《河井夫妻買収、ゴーンも》東京地検エース・森本宏特捜部長に交代情報 後任にダークホース浮上

《河井夫妻買収、ゴーンも》東京地検エース・森本宏特捜部長に交代情報 後任にダークホース浮上

森本宏東京地検特捜部長 ©時事通信社

「特捜検察エース中のエース」として鳴り物入りで2017年9月に東京地検特捜部長に就任した森本宏氏(52)に“交代人事”情報が流れている。今からちょうど10年前の2010年に発覚した大阪地検特捜部証拠改ざん事件という不祥事以来、低迷を余儀なくされた特捜検察。「完全復活があり得るなら、この男しかいない」といわれた森本氏は、特捜部長就任以来、期待を裏切らない功績を挙げてきた。その森本氏が特捜部長就任から3年を前に、地方の検事正ポストに栄転するとの情報が入ってきたのだ。

■政・官・財の不正に切り込むエース

 森本特捜部が手がけた事件は、特捜検察史に大きな足跡を残してきた。リニア中央新幹線の建設工事を巡って大手ゼネコン4社が関与したとされる談合事件、スーパーコンピューター開発者を逮捕した助成金詐欺事件、文部科学省の局長級官僚を次々と逮捕した「文科省汚職事件」(医科大学の不正入試の実態も明るみに出た)、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長らを逮捕した特別背任などの事件は世界に衝撃を与えた。

 そして、秋元司・衆院議員を逮捕した「IR汚職事件」、衆議院議員の河井克行前法相と妻の案里・参議院議員を逮捕した公職選挙法違反事件。政・官・財の3界の不正に挑み、立件した対象者は大物ぞろいだ。河井事件は夫妻の地元である広島地検との合同捜査ではあるが、秋元氏と合わせて国会議員計3人を逮捕した特捜部長は十分な存在感を世の中に発信した。検察捜査の新たな武器として刑事司法分野に導入された「司法取引」を初めて活用したのも森本特捜部だ。

■森本氏の早期の検事正への昇格は不可欠

 今回、検察庁法改正案を巡る騒動や黒川弘務・前東京高検検事長の賭け麻雀問題などで法務検察は強い逆風を受け、大きなダメージを受けたが、稲田伸夫・検事総長肝いりの事件とされる河井事件は社会に大きなインパクトを与えた。河井事件は間もなく逮捕から20日間の勾留満期を迎え、夫妻は起訴されることになるだろう。これを区切りとして、稲田総長は月内に林真琴・東京高検検事長に総長職をバトンタッチする見通しだ。この重要人事のタイミングからしても、河井事件はさらなる展開は見せないとみられる。

 この総長人事に伴うものかは、まだ不透明だが、東京地検特捜部長の交代情報も流れてきたというわけだ。森本氏は同期の検事が既に多く地検トップの検事正に就任しており、検察組織としても早く森本氏を栄転させる必要があるのだろう。元々、森本氏は法務省在籍時の行政的手腕も評価されており、行政でも事件でも辣腕を振るう実力から「将来の検事総長」と目されてきた。そのステップとして、早期の検事正への昇格は不可欠だ。

■森本氏の後任と目される人物は?

 そこで、森本氏の後任は誰かという情報も流れてきた。その名を新河隆志氏(55)という。法曹界はいわゆる司法修習の「期」という年次があり、森本氏は44期。新河氏は46期で2年後輩となるが、年齢は逆転する。

 新河氏の出身は茨城県で、1991年の司法試験に合格している。同県で司法修習を経験した後、東京地検、水戸地検、名古屋地検などで若手検事としてのキャリアを積み、2010年に青森地検ナンバー2の次席検事に就任している。以後、東京地検刑事部の副部長を経て、14年11月に東京地検特捜部の副部長になっている。そして、16年4月には大阪地検特捜部の副部長に異動する。

 この異動後、いわゆる「森友問題」に絡む背任や公文書毀棄事件に関して、財務省の佐川宣寿氏ら省幹部に対する刑事告発が出ていたことから、当時の山本真千子・大阪地検特捜部長を支えて事件処理に尽力している。そして、18年5月には、佐川氏らを不起訴処分とする記者発表に山本氏と共に臨んでいる。現在は東京地検に戻り、特別公判部長の職にある。

■事件一筋のキャリア、検察内部の評価は「とにかく人格者」

 新河氏は法務省経験や出向経験がないため、検事本来の事件一筋のキャリアの持ち主だ。このため、対外的な露出が少なく、検察外ではあまり知られていないといえるだろう。新河氏に対する検察内部の評価を聞くと、「とにかく人格者。特捜検事は居丈高なタイプも多いが、新河氏は温厚篤実」「同僚検事のみならず、検事がコンビを組む『立ち会い事務官』にも慕われる」「仕事が極めて堅実」などといった声が聞こえてくる。

 森本氏は「パンチ力」のあるブルドーザー型といわれるが、タイプは全く違うような印象を受ける。森本特捜部があまりに華やかな事件を次々と手がけただけに、次の東京地検特捜部長のプレッシャーは相当なものがあるだろう。しかし、ある検察幹部は「現特捜部の勢いを消さないよう、さらなる弾は込めつつある」と自信をみせている。近く稲田総長から林総長にバトンが移り、黒川問題のマイナスイメージをいかに払拭するかが当面の法務検察の大きな課題となっているが、林新総長の下、特捜部が何を手がけていくのかにも注目が集まる。

(平野 太鳳/Webオリジナル(特集班))

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