「立皇嗣の礼」延期 なぜ安倍官邸はコロナ禍での決行をギリギリまで模索したのか?

「立皇嗣の礼」延期 なぜ安倍官邸はコロナ禍での決行をギリギリまで模索したのか?

秋篠宮 親王文仁御誕生日記者会見 11月30日 53歳 親王妃紀子 ©?JMPA

「新型コロナウイルスの猛威を受けて東京五輪も延期となり、ついには緊急事態宣言まで発令されましたが、『立皇嗣の礼』の延期決定がぎりぎりまで引き延ばされていたのには、実は理由があると宮内庁周辺では言われています」

 ある宮内庁関係者は、こう語る。「立皇嗣の礼」とはもちろん、秋篠宮さまが事実上の皇太子に当たる皇位継承順位第1位の皇嗣になられたことを国の内外に示す儀式。憲法で規定された国事行為として行われ、御代替わりに伴う一連の皇室行事を締めくくるものだ。

■どんどん簡素化されていった儀式

「立皇嗣の礼は当初、皇嗣となられたことを秋篠宮さまが自ら国の内外に宣明するメインの立皇嗣宣明の儀と、その後に天皇・皇后両陛下にご挨拶を行う朝見の儀、祝宴に当たる宮中饗宴の儀の3つが執り行われる予定でした。しかし、コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、政府は3月18日、735人前後の賓客を招いて2回に分けて4月21日に行われる予定だった饗宴の儀を中止することを決めました。また同時に、宣明の儀の招待客数も約350人から約50人に減らすことも決めています。

 立皇嗣の礼にパレードは設定されていませんでしたが、儀式の参考としている1991年2月の天皇陛下の立太子の礼では、陛下の乗った車が車列を組み、事実上のパレードのようになっており、儀式を終えて当時の赤坂御所に帰られる沿道には約2000人が詰めかけました。

 しかし、立皇嗣の礼では秋篠宮さまが宮邸のある赤坂御用地と儀式が行われる皇居を車で往復する際、サイドカーなどを伴う車列を組まずに走行することも、3月30日に決まりました。沿道に集まった人々が感染することを防ぐためです」(同前)

 仕方がないこととはいえ、コロナ禍の影響で御代替わりに伴う一連の儀式のフィナーレは、どんどんと簡素化されるという経緯をたどった。政府関係者が話を継ぐ。

■じつは安倍政権の外交実績は“無得点”

「安倍(晋三)総理はいま、追い詰められています。徴用工問題を契機に『最悪』と言われるまでに悪化した日韓関係は修復の糸口も見えない状態です。日露交渉でも北方領土2島の先行返還や平和条約の締結といった成果を挙げることは、もはや夢物語。北朝鮮の拉致問題も拉致被害者の帰国どころか、無条件での日朝首脳会談についても無視され続けています。拉致被害者の有本恵子さん(拉致当時23歳)の母・嘉代子さんが2月に94歳で亡くなったことで、拉致被害者家族の心は安倍総理からどんどん離れています。

 総理が恐れているのは、既に87歳となり最近は特に思わしくないと言われている横田めぐみさん(同13歳)の父・滋さんの体調です。めぐみさんのご両親は拉致被害者家族のシンボル的な存在です。もし万が一の事態となれば、もう総理は『拉致』を軽々に口にできなくなります」

 そこに来て、さらに終わりの見えない新型コロナウイルスへの対応という大きな十字架を背負うこととなってしまったのだ。

「108兆円もの緊急経済対策を打ち出しても、目の前に迫る未曽有の不況の恐怖は拭えません。また、米中の橋渡し役を担うために中国の習近平国家主席を国賓として招く算段も、コロナ禍で延期を余儀なくされ、総理在職日数では歴代1位とはなりましたが、大好きな外交では“無得点”という最終結果が見えてきてしまってもいるのです」(同前)

■生前退位で「憲法改正」も絶望的に

 本当に来年、五輪が開催できるのかも危うい状況だ。そしてなんと言っても、安倍総理が政策の一丁目一番地としてきた憲法改正は、コロナ禍の前に在任中の実現は絶望的というのが衆目の一致するところだろう。「安倍一強」などと呼ばれるほどの長期政権となりながらも、憲法改正に向けたタイムスケジュールが一切動き出さなかったのは、なぜだったのだろうか。

「やはり、2016年7月に表面化した上皇陛下の生前退位のご意向が大きかったと言えるでしょう。7月13日にNHKがスクープしたこのニュースは、安倍政権の動きをガチガチに縛ることになりました。そして8月8日、自らのお言葉で陛下がお気持ちを表明されたことで、安倍政権は生前退位を実現させなければならないという重い課題を与えられました」(同前)

 憲法で禁じられている天皇の政治的発言には当たらないという理論武装に始まり、生前退位を認めるための特措法の制定、皇室の新たな制度設計、生前退位の時期、元号の選定、そして一連の御代替わりの儀式と、解決すべき問題は山積みで、憲法改正に注力する余裕はなかったというのが実情なのだ。

■NHKに情報をリークしたのは秋篠宮さまだった?

「一方で安倍官邸はNHKに情報をリークしたのは秋篠宮さまだったと考えています。事実、そういった情報が当時、官邸に上げられていたそうです。このため、秋篠宮さまの事実上の側近トップだった宮内庁の宮務主管がわずか2年半の任期で退職しています。前任者が約10年間、務めていたこともあり、政府内では詰め腹を切らされたと受け止める向きが多かったといいます。

 上皇陛下は天皇時代、憲法改正には前のめりであるにもかかわらず上皇陛下が希望した女性宮家創設には後ろ向きだった安倍総理を忌避されていたと言われています。そのため、総理は上皇陛下を苦手にしていたとも噂されています。平成時代に上皇陛下の代弁者としてさまざまな発言をされてきた秋篠宮さまを、総理は疎ましく思っていても不思議ではないのです」(同前)

 安倍官邸が秋篠宮さまを快く思っていないから、立皇嗣の礼が簡素化されていったということはないだろう。簡素化はあくまでも、新型コロナウイルスの集団感染を避けるのが目的であったと考えるのが妥当だ。

■生前退位の儀式を早く終えたかった安倍首相

「確かに立皇嗣の礼が簡素化されていったのは、新型コロナウイルス以外に理由はありません。ただ、安倍総理には『延期』という選択肢は、基本的にはなかったんじゃないかと思います。それはやはり、一連の生前退位に関連する儀式を早く全て終えたいという思いがあったからではないでしょうか。言葉は悪いですが、多少内容がしょぼくなっても、立皇嗣の礼はさっさと終わらせたいというのが総理の本音だったように感じます。延期の決定がここまで遅れたのは、そういった事情があったからでしょう」(同前)

 4月7日に緊急事態宣言が出されたことを受け、菅義偉官房長官は9日の記者会見で19日に予定されていた立皇嗣の礼について「どのように行うべきか、検討中だ」と述べ、それでも予定通りの日取りで実施する方向に含みを残した。10日なって菅長官は、ようやく延期の方向性を示したが、最終決定は結局、14日にずれ込んだ。その原因の一つが、憲法改正への道筋を阻害されたことに対する総理の“怨念”にあるのだとすれば、呆れるほかはない。

(朝霞 保人/Webオリジナル(特集班))

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