衛星通信を介していた。携帯の電波が届かない海上である以上、それを利用したと思われるが、だとすれば官品のパソコンと通信環境で副業の営業活動をしていたことになる。

 また、どうやってツイッターにアクセスしたかも問題だ。艦内からインターネットにアクセスできるといっても、通信量の大きくなる動画サイトや、SNSに対しては制限がかけられている。たまたま陸に上がっていたか、他の人間にツイートさせたのなら話は別だが、このあたりは自衛隊活動の根幹にもかかわる。調査の必要があるのではないか。

■戦没者遺骨を運びながら……

 また、練習艦『かしま』艦長時代の2014年4月28日には、店のブログに「5/10-20の間、東京、横浜に出張します。海外出張前の私の国内でのサービスも残り1ヶ月を切りました。次にサービスを再開するのは秋になると思います。」と書き込んでいる。

『かしま』は5月22日から10月24日にかけて、156日に及ぶ遠洋練習航海に出ている。普段は広島県呉市を母港とする『かしま』だが、練習艦隊は東京の晴海から出航するので、その準備で東京に出た際に営業を行っていたのだろう。5月21日には「日本を離れて、はや一日。」と書き込んでいるが、出航は22日なので恐らく偽装のつもりと思われる(大枠の期間が一致しているので、数日程度の偽装はあまり意味がないと思うが……)。

 この練習艦隊では、厚労省の遺骨収集帰還事業で収集されたソロモン諸島での戦没者遺骨を、練習艦隊が日本へ送還する初めての試みが行われている。この大任を担ったのが『かしま』だった。ソロモン諸島の首都ホニアラに寄港した練習艦隊は、戦没者の遺骨137柱を『かしま』に収容した。10月24日の帰国時には晴海で遺族も出席した引き渡し式典が行われ、厚労省に遺骨を引き渡している。

 この遺骨を輸送中の10月5日、艦長は「もうすぐ帰国します。28日(火)から国内でのサービスを再開します。」と、帰国の4日後からの予約を受け付ける旨のツイートを行っている。歴史的な任務と荘厳な式典とは対照的である。

■「ヒトラーの予言」を大真面目に取り上げる

 ここまでは公務の裏で行われていた営業活動について触れたが、それ以外にも頭を抱える内容があった。中でも衝撃だったのが、「ノストラダムスの大予言」で知られる五島勉が発端の「ヒトラーの予言」を、『こんごう』艦長時代の2013年10月に大真面目にブログに取り上げていたことである。

 1999年7月に人類が滅亡するとしたノストラダムスの大予言は、前世紀末の多感な小中学生を不安にさせたものだが、1999年7月が過ぎるとあっという間に忘れ去られた。その五島勉の予言本の中の話を2013年に大真面目に取り上げたのが、まさか北朝鮮のミサイル警戒にあたっているイージス艦の艦長だとは考えたくない。

 自衛隊高官の歴史認識などが問題になった例は過去にもあったが、「ミサイル撃たれたら破壊しろ」と命じられた現場責任者が、出所の怪しいヒトラーの予言を信じていたのは、個人的にはより破壊力があった。

 近年、国家主導のフェイクニュースによる世論工作が問題になっている中、教官も務めた幹部自衛官がこの有様では、自衛隊は大丈夫なのか真剣に危惧している。情報保全への意識の低さも目を覆うばかりで、幹部教育の再考の必要があるのではないか。

■あくまで氷山の一角に過ぎない

 ここまで見てきたものだけでもアウトなのだが、営業の実態や客に漏洩した情報の全貌はまだ明らかになっておらず、あくまで氷山の一角に過ぎないだろう。2019年に護衛艦『あさぎり』艦長が、フェイスブックに海賊対処活動中の寄港情報を書き込んだとして更迭されており、艦長経験者の不祥事が相次いだ形になる。今回の1佐の件も今後の調査を待ちたいが、その全貌が明らかになった際、より頭を抱えることになるのは確実だろう。

「週刊文春」の記事でも言及されているが、1佐は補給艦『ましゅう』艦長時代、部下の不祥事が相次いでいる。その中の1つ、2017年に処分が公表された海曹長が部下の女性自衛官を殴った事件では、「服務指導を徹底させ、再発防止に努める」との艦長コメントが報じられている。

 服務指導が必要だったのは誰だろうか。

(石動 竜仁)

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