「人生で初めて見たアメリカ国民をひとつにしない大統領」元側近による異例のトランプ批判の中味

「人生で初めて見たアメリカ国民をひとつにしない大統領」元側近による異例のトランプ批判の中味

「マッドドッグ」の異名をもつマティス氏 ©共同通信社

「ドナルド・トランプは私が人生で初めて見た、アメリカ国民をひとつにしようとしない大統領だ。その素振りすら見せない」

 白人警官による黒人暴行死をめぐり全米で抗議デモが巻き起こる中、元側近による異例のトランプ批判が注目を集めている。

 ジェイムズ・マティス前国防長官(69)は、6月3日、米アトランティック誌に寄稿し、「どんな状況であれ、軍が憲法で保障された市民の権利を奪うよう命じられるかもしれないなどとは夢にも思わなかった」「(トランプは)我々を分断しようとしている」などと徹底的に批判した。

 マティス氏は2018年末、シリア撤退に抗議する形で国防長官を辞任したが、これまで大統領を直接批判したことはなかった。

 デモの鎮静化に「軍の投入も辞さない」と表明したトランプに対しては、マティス氏以外にもエスパー国防長官をはじめ、共和党議員や元軍人からも非難が巻き起こっている。

 こうした自陣営からの批判の背景には、トランプによる米軍の政治利用への懸念がある。

 6月1日、ホワイトハウス近くの教会前で写真撮影にのぞむトランプのために、連邦公園警察などが平和的な抗議活動をしていた人たちを催涙ガスやゴム弾などで排除。マティス氏はこれを「国家元首の権限乱用」と大々的に批判したが、軍人らを愕然とさせたのは、トランプに同行した米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が戦闘服を着用していたことだった。

「首都ワシントンDC、しかもホワイトハウス周辺で軍高官が戦闘服を着用することはありえない。このことが何より軍の政治利用を象徴している」(現地記者)

■トランプの支持率はどう変わったか

 コロナ対応で支持率を落としていたトランプだが、黒人暴行死事件後も支持率は下がり続けている。5日の世論調査で、共和党支持層でもトランプの対応を支持すると答えたのは4割という異例の低調ぶりだ。一方、民主党の大統領候補であるバイデンの支持率は、この2カ月で一気に上昇し、トランプに10ポイント差をつけている。

 ここで囁かれるのが11月に迫った大統領選におけるウルトラCだ。

「11月に大統領選が行われないかもしれないというリスクを考えるべき時がきた」「トランプ政権と、それを支持する議会と司法によって、われわれの民主主義が葬り去られるのを見てきた」(米ニューヨーカー誌デジタル版6月4日付)などと、大統領選回避について警鐘を鳴らすメディアが増えているのだ。

 誰も否定できないという現状が最も恐ろしい。

(近藤 奈香/週刊文春 2020年6月18日号)

関連記事(外部サイト)