高市総務相も、菅官房長官も……歴代総務大臣はマイナンバーカードを使っていなかった

高市早苗総務相と菅義偉長官、マイナンバーカードを使わず 当事者意識の欠如指摘

記事まとめ

  • 高市早苗氏と菅義偉長官がマイナンバーカードを使って電子申請をした経験がないと判明
  • 5月20日の衆議院内閣委員会で、高市氏と菅長官は電子申請をしたことがないと答弁した
  • 総務大臣経験者が使用していない現状に、制度に対する当事者意識の欠如を指摘する声

高市総務相も、菅官房長官も……歴代総務大臣はマイナンバーカードを使っていなかった

高市総務相も、菅官房長官も……歴代総務大臣はマイナンバーカードを使っていなかった

国会で答弁する高市早苗総務相 ©時事通信社

「特別定額給付金を司る高市早苗総務相が、マイナンバーカードの電子申請システムを使ったことがないと明かしました。にもかかわらず電子申請システムを国民に使えという方がズレています」

 立憲民主党の中谷一馬衆議院議員はこう話す。

 新型コロナウイルス流行による経済的負担を軽減するため、政府は全国民に一律10万円の給付を決めたが、オンライン申請に必要な「マイナンバーカード」に「使いにくい」「結局申請してから1カ月かかる」などの批判が相次いだ。自治体の中にはオンライン申請を取りやめるところも出てくるなど、混乱の様相を呈している。

■マイナンバーカードの普及率はわずか16.8%

 念のため、申請方法について確認しておこう。郵送されてきた申請書を市区町村の役所に送る「郵送申請」と、マイナンバー制度を利用してネット上で行う「オンライン申請」の2通りがある。郵送してから振り込みまで2週間以上かかるとされる郵送申請に比べれば、オンライン申請は30分もあれば完了するとの触れ込みで、政府も自治体の負担を減らすため推奨してきた。

 しかし、このオンライン申請を行うためには、2015年に全国民に配布された「通知カード」を元にマイナンバーカードを作成する必要がある。中谷氏によると、今年6月1日時点での交付枚数は2135万枚。現在も1億人以上がカードを持っていないという。

 マイナンバーカードの作成には申請から概ね1カ月かかると総合サイトに記載されており、今回のように急を要する場合には、ほとんど給付の役に立たなかった。また4月20日にカードシステムの閣議決定をして、10万円を早くもらえる特典をつけたにもかかわらず、5月1日時点の交付枚数2085万枚(16.4%)と6月1日時点の2135万枚(16.8%)を比較すると、増加数はわずか50万枚(+0.4ポイント)。前月比で下回っている。

 中谷氏はこう解説する。

■「マイナポータル」からの離脱率は極めて高い

「結局のところ、1カ月以上かかってもカードができていないのか、給付金以外にオンライン申請でカードを使う用途が思い浮かばず『二度と使わないから郵送で』となっているのが実情だと推察します。

 オンライン申請はカードを入手してもマイナポータルというサイトにアクセスし、専用アプリをダウンロードしなければならないのですが、非常に複雑。私も実際にやってみたのですが、1日目はシステムエラーが連発しまして断念し、次の日にようやくできました。私は修士号をデジタル関係で取得し、IT企業の役員を務めた経験がありましたので、ネット上の手続きには慣れている方だと自負をしていたのですが、この使い勝手の悪さでは国民に普及することはなかなか難しい。高齢者などデジタルネイティブでない人には厳しい仕組みと感じました。

 マイナポータルのサイトは本当に使い勝手が悪い。今回の給付金以前からも、2017年11月から20年3月現在までの連絡先入力画面のアクセス件数と電子申請ができた件数を比較して、サイトからの離脱率を計算すると、その率は極めて高い。アクセス件数13万9855件に対して申請件数が2万2386件であり、申請を完了させた方はわずか平均16%しかいなかったのです。あまりに使えないので、マイナンバー不要でオンライン申請できる新たなシステムを導入する自治体も出てきているほどです」

■オンライン申請のため役所の多くで「三密」発生

 これだけ使い勝手が悪ければ、今回のコロナ禍のような緊急事態でまともに機能するはずがない。実際、各自治体の窓口にはマイナンバーカードを申請しようとする人や、パスワードロックを解除しようとする人が殺到して、コロナ対策で避けるべき「三密」が全国のいたるところで発生したことは記憶に新しい。さらに、二重給付問題が表面化し、郵送申請においてもマンパワーでのチェックが必要となり、職員が多忙を極め、現場負担の軽減にはほど遠かった。

■「そもそも論で、何かしらの電子申請をされた経験はありますか」

 さらに、何よりショックなのが、この給付金制度を取り仕切る内閣官房トップの菅義偉官房長官、総務省トップの高市総務相がマイナポータルをこれまで使用していなかったという事実である。5月20日の衆議院内閣委員会( http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000220120200520012.htm )では、以下のような答弁があった。

〈中谷委員 まず、そもそも論で、私、菅長官、西村大臣、高市大臣のお三方に伺いたいんですけれども、マイナンバーカードを使って、このマイナポータルで、給付金でなくてもいいです、何かしらの電子申請をされた経験はありますか。エピソードなどがあれば教えてください。

 高市国務大臣 ございません。

 西村国務大臣 私は、毎年確定申告を、e-Taxをマイナンバーカードを使って行っております。

 菅国務大臣 私はありません〉

■自分たちが生み出した制度に対する当事者意識の欠如

 筆者は現代ビジネスで5月7日に配信された「 10万円給付『ネット申請にマイナンバーカードが必須』の意味不明 」で、高市氏の前任の石田真敏衆議院議員をはじめ、当時の総務副大臣、政務官の政権担当者全員がマイナポータルでの申請を利用したことがなかったとする2019年2月の総務委員会の議事録を紹介した( https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119804601X00320190219&spkNum=50 )。

 高市氏だけでなく、総務大臣経験者の菅官房長官もマイナポータルを使用していなかった現状に対してはっきりといえば、自分たちが生み出した制度に対する当事者意識がまったく欠如しており、マイナンバー制度自体が失策だったと認めているようなものだ。政府は制度を普及させようと、コロナ禍前に成立した今年度の予算で2458億円を投じ、買い物などで利用できる「マイナポイント」のキャンペーンを9月から実施しようとしている。しかし、これほど使い勝手が悪いポイント制度を今更利用しようとするのは、ポイントにめざとい消費者くらいで、焼け石に水だ。

■1億人以上の国民がなぜマイナンバーカードを持たないのか

 先の中谷氏がこう話す。

「民間企業であれば、社長や役員が巨額の予算を投じて自分たちが作ったサービスを利用したことがないなんてことはありえませんし、うまくいっていない事業の検証や改善を行わないまま新規事業を進めるなどということは論外だと思います。

 1億人以上の国民がなぜマイナンバーカードを持たないのか、自分が使ってみなければその理由がわからないのは当然です。使い勝手はどうなのか、自分自身が体験をし、どういうものになれば国民が使いたいと思うのか、ユーザーの視点に立って考えることが組織のトップにおいては大変重要なことだと思います。

 コロナ禍を経験して日本でもハンコや通勤の文化の見直しがようやく議論され始めましたが、マイナポータルに関してはiPhoneとMacにも昨年末にやっと対応したくらいで、まったく世の中の動きについていっていない。今回の給付金騒動で見えた課題を真摯に受け止め、非常に時代遅れで効率の悪い仕組みや考え方を見直す好機と捉えなければならないでしょう」

■時代遅れのシステムからの脱却を

 現在、高市氏は一人1口座のマイナンバーとの紐付けを「できれば義務化したい」としており、来年1月に召集される通常国会に改正法案を提出する予定だ。しかし、日本では個人の資産を政府に把握されることに対する不信感は強く、「マイナンバー制度の議論が始まった際も同様の議論が出たが不可能だった」(当時を知る自民議員)ため、今回も任意の形となり骨抜きになる可能性が高い。そうなれば、いよいよマイナンバーは無用の長物ということになろう。

 スマートフォンがすでに国民の間で普及していた2016年に本格運用が始まったマイナンバー制度だが、カード保有という形式にこだわるなど、発想がパソコン時代からまったく脱却できていない。時代遅れのシステムを無理矢理利用しようとせず、もっと簡素で使いやすいシステムを新たに構築する方が安上がりで、何より国民のためになるのではないか。

(松岡 久蔵)

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