東京都民、公約をひとつも実現しなかった「女帝」を選ぶファインプレー

東京都民、公約をひとつも実現しなかった「女帝」を選ぶファインプレー

約366万票を得て、次点に280万票以上の大差をつけて再選を果たした小池百合子都知事 ©AFLO

 7月5日に投開票が行われた東京都知事選は、現職の小池百合子さんの圧勝で終わってしまいました。

 文藝春秋から『 女帝 小池百合子 』が刊行されてベストセラーになった割には、そのようなことはお構いなく小池百合子さんを選んだ東京都民の民意が示された瞬間でございます。

■「7つのゼロ」の公約は都民のほとんどが実現できていないと判定

 もちろん、私もひとりの東京都民として、悩み、困り、悶え苦しんだ選挙でございました。主要候補の、誰にも投票したくない。宇都宮健児さん? 山本太郎さん? 小野泰輔さん? いやいやいやいや、さすがに厳しいでしょう。消去法の結果、まあ現職の小池さんでいいやと思って投じた東京都民も多かったのではないかと思います。

 数字を見返してみますと、小池百合子さんが勝った理由は単純に「コロナウイルスが流行して、メディアで頑張ってそうな雰囲気で目立ったから」と「対抗候補にろくなのがいなくて、支持が集まらなかったから」に他なりません。みんな不安を煽られたコロナ対策と、ふがいない与党野党が候補者選びで右往左往したから女帝が再選してしまったんですよ。都知事選50億円ガチャにハズレしかいないと評されるのは、この「誰にも投票したくない」という罰ゲーム感が際立つからだと思うのですね。

 NHK世論調査の数字を見てみると、今回都知事選で実施された 都民1万人アンケート の結果が目を惹きます。

 生活水準に7割の東京都民が満足していて、みんな楽しそうだなと思います。そりゃ1,400万人にまで都民が膨らむのも、仕事があり享楽的な環境があって、交通が便利だからでしょう。都政改革とは別に大きな変革を都政には求めていない状況があったうえで、発信力が高い現職の小池さんを選んだというのが、今回の都知事選で見せた都民の総意でした。しかしながら、その小池さんが2016年に当選したときの公約については惨憺たるもので、掲げた「7つのゼロ」の公約は都民のほとんどが実現できていない、と判定しています。

都民1万人アンケート(NHK)
https://www.nhk.or.jp/senkyo/opinion-polls/02/

■「小池さんのどこが良かったのか?」と見ているこちらが悩む結果に

 まあ、当然ですよね。なにひとつ実現していませんから。

 都道電柱ゼロとか、残業ゼロとか、介護離職ゼロとか、おいふざけんじゃねえよ。満員電車ゼロとか、お前通勤したこともないだろと言いたくなるような状況でありましたが、結局のところ、できねえことを公約に掲げて当選した小池さんに対して、厳しい評価はありつつも「それでも小池さんを都民は選んだ」のです。

 つまり、ぶっちゃけ都民にとっては公約はどうでもよく、いまの都政をクリーンに回してくれればまずは良し、それで都政改革などより良い政治に取り組んでくれれば現職としての評価は上がるということでもあります。これを地方政治に対する関心の薄さとするか、それとも意外と冷静に都民は都政を見ているのだと捉えるかは立場によって異なります。しかしながら、あれだけすったもんだした築地移転問題でも反対54に賛成46(「とても評価する」「ある程度評価する」の合計が46%、「全く評価しない」「あまり評価しない」の合計が54%)ってのはどうなんでしょう。

 また、小池都政の4年間で暮らし向きが良くなったという人はわずか6%で、悪くなったという13%に比べると「小池さんのどこが良かったのか?」と見ているこちらが悩む結果になっています。都民の暮らし向きが悪くなってきている理由を小池さんに押し付けるのは早計ですが、都政として困っている人たちに対する都知事の寄り添い方には常に疑問を感じます。

■小池さん特有のサイコパス的な言動から感じ取れるナチュラルな上昇志向

 何より、東京オリンピック・パラリンピックの開催の是非については、東京都民は正直コロナ騒動もあって熱が冷めている状態で、 6月30日の電話調査 では、開催すべきが33%、中止すべきが37%、再延期が21%と、概ねどうでも良くなっていました。ところが、7月5日の出口調査の結果では開催すべきが27%、中止すべきが36%、さらに延期すべきが17%と、投票所に行く都民の意識はさらにオリンピックに対してどうでもよくなっています。コロナまでは、東京都政においてオリンピック開催の意志決定から小池さんが外されてる実態が報じられて、ホスト都市なのに存在感がまるでなかった状態だったのですが、本当にコロナに助けられたな小池さん、と思うわけです。東京アラートとかほんと何だったんだよ。

 おそらくは、小池百合子さんは都知事職を踏み台にして良きところで再び国政進出を狙っていくことでしょう。都知事で政治家としてのキャリアを終えて良しとする女性ではないというのは、石井妙子さんの『 女帝 』を通読していても感じ取れるものですし、小池さん特有のサイコパス的な言動からナチュラルな上昇志向は感じ取れます。

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■都民は小池さんを国政に笑顔で送り出せるのでしょうか

 本来であれば、東京オリンピックがあろうがなかろうが、日本が誇る首都であり国際都市・東京の50年後、100年後を考えたグランドデザインを議論し、交通から暮らし、防災、出産育児から教育、そして労働や高齢者向けの社会保障という都民のための「知恵出し」を都知事として先導しなければいけないはずなんですけどね。

 たぶん、小池さんには興味がないんですよ。でも、本来の政治というのはそういう目立たないけど重要な議論の積み重ねを行い、国民都民にしっかりと論点を提示し、将来を指し示し、いざというときの備えと暮らしの安寧を実現することが一番重要だと思うんですけれども。

 ポスト安倍ちゃんで国が揺れるとき、果たして都民は笑顔で小池さんの自民党への帰還と国政進出を見送ることができるのでしょうか。

(山本 一郎)

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