「日本で医療崩壊は起きない」死者2万人超えのスペインで、私がそう確信した理由

「日本で医療崩壊は起きない」死者2万人超えのスペインで、私がそう確信した理由

人気の途絶えたランブラ通り

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大防止のため、スペインが非常事態宣言を出してから、早くも2カ月が過ぎた。

「早くも」と書いたのは、国境も都市も封鎖され、外出制限もかけられたが、あまり苦痛を感じなかったからかもしれない。3日か4日に一回だけ、スーパーに買い出しに行く以外、ほぼ外出はしなかった。ここまで長期間、一日中パジャマで暮らしたことなど、過去に経験したことがなかった。

■1日900人近くの死者が出ていた

 私は静まり返ったバルセロナのアパートに籠り、毎日、続出する死者のニュースを見て呆然としていた。

「日本もそのうち同じ状況に直面する」――最初はそう思っていた。都市封鎖や外出禁止令もない日本をテレビで眺めながら、同じウイルスなのかと目を疑うこともあった。

 5月27日現在、スペインでは感染者23万6769人、死者2万7118人。1日900人近くの死者を数えた約2カ月前と比べ、現在は50人を下回っている。集中治療室の病床にも余裕が生まれてきた。政府は非常事態宣言こそ解除しないが、外出禁止のルールも徐々に緩めている。事態は日に日に改善されている。

■身内を失った人、仕事復帰できない人……

 初夏は、コロナとは無関係に同じタイミングでやってくる。野外フェスティバル、各スポーツ競技の決勝戦、初ビーチ、初キャンプ……。1年で最高の季節の始まりだ。

 しかし街中には、例年の賑やかさがない。マスクをする若者たちは、ぎこちない頬キスやハグをして久しぶりの再会を祝福。ただ、いつもの大声や笑みが少ない。何かが、彼らの体の中から抜けてしまったのか。その日その日を楽しむスペイン人が、どことなく悲しげだ。

 コロナで身内を失った人、仕事復帰できない人、その両方を抱える人と、近い将来に希望を見出せない人々の嘆きが聞こえてくる。ヨーロッパ諸国を見渡せば、スペインほどの挫折を味わっていないようにも見えてしまう。

■スペインは医療崩壊を“起こしてしまった”

 スペイン銀行のパブロ・エルナンデス・デコス総裁は「我が国はどの国よりも脆弱な状態にある」と悲観的で、経済的な打撃に備えるよう警鐘を鳴らした。この国を襲った2008年からの経済危機を超えるクライシスが、再び、そして必ずやってくる??。コロナは終息し始めたが、スペイン国民はそれ以上の恐怖に怯えている。

 失業率が50%を超えれば、社会に何が起きるのか、彼らは経験上、よく知っている。今回のパンデミックで、なぜスペインが大量の犠牲者を出してしまったのか、彼ら自身がその真実を知っている。欧州でもっとも厳格な外出禁止令を続ける理由が、実はスペイン政府にはどうしてもある。

「医療崩壊」は必然的に起きたのではなく、“起こしてしまった”からなのだ……。

 私はある時点から、日本では、スペインのような医療崩壊が起きることはない、と思うようになった。日本がこちらのような厳格な外出制限をする必要もない、と。なぜなら、医療崩壊とは、あることをきっかけに始まるものだから……。

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 ではなぜ、スペインでは医療崩壊が起きてしまったのか?

 その実態を赤裸々に描いた宮下洋一氏のルポ「 スペイン死者2万人『涙すら出ない』 」は「文藝春秋」6月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。

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(宮下 洋一/文藝春秋 2020年6月号)

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