京王線の終着駅「降りたのは5人だけ…」 緊急事態宣言で“GWのド定番”高尾山はどうなった?

京王線の終着駅「降りたのは5人だけ…」 緊急事態宣言で“GWのド定番”高尾山はどうなった?

京王線の終着駅「高尾山口駅」。例年のGWは多くのハイカーで賑わうが……

 東京都民にとっての憩いの場、誰もが知っていて多くの人が一度は登ったことがある山……というと、だいたいが高尾山を挙げるだろう。京王線に乗ってどん突きの高尾山口駅からケーブルカーに乗り継いで頂きへ。山登りと言ってもそれほどハードなものではなくハイキング気分で行けるし、ガチ勢であれば麓から急坂の登山道を自力で登る選択肢も用意されている。高尾山口駅からの道すがらには土産物店や名物の蕎麦屋もあって、ちょっとした日帰りレジャーにはピッタリなのである。

 と、このあたりは今更説明されなくても皆さんよくご存知のことでしょう。ところが、今年のGWはコロナに覆われてしまった。高尾登山どころではない、緊急事態宣言下の東京である。いつものGWならばたくさんのハイカーたちで賑わっているであろう京王線のどん突きの駅は、いったいどうなっているのだろうか。「自粛をしない人が多くて困るよね」という風潮もある中で現実をこの目で見るべく、細心の注意を払い、高尾山口駅を現地取材した。

■レジャー客のまったくいない京王線

 高尾山口駅に向かうには、中央線で高尾駅に行って京王線に乗り換えるか、ハナから京王線の高尾山口行を乗り通すかのどちらかである。やはり正統派は京王線じゃないかと思うので新宿駅からそちらに乗った。

 GW最終日、緊急事態宣言に加えてさらに天気もどんよりとあってか、車内に人はまばらである。といっても高尾に近づくまでの京王線は東京郊外を走る生活路線。座れないというほどではないが、それでもポツポツは乗っている。途中に停まる調布駅や府中駅、聖蹟桜ヶ丘駅あたりで乗ったり降りたり。ただ、去年のGWだったら満載だっただろうレジャー客の姿はまったく見られない。当たり前である。

 終点に近づくにつれてすっかりがらんどうになった電車はニュータウンを抜けて高尾駅、そして高尾山口へ。高尾〜高尾山口間はすっかり山の中を走る。高尾駅がそもそも中央線において東京の限界のような位置づけだから、そこより先に分け入る京王線はもはや山岳路線の趣である。東京のどん突きに向かうような印象である。実際には地図を見ると南西の端っこに過ぎないのだが、まあ山を越えれば神奈川、そして山梨だから間違いではない。

■高尾山への登山客は……?

 高尾山口駅で降りたお客は5人くらい。くらい、というが数えたので間違ってはいないだろう。

 新国立競技場や高輪ゲートウェイ駅でもおなじみの隈研吾先生がデザインを手掛けた立派な駅舎を出ると、駅前にはちょっとした広場とトリックアート美術館のようなものがある。駅の裏手には温泉施設もある。が、もちろんどちらも営業をしていない。5人くらいの降り立ったお客は高尾山とは逆の方向に消えていったから、登山客などではなく地元の人なのだろう。

 小さな川沿いをケーブルカー乗り場に向かって歩く。その途中には土産物店やそば店が連なる一角があるが、すべて店を閉じている。とうぜんだが、誰も歩いていない。ここを歩いていることそのものが罪に感じられるような空間である。東京でいちばん有名な山の登山口に、GWに人っ子ひとりいない。これがコロナ禍、緊急事態宣言下なのである。

 ものの5分程度でケーブルカー乗り場、清滝駅前に着く。ケーブルカーももちろん営業していない。営業していると「山は密閉空間じゃないから大丈夫」などといってやってくる人も少なくなさそうだから、営業休止はまさに妥当。広々とした清滝駅の駅前も、もちろん誰もいない……。

■登山道入り口にはひとりだけ……

 と思ったら、ひとりだけお兄さんがいた。

 ストレッチをしているから、きっとこれから山を登ろうとしているのだろう。声をかけてみると、「週に1回くらいずっと高尾山登ってるんです。まあ、人が少ないからいいんじゃないですか」。そう言って、ケーブルカー乗り場の脇にある登山道を駆け上がっていった。この言葉の是非をどうこうする立場にはないが、きっと山の中にいるのはこのお兄さんくらいではないか。登山道の入り口には自粛を呼びかけるメッセージとともに、長時間の滞在を避けることと人との距離を空けることも書かれていた。自粛しない人が多くて困るとか、いろいろ言われているけれど、高尾山を訪れる人はほとんどいなかったのだろう。

 もともと高尾山口駅は、1967年に京王高尾線の開通とともに開業した比較的新しい駅である。その駅の役割は最初から高尾登山の玄関口。高尾線自体は昭和初期に多摩御陵への参拝路線として開業した御陵線をルーツに持ち、戦時中の休止を経て観光路線として生まれ変わったものだ。北野から高尾までの間にはニュータウンの中を通るが、高尾〜高尾山口間は徹頭徹尾レジャー路線。シーズンから外れた冬場の平日などであれば、緊急事態宣言下とさほど変わらないほど人が少ない。いっぽうで、ハイキングシーズンの週末は京王ライナーの臨時列車「Mt.TAKAO号」が運行されるなど、レジャー客で賑わっている。大晦日から元旦にかけては終夜運転も行われるくらいだ(初日の出を見に行く登山客が多いらしい)。

 そんな高尾山の玄関口の駅も、今はほとんど人がいない。まあ、訪れたのがGWとは言え天気の悪い日だったことも関係しているのかもしれないが、他の日もさして変わらなかっただろう。東京の西の端、首都圏屈指のレジャー路線は、観光シーズンにもかかわらず空気を運びながらコロナ禍の収束を待っている。

( 【続き】現地報告 関東で“一番有名な終着駅” 緊急事態宣言でGWの「日光」はどうなった?  を読む)

写真=鼠入昌史

現地報告 関東で“一番有名な終着駅” 緊急事態宣言でGWの「日光」はどうなった? へ続く

(鼠入 昌史)

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