土井善晴×コウケンテツ 気楽で自由な家庭料理のススメ「祖父はご飯に牛乳かけてました」

土井善晴×コウケンテツ 気楽で自由な家庭料理のススメ「祖父はご飯に牛乳かけてました」

土井善晴氏

 この数か月、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための外出自粛により外食が減り、家族全員で食卓を囲む機会が増えた。そこで聞こえてきたのが、一日三食作るのが大変だという声。お母さんたちはストレスを感じながら、家族のために毎食しっかり栄養バランスのとれた一汁三菜の食事を用意すべきなのか。これまであまり台所に立たなかったお父さんは何をするべきなのか。

 著書に『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)がある土井善晴さんと、自身も3人の子育てをしながら働くコウケンテツさんによる、料理研究家対談「 『一汁一菜』のススメ 」をお届けする。

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コウ コロナが流行り始めてから生活のあらゆることが変わってしまいました。今、周りのお母さんたちからよく聞くのが「毎日のご飯が大変だ」という声なんです。子供は休校、夫は在宅勤務、自分も在宅で仕事があるのに、家族のために一日三回ご飯を作らなくちゃいけなくてつらい、と。

土井 コウさんとこはどうしてるの?

コウ うちは子供が三人いて、僕もけっこうご飯を作っているんですが、恥を忍んで言わせていただくと、これはちょっと無理だな……と。料理を生業にしている自分でも、仕事をしながらひとりで三食きっちり作るのはしんどいです。いざ、働きながら一日三食きっちり作らなくちゃいけないとなったときに、多くのお母さんたちの支えのひとつになったのが土井先生が書かれた『 一汁一菜でよいという提案 』だと思うんです。

■「今あるもんを食べる」「なかったら食べんでもいい」

土井 ありがとうございます。一汁三菜だとか、一日三十品目が理想だとか言われてきたけど、本当にそれが必要か?と。まずご飯炊いて、お味噌汁作って、あとは自分の食べたいもの、季節のものがちょっとあればええんちゃうの、ということなんです。

コウ 日本の食事って、栄養バランスを考えて、毎日飽きないようにいろいろなおかずを並べますけど、海外はもっと気楽なんですよね。僕はテレビのロケで海外の家庭によくお邪魔するんですが、一汁一菜じゃないですけど、食事が驚くほど質素で毎日同じようなものを食べていることが多いんです。ヨーロッパだと、サーモンと付け合わせのじゃがいもがどーんと出てきたり。「栄養バランスとか気になりませんか?」って聞くと、お母さんは、「気にならないわよ。じゃああなたが作ってくれるの? 楽しく食べてるから、それでいいのよ」って。

土井 日本人って結構、固定観念というか、手かせ足かせというか、食べるということにタガをはめられている。まずはそのタガを外すこと。何を食べるか、ということにとらわれないで、自由に考えて、今あるもんを食べるいうこと。なかったらないで食べんでもいい、いうくらい、気楽に考えてもらいたい。

■家庭料理にルールはない

 一食につき、ご飯とお味噌汁さえあればそれで十分だとする「一汁一菜」という考え方。お味噌汁にも、「これじゃなきゃだめ」という決まった具があるわけではない。

土井 一汁一菜のいいところは、まずくならないところ。味噌汁なんて、濃くても薄くても温かくても冷めてても、みんなおいしいでしょう。それは味噌という自然のものが作り出したおいしさだから。トマトだって自然のものだから毎年味が違う。採れる土地によっても違う。そういうのを「まずい」って否定するな、ということ。

 家庭料理にルールはないんですよ。パスタに味噌汁でもいい。100歳くらいまで生きたわたしの祖父は、ご飯に牛乳かけて食べてましたわ(笑)。わたしがツイッターにトーストを具にした味噌汁をアップしたら「トーストや!」とみんな大騒ぎしたけど、当たり前やろ、という話です。融通を利かして食べればいい。

コウ 「伝統」ってどんどん変わっていくし、新しいものは取り入れざるを得ないところもある。それは食卓も同じだと思います。これまで、SNSで「ママ友はこんなお弁当を作ってる」とか見たり、ご近所さんはご飯をどうしてるとか、ちょっと周囲の情報に振り回されていたところがあったと思うんです。それが今、コロナで家にこもって家族の時間が増えたことで、外部の価値観から遮断された状態になっている。だからこそ、家族の食卓のスタイル、今の社会にあった食卓というのを話しあって見つけていくチャンスだと思います。

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 料理が得意でなければ、食卓の準備をしたりお皿を洗ったりとそれぞれが何か役割を見つけ、家族みんなで食卓を作ることが大切だと話すお二人。

「味つけは食べる人の仕事」「料理はシンプルに、簡単にでいい」など、今、家庭で料理を担う人々の心を軽くする対談「 『一汁一菜』のススメ 」の全文は「文藝春秋」7月号及び「文藝春秋digital」に掲載されている。

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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年7月号)

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