「木村拓哉さんのアイデアに助けられました」三ツ星シェフが明かす『グランメゾン東京』監修秘話――文藝春秋特選記事

「木村拓哉さんのアイデアに助けられました」三ツ星シェフが明かす『グランメゾン東京』監修秘話――文藝春秋特選記事

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「文藝春秋」6月号の特選記事を公開します。(初公開:2020年6月6日)

 新型コロナウイルスの影響で営業自粛が相次ぎ、打撃を受けている飲食業界。その状況は緊急事態宣言が明けた今も大きくは改善されていない。

 2007年に発売された「ミシュランガイド東京」で三ツ星を獲得して以来、13年連続で三ツ星を獲り続けるレストラン「カンテサンス」(東京都品川区)も例外ではない。「news zero」キャスターの有働由美子さんが、「カンテサンス」オーナーシェフ、岸田周三さんにお話を聞いた。(お二人の対談「 料理人は“ワンマン”でいい 」は「文藝春秋」6月号と「文藝春秋digital」で公開中)

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有働 緊急事態宣言が出てから、お店の営業を自粛されていますね。

岸田 はい。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、僕たちに出来ることはそれしかなかったので……。店舗に関する最新の情報はホームページに掲載していますが、このままだと今後どうなるのか、先が見えませんね。個人経営の飲食店はそんなに長くは持たないでしょうから、国の補償が無いと倒産するところが続出すると思います。

■「グランメゾン東京」の監修を受けた理由

 岸田さんは33歳、当時最年少の若さでミシュラン三ツ星を獲得。数々の美食家を唸らせる、こだわりぬいたフレンチを作るだけにとどまらず、「ランチ営業を止める」「直前のキャンセルに対しキャンセル料を取る」など飲食業界の「常識」を変え、水産資源枯渇の問題にも積極的に発言するなど、業界の第一線を走り続けている。そんな岸田氏は去年、「ドラマの監修」という新たな挑戦をした。その背景には、新型コロナウイルスの問題の前から感じていた、飲食業界への危機感があった。

有働 岸田さんは昨年、「グランメゾン東京」(TBS系)の料理監修を務められました。木村拓哉さん主演で、ミシュラン三ツ星を目指すシェフたちの物語です。ドラマに登場した料理の一部は、実際に「カンテサンス」で提供されているものだそうですね。それまでは企業とのコラボ商品やレシピ本などの仕事を断られていたそうですが、ドラマの監修を受けられたのはどうしてですか。

岸田 飲食業界の底上げをしていかないと、このままでは日本のレストランがつまらなくなってしまうと思ったからです。飲食店ではコロナの問題が起きる以前から、人がどんどん減っていて、調理師学校も潰れるところが出ています。労働人口が減ることを考えれば、料理人が減るのは当然なんですけれども、その中で、僕たちはどうやったら生き残れるだろうかと考えていたときに、ドラマのお話をいただきました。そもそも飲食業界に興味を持っていない人たちにリーチする方法としても、とても良いんじゃないかと思って。

■木村さんの影響力は尋常じゃない

有働 昔、木村拓哉さん主演で「ビューティフルライフ」というドラマがありましたが、木村さんが美容師役をやったら、美容師の志願者がバーンと増えたそうですね。

岸田 僕がやりたかったのはまさにそれなんです。普段行く美容院の方から「放送後、3年間美容師が増えたから、その世代の美容師が一番多い」と聞きまして。その頃は美容師の専門学校まで出来たというんです。それで木村さんの影響力は尋常じゃないぞ、この仕事は飲食業界のために必ずやらなきゃいけないことだと思いました。

有働 ドラマでの、木村さんのシェフ姿はどうでした?

■「SMAP×SMAP」と同じチームが現場に

岸田 「SMAP×SMAP」で料理をずっとやられていましたから、すごくお上手で、全く違和感がなかったですね。今回、僕はお店の仕事もあったので、完成品だけはお店で撮らせていただいて、役者さんと映り込むものは服部栄養専門学校の先生が現場に行って作るという分業制でやったんです。そのチームが「SMAP×SMAP」と同じチームだったそうで、撮影はすごくスムーズでした。

有働 木村さんとは、お話しされました?

岸田 打ち上げのときにお話しさせていただき、お店にもご家族で何度か来ていただきました。

 木村さんは、撮影中にアイデアをどんどん出してくれるんです。ドラマの最初はスケジュールに余裕があるのですが、終盤に差し掛かるとどんどん切羽詰まってくる。毎回1話につき1品のレシピを考えればよかったのですが、最終回では1週間で全部のメニューを一新することになって「とても間に合わない」と思っていました。そうしたら、木村さんのほうから、「この調理法でこうやったらどうか」とか、「こうすると見栄えがよくなるんじゃないか」とご提案をいただいて。特に最終話のマグロの料理は、木村さんが逆提案してくれたから生まれたようなものだったので、本当に助かりました。

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 世界に誇る日本人シェフ岸田周三さんと有働由美子さんの対談「 料理人は“ワンマン”でいい 」は、「文藝春秋」6月号及び「文藝春秋digital」で公開中。全文では「三ツ星を獲り続ける理由」、「星付きシェフを育てる教え方」、「劣等生だった8年間」、「料理人としてのストイックなまでの働き方」など、ビジネスパーソンに響く岸田さんの仕事術に迫っている。

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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年6月号)

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