「震災復興と言えば、オリックスとタンタン」みんなに愛されたパンダの帰国、園長の思い

「震災復興と言えば、オリックスとタンタン」みんなに愛されたパンダの帰国、園長の思い

やぐらの上でくつろぐタンタン(王子動物園公式アカウントの5/4のツイートより)

「タンタンは日本一やと思う」まもなく帰国の神戸のアイドル・タンタンと飼育員の絆 から続く

 2020年7月に「日中共同飼育繁殖研究」の契約期間を満了し、中国へ戻る予定の神戸市立王子動物園のジャイアントパンダ、タンタン(旦旦)。当初は、7月となっていた帰国予定日だが、新型コロナウイルスの影響で、今のところ未定となっている。

 20年間みんなを元気づけてくれたタンタン……。タンタンって、どんなパンダだったの? お別れ会は開かれるの? タンタンが行く施設って、どんなところなの?

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策のため、ジャイアントパンダの観覧が抽選制となっている同園。なかなか気軽に行けないし、情報が足りない! 気になってしかたないタンタンのことを、担当飼育員さんと、同園の園長に聞いた。(前後編の後編/前編「『タンタンは日本一やと思う』まもなく帰国の神戸のアイドル・タンタンと飼育員の絆」は こちら )

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■タンタンが行くのはどんなところ?

 タンタンが行く都江堰(とこうえん)基地は、どんなところなのだろうか。ここからは、飼育展示係長の谷口祥介さんに、お話をうかがった。

「私たちが、ジャイアントパンダを借りている、中国パンダ保護研究センターには、4つの基地があります。そして、その4つそれぞれが、野生復帰や繁殖などの得意分野を持っています。タンタンが行く予定の都江堰基地は、疾病や高齢のパンダのケアを、得意とする基地なのです」

 谷口さんは続ける。「都江堰基地は、成都の近くにあり、四川省のパンダの生息域にも近くて、自然が豊かなところです。敷地も広大で、自然の竹林もあります」。

 都江堰基地の敷地面積は、約50ヘクタール。王子動物園の敷地が8ヘクタールなので、比べものにならないほど広い。「スタッフの知見や経験が豊富で、高齢のパンダへの対処にも慣れています。私が知っている時点(2019年)では、44頭のパンダがいました」(谷口さん)。

 高齢のパンダは、高血圧や心臓疾患などになりやすい。タンタンはどうなのだろうか。「2017年に、目の角膜炎を起こしたのですが、獣医眼科の先生から処方された、目薬によって、無事改善されています。歯の摩耗も健康診断で毎回確認していますが、今のところは大丈夫ですよ」(同前)。

 谷口さんはこのようにも話してくれた。

「都江堰基地には、立派な研究センターがあり、設備も充実しています。入院やリハビリができる施設もあるので、高齢のタンタンにとっても、よい施設だと思います」(同前)

 しかも、都江堰基地は、一般にも公開されている。中国でもタンタンに会える可能性があるのだ。

■あくまでも、タンタンファースト!

 これまでに2回、返還の期限を延長してきたタンタン。なぜ今回は、期間延長をしなかったのだろうか。同園の上山裕之園長は、中国側からの要望があったのだと話す。

「高齢化しているタンタンを、最後はふるさとで過ごさせてあげたいと、中国側から要望がありました。中国は高齢のパンダの飼育経験も豊富なので、これからはまかせてほしいと……」。しかし上山園長も本音では、やはりタンタンに神戸にいて欲しいようだ。

「私たちはもちろん、タンタンに残って欲しい。でも、それは人間のエゴかもしれないと思い、タンタンにとって、何が一番良いのかを考えました。今回の決定は、“タンタンファースト”によるものなのです」と話す。

 “タンタンファースト”によって決まった、今回の帰国。具体的な予定は、どうなっているのだろうか。「新型コロナの影響で、中国への直行便が運休しているため、今の時点では、まったく未定です」と上山園長。

 本来なら、返還期限が切れる2020年7月15日に帰国するはずだったが、タンタンはもう少し、日本にいてくれるようだ。「帰国前には、日本国内で1か月の検疫が必要となります。ですので帰国の1か月前には、みなさんにお知らせすることができると思います」と話してくれた。

 検疫の期間になると、一般の人間との接触を避けるため、屋内で過ごすことが増えるタンタン。なんとか検疫期間中も、屋内展示の状態で公開できるように、考えているのだという。

 気になるお別れ会は、どうなるのだろうか。「するかしないのかを含めて、まったくの未定です」と上山園長。「今の状況では、通常の屋内イベントはむずかしい。われわれは、もちろんしてあげたいし、入園者のみなさんもそうでしょう。なので、WEBで配信など、何か工夫できないかを検討中です」と教えてくれた。

■タンタンが帰ったあとのパンダ舎は

 タンタンが暮らすパンダ舎は、帰国後、展示スペースとして利用予定なのだという。「中の壁やシャッターの部分を利用して、“タンタン20年間の歩み”のようなものを、展示できればと思っています」と上山園長。

 公式サイトには、タンタンの帰国にともなって、特設サイト「 #ありがとうタンタン 」が登場している。「きょうのタンタン」の動画や、履歴書などが、ホームページ上で見られるのだ。

 さらに園内の動物科学資料館では、特別企画展「ありがとうタンタン」も開催。タンタンが神戸にきてからの歩みや、なつかしのタンタングッズ、出産やハズバンダリートレーニングなどの、貴重映像を見ることができる。

■また神戸にパンダは来る?

 タンタンが帰国した後、また、神戸にパンダがやって来ることはあるのだろうか。「神戸にパンダを迎えたいということは、何年も前から、中国側にお願いをしています」と上山園長。

「2018年には、神戸市長が中国に行って、直接要望を伝えてきました。さらに、2019年に駐日大使が交代された際にも、あいさつを兼ねて、神戸市長が大使の元を訪問しているんです。あくまで繁殖研究の一環として貸出をお願いしているので、オスメスのペアでの貸出を希望しています」と上山園長。

 子どもの死亡という残念な結果に終わっているが、タンタンは2回出産している。もし、また神戸にパンダがやって来ることがあれば、かわいい赤ちゃんの誕生も、期待できるかもしれない。

 最後に、上山園長にタンタンへの思いを聞いた。

「いま、入園者に竹の葉型のカードをお渡しして、タンタンへのメッセージを書いてもらっています。その中で一番多いのが、“20年間ありがとう”という言葉。現在は新型コロナの関係で、兵庫県民と動物サポーターのみ、抽選で入園という形をとっています(6月22日現在)。

 そのため、入場者のほとんどが、神戸市民なのですが、神戸のみなさんに、よく言われるのが『震災復興と言えば、オリックスとタンタン』という言葉です。

 タンタンは、阪神大震災で傷ついた神戸を、元気づけるためにやって来ました。神戸市民にとって、タンタンは特別な存在だという方も多い。私も同じ気持ちです」と話す。

 震災の復興支援として、神戸市民に明るい話題をもたらしたタンタン。「がんばろうKOBE」の言葉をユニホームに掲げ、リーグ優勝を果たした、オリックス・ブルーウェーブとともに、タンタンは神戸市民にとって、震災復興のシンボルとしても、特別な存在なのだ。

 さらに、いまタンタンに伝えたいことを聞いた。

「20年間本当にありがとう。あとはふるさとの中国に帰って、ゆっくり過ごして欲しい。いつまでも、元気でいて欲しいですね」と上山園長。

 パンダの平均寿命は飼育下で25歳から30歳。現在24歳のタンタンは、人生(?)のほとんどを、同園で過ごしてきたことになる。

 中国で、のんびりと余生を過ごすことになるタンタンに、「20年間お疲れさま。ありがとう」と伝えたい。みんな、君のしあわせを祈っているよ。

(二木 繁美)

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