「密着度が高い独特の礼拝」で新型コロナ感染拡大へ 韓国「新天地教会」の実態

【韓国で新型コロナ感染者が急増】「新天地教会」の信徒ら感染 礼拝は高い密着度

記事まとめ

  • 韓国では新型コロナ感染者が急増、政府は危機段階を「警戒」から「深刻」へ引き上げた
  • 感染拡大が深刻といわれるのは大邱市で、多くが「新天地教会」の信徒やその関係者
  • 新天地教会の礼拝は、手を取り合ったりするなど密着度が高いことで知られている

「密着度が高い独特の礼拝」で新型コロナ感染拡大へ 韓国「新天地教会」の実態

「密着度が高い独特の礼拝」で新型コロナ感染拡大へ 韓国「新天地教会」の実態

大邱市の新天地教会前での防疫作業 ©Photo by Handout / Daegu Metropolitan City Namgu / AFP

「先週まで会議でマスクをしていなかった人も今週からは全員着用。会社からは不要不急の出張は自制し、ここ1〜2週間は業務に差し障りがなければ休みを積極的にとるか、時差出勤や在宅勤務をするように言われました。

『新天地教会』と聞いただけで、すわ感染か、と思ってしまう。まずは大邱市での感染が収まらないことには落ち着きません」(中堅企業に勤める50代会社員)

 18日に韓国国内で31人だった新型コロナ感染者数は20日から毎日100人、200人単位で増え続け、26日には1000人を超えた。急増が明らかとなった23日に韓国政府は新型コロナ感染症の危機段階を「警戒」から最高段階の「深刻」へと引き上げ、1日の検査可能数を7500件から、国と民間の機関合わせて1万件にした。

 同日には1日8000件あまりの検査を行ったと伝えられて、週明けから雰囲気は一変。韓国では緊張が続いている。

■独特な礼拝で感染が爆発的に広がったとみられる「新天地教会」

 なかでも、もっとも感染拡大が深刻といわれる地域は韓国第4の都市、大邱市だ。大邱市の感染者は韓国全体の感染者数のおよそ6割を占め、さらにはそのほとんどが新興宗教「新天地イエス教証しの幕屋聖殿(以下、新天地教会)」の信徒やその関係者であることが確認された。

 これを受けて青瓦台の国民請願掲示板には22日、「新天地教会を強制的に解体させることを請願します」という請願が登場。26日までに81万人以上の署名が集っており、文在寅大統領自らも「新天地教会の大邱教会閉鎖よりもさらに強い対策が必要」(ニューシス、2月20日)と異例の言及をしている。

「新天地教会の独特な礼拝で感染が爆発的に広がったとみられています」(宗教に詳しい韓国紙記者)

 大邱市で初めて新型コロナ感染が確認された信徒は確定診断を受ける(17日)まで2回礼拝に参加したことが分かっている。前出記者の話。

「新天地教会の礼拝はプロテスタントなどの教会とは違い、信徒が男女に分かれて、肩が触れるような間隔で床に座り、頻繁に声を出したり、手を取り合ったりするなど密着度が高いことで知られています。

 また、信徒獲得のためのノルマがあるといわれていて、布教活動が活発。信徒は全国を歩き回っている。礼拝という閉鎖空間での密着度の高さや、全国各地で行われている布教活動により感染が広まったのではないかとみられます」

■「我々は最大の被害者」と公式発表

「新天地教会」は1984年、教祖である李マンヒ氏が創設し、韓国全国におよそ1100カ所の教会や付属施設、機関を持つ。信徒は自称約24万人(韓国政府は約21万人と推定)。海外での布教活動も活発で、最近では中国・武漢にも進出していたという。

 李マンヒ総会長は大邱市で信徒から感染者が出ると、「昨今の病魔事件は新天地が急成長したことを悪魔が阻止しようとして起こしたこと。このすべての試練、迷いに勝ちましょう」(朝鮮日報、2月22日)とSNSで信徒によびかけたと伝えられた。

 大邱市には9300人あまりの信徒がおり、韓国政府は新型コロナ感染症の症状が見られる信徒全員の検査を進めていたが、「家族にも新天地教会の信徒であることを隠している人も多く、連絡がとれない信徒も700人近くいた」(同前)ことから、全国の信徒の名簿を提出することを新天地教会に求め、26日、確保したと伝えられた。全信徒の検査を進めるともしている。

 23日、ソウル市内にある新天地教会の礼拝所を訪ねると、21日から閉鎖され、すでに3回の防疫作業が行われたと同じ建物で働く人が教えてくれた。ドアには集会などを自制するよう通達するソウル市の紙が無造作に貼り付けられていた。

 前出の人物は、「ここ数年で教会が借りる階が増えていって、出入りする人が目に見えて増えていた。特に、中学生から大学生までの若い層が多く、いつ学校に行っているんだろうと思うこともありました。教会に泊っているのか、朝、学校に出て行く子とすれ違ったりもして、異端になぜのめり込むのかと歯がゆかったです」と話していた。

 建物の前で話を聞いていると、高齢の女性が話しかけてきて、聞けば新天地教会の信徒で80代。閉鎖されていると話すと、心底困ったような顔をして、「十一租(収入の10分の1を献金すること)を収めなきゃいけないのに」と途方に暮れていた。

「閉鎖の連絡はなかったのか、礼拝場所が変わったのではないか」と聞くと女性は急に押し黙ってしまった。新天地教会では、大邱市の感染拡大を信徒のせいとされていることに「我々は最大の被害者」と公式発表しており、「信徒には余計な話をしないよう箝口令を敷いている」(同前記者)といわれていたが、事実のようだった。

■「お客さまより従業員のほうが目立ちます」

 25日には、大邱市の保健所のチーム長が実は新天地教会の信徒であり、新型コロナウイルスに感染していることが確認され、さらなる衝撃が走っている。また、新型コロナウイルスで死亡したとされる人の半分以上が、李マンヒ総会長の実兄が数日間入院し、葬儀を行った病院からでている。

 新型コロナウイルスの感染拡大は韓国社会に大きな影響を及ぼしている。

 韓国全国の小学校から高校は新学期が1週間ほど延期され、大学では2週間延期するところも出てきた。保育園も可能なかぎり休園するよう、26日、自治体が動き出している。

 司法では裁判が続々と延期されており、行政では、国会議員らが新型コロナに感染した人が出たイベントに参席したとして、24日から2日間、防疫作業のため国会が閉鎖された。国会議員らは検査の結果、陰性だったというが、潜伏期間を考えると安心はできないという声もあがる。

 大型イベントも次々と中止または延期された。日本でも人気のK-POPスター「TWICE」も3月に行われる予定だったソウルでのコンサートを中止している。

 観光業界が被った打撃は大きい。アシアナ航空は中国路線の運航が79%、東南アジア路線も25%減少し、経営が危機的状況にあるとして18日、代表や役員が辞表を提出した(韓国経済2月24日)。大韓航空ではイスラエル-韓国便に乗った客席乗務員1人に感染者が出て、対応に追われている。旅行のキャンセルが続き、大手旅行会社でも週3日勤務にするところが出てきている。

 ソウル市内の観光のメッカ、明洞も人はまばら。「売り上げが壊滅的に落ちた」と話すファスト化粧品店もあった。明洞にある百貨店の地下フードコートも、お昼時だというのに空席が目立つ。食品売り場で聞くと、「お客さまより従業員のほうが目立ちます」という返事が返ってきた。

■軽症のうちに治療、防疫作業の徹底も方針とした

 韓国政府はいまや市中感染の段階にある新型コロナウイルス対策として、今後4週間のうちに大邱市での感染拡大を止めることを目標とし、検査を進めて軽症のうちに感染者を確認、治療していく一方で、防疫作業を徹底する方針を発表した。26日には、車に乗ったまま検査できる「ドライブスルー方式」の検査場が登場し、話題になっている。

 25日には、日本外務省から在韓日本人に、大邱および隣接している慶尚北道清道郡への不要不急の渡航を止めるようメールが送られてきている。

 韓国でもここ1〜2週間がヤマといわれる。

(菅野 朋子)

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