なぜ今? 空前絶後の1.35兆円「Go To キャンペーンでトクするのは誰?」7つのポイントを解説

なぜ今? 空前絶後の1.35兆円「Go To キャンペーンでトクするのは誰?」7つのポイントを解説

政府のGo To トラベルキャンペーンは7月22日から開始される予定だ。1.35兆円の中身とは? ©?iStock.com

 新型コロナウイルスで激減した観光地の消費を喚起する政府のGo To トラベルキャンペーン。22日からの開始を前に、観光業界では期待が膨らむ一方、感染者が増加している首都圏からの来客を不安視する声が噴出している。

 山形県の吉村美栄子知事は「この時期のスタートはいかがなものか」と批判、ツイッターでも「#GoToキャンペーンを中止してください」がトレンド入りした。

 1兆3500億円もの予算が投じられる巨大プロジェクトだが、じっさいどんな中身なのか。そしてどんな人に影響があるのか。トラベルジャーナリストの橋賀秀紀氏が解説する。

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 7月10日、赤羽一嘉国土交通大臣は、Go To トラベルキャンペーンのうち、一部を7月22日から先行して行うことを発表した。このキャンペーンの事務手続きを委託する事務局は、日本旅行業協会(JATA)や大手旅行会社からなる「ツーリズム産業共同提案体」( https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001353146.pdf )。委託費用は上限として設定した金額よりも約400億円少ない1895億円となった。

■最大50%還元も……「わかりづらい」キャンペーン

 ここで今一度、Go To トラベルキャンペーンの内容を整理したい。

■キャンペーンの期間
2020年7月22日〜終了時期は未定(最長で2021年3月まで)

■キャンペーンの対象となる旅行(個人旅行の場合)

・1泊2日以上の旅行
旅行会社経由で予約する国内ツアー
旅行会社やホテル(民泊を含む)の直販サイト経由などで予約した場合の宿泊費
クルーズ船・夜行フェリー・寝台列車(夜行バスやLCCなどの深夜便は対象外)

・日帰り旅行
往復の鉄道・バスなどと現地での食事や観光体験などがセットとなったツアーを旅行会社経由で予約した場合

■還元率
 旅行費用の約半額を還元。旅行費用の35%は費用が直接割引かれる。残り15%は旅行先で使える地域共通クーポンとして還元される。地域共通クーポンは、紙の商品券ないし、電子クーポンとなり、旅行先の都道府県かその都道府県に隣接する都道府県の加盟店(土産物店、温泉、遊園地、水族館、遊覧船、ローカル鉄道、タクシーなど)で旅行期間中にかぎって利用できる。

■還元額の上限
1泊2日以上の旅行
1人1泊あたり最大2万円

日帰り旅行
1人あたり最大1万円

■Go To トラベルキャンペーンのスケジュール

7月22日(水曜)
キャンペーンの対象期間がスタート 7月27日(月曜)
旅行会社、ホテルなどキャンペーンへの準備がととのった事業者から、順次キャンペーンの受付を開始 9月1日以降
(日程は後日発表)地域共通クーポンの発行を開始 ?最長で2021年3月まで
キャンペーンの対象期間が終了(キャンペーンの予算が消化されれば前倒しで終了する可能性もある)

■利用回数などの制限は?
利用回数・宿泊回数・連泊の日数などの上限はない。

■すでに予約してしまってもキャンペーンの対象になる
 なお、キャンペーンの開始以前に予約した商品でも、旅行そのものがキャンペーンの期間(2020年7月22日以降の出発もしくは宿泊)に含まれている場合、以下の申請をすることで、キャンペーンの恩恵を受けることができる。これはキャンペーンのために大量にキャンセルが出ることを防ぐための方策である。

 以下の書類を事務局に郵送もしくはオンラインで提出。

・申請書(様式は事務局ホームページ・宿泊施設等で入手)

・領収書(原本)

・宿泊証明書(宿泊時に宿泊施設から入手)

・個人情報同意書(様式は事務局ホームページ・宿泊施設等で入手)

これらの詳細については国土交通省のホームページに掲載されている資料で確認できる。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001351403.pdf

 とここまでキャンペーンの概要を見てきたのだが、一言でいうと「わかりづらい」。そこで、このキャンペーンを最大限活用する7つのポイントを指摘してみたい。

■(1)「50%還元」は9月から

 このキャンペーンは夏休みにあわせてスタートするが、最長2021年3月まで、約8カ月にわたって継続する。また、予算の規模も約1兆3500億円と、2016年に実施された九州ふっこう割(180億円)の75倍にあたる。もちろん日本全土が対象となるので対象者もはるかに多いが、すぐに利用しないとキャンペーンが終了してしまうと焦る必要はないだろう。現時点では新型コロナウイルスの感染者が再び多くなっていることから旅行について様子見をしようと考えている人も少なくないだろうが、感染者数や生活上の注意点など細かく変わる情報を見ながら判断したい。

 ただし、このキャンペーンでは、旅行会社ごとや10分割ともいわれる地域ごとに予算が配分されることから、多くの人がアクセスするサイトや人気エリアから先に予算を消化してしまう可能性についても頭に入れておきたい。

 もう一点、地域共通クーポンの発行が9月以降になっている点も要注意である。ひらたくいうと地域共通クーポンの発行が開始されるまでは、半額還元ではなく、旅費の35%還元しか行われない。そのため、還元額を最大にしたいのであれば9月以降の旅行にしたほうがよいといえる。ちなみに地域共通クーポンは、旅行期間中のみ利用可能なので、それを次回以降の旅行に使用するということはできない。使用できるのは目的地とそれに隣接する都道府県となっている。

■(2)「パッケージツアー>フリーツアー>宿泊のみ」

 ツアーの場合、行き帰りの交通費も半額還元となるが、宿泊のみの場合は交通費が還元対象にならない。そのため、ツアーでの利用の方がトータルの還元率は高くなる。

 さらにツアーの金額に含まれていれば、すべて半額還元の対象となるので「色々なものがツアー料金に含まれているプラン」の利用価値が特に高いともいえる。

 たとえばオンライン予約サイト「トラベルコ」で表示された沖縄行きのツアーを例にとってみたい(2020年7 月上旬調べ)。

「9月上旬の沖縄6泊7日フリーツアーで羽田発那覇往復のJAL利用に期間中レンタカーとホテル6泊がついて総額41700円(阪急交通社)」※60日前までの予約が条件

 この商品の場合、41700円のうち、35%の14595円が旅費の還元対象となり、支払いは27105円。残り15%が地域共通クーポンだが、1000円未満は四捨五入となるので、6000円のクーポンを手にすることになる。この6000円分をすべて現地で使い切った場合、本来であればツアー代金41700円+現地での食事や買い物など6000円=47700円→27105円となるので、約43%旅費を節約できた計算となる。このツアーの場合、滞在中のレンタカー代もすべて含まれているのでこれも還元対象となる。

 交通機関+宿泊施設だけのいわゆる「フリーツアー」よりも、観光や3食などもすべてついたいわゆる「フルパッケージツアー」の方がすべての費用が還元対象となる分、ねらい目といえる。

■(3)「宿泊のみ」で最大の還元を得るポイント

 ツアーのほうが宿泊よりも還元という観点でいえば有利だと書いたが、マイカーで旅行する人など、現地での宿泊のみでかまわないという人は少なくないだろう。Go To?トラベルキャンペーンで宿泊の還元を得る場合、どのような利用の仕方が最も効率がよいのだろうか。

 宿泊での還元は1人1泊につき最大2万円が還元となる。1室ではなく“1名につき”という点に注意したい。1室2名の場合、1泊あたりの還元額を最大にできるのは1室2名で税・サービス料込み8万円。そのため、よほどの高級ホテルや旅館でないかぎり、半額還元となる。7泊すると56万円のうち28万円が還元される。1室3名の場合はさらに上限が高くなり、1室1泊につき12万円が上限となるので、日本最高級のホテルや旅館でも、もっとも安価な部屋であればほぼ対象になるといってよいだろう。

 また、ホテルや旅館が食事込みのプランであればその食事代も半額還元の対象となる。その意味では2名の場合、素泊まりよりも、「税・サービス料込み8万円で1泊2食つきのプラン」の方が利用価値が高い。館内にスパなどの施設がある場合も同様である。さらにGo To トラベルキャンペーンにあわせて宿泊施設では、さまざまなプランを出してくるだろう。クオカードなどの金券に近いものを付帯させるプランの出現も想定される。また、過去のふっこう割では、還元対象期間中に便乗値上げする宿泊施設の事例も見られた。その宿泊施設の相場が適切かどうかも精査しながら予約する必要が出てくるだろう。また、民泊もGo To トラベルキャンペーンの対象となる。家族旅行であれば宿泊可能人数が多い民泊のほうが割安のケースも出てきそうだ。

 なお、「Go Toトラベルキャンペーン」の対象となる宿泊施設は、受け付けに仕切り板をつける・宿泊者に検温を義務づける・風呂や食堂などで人数制限や時間制限をもうける・ビュッフェは個別提供するといった対策を行い、国土交通省のチェックを受けたところのみとなる(詳細は7月17日に発表予定)。そのため、対象となる宿泊施設が限られることも想定される。

(4)「WEST EXPRESS 銀河」も半額還元?

 Go To トラベルキャンペーンは寝台列車やクルーズ船も対象となる。鉄道ファンであれば、寝台列車の扱いが気になるところだろう。ただし、現時点で日本に定期列車の寝台列車はサンライズ瀬戸・出雲のみである。この場合、寝台列車の座席である「ノビノビ座席」が対象となるかどうかは不明だが、一部の旅行会社で扱っているサンライズ瀬戸・出雲利用のツアーであれば、確実に半額還元となるだろう。

 鉄道ファンとしてはJR西日本が投入する新型車両「WEST EXPRESS 銀河」(運行開始日は未定)も気になる。こちらにはグリーン個室や簡易寝台(クシェット)もあるが、あくまで「座席」であって「寝台」ではない。しかし、「WEST EXPRESS 銀河」利用のツアー商品が登場すれば、半額還元となりそうだ。

■(5)行き先の選び方は?

 Go To トラベルキャンペーンは日本全国が対象となる。では、行き先についてはどのように判断すればよいのだろうか。

 還元の割合は一律で、還元額ぎりぎりを使った場合でも還元のうち30%は地域共通クーポンなので、かりに贅沢な宿に泊まって還元額を多くしようとしても、地元にお金を落としたいものがなければ地域共通クーポンの持ち腐れとなる。そのため、「地元でお金を落としたい」と考える行き先を選ぶのも一つの手である。あるいは、北海道・沖縄・京都などの有名観光地のほうが、地域共通クーポンの使い途が多いだろう。

 いずれにしても、地域共通クーポンにはどのくらい加盟するのか現時点では未知数なので還元額が多額になる場合、この具体的な内容が出そろってからが無難といえる。

■(6)各地方で行われているキャンペーンとの併用で75%還元?

 全国一律で行われるGo To トラベルキャンペーンとは別に、全国のさまざまな地域で独自の割引キャンペーンが行われている。そのなかには地元在住者向けのものも少なくないが、居住地の制約がないものもある。

 たとえば、北海道では乗り放題のパスを最大半額にすることを発表している。これにしたがい、JR北海道では、鉄道・バス全線が特急も含めて乗り放題となる「HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パス」(2020年7月23日〜2021年1月31日 ただし盆・正月に適用除外期間あり 補助金の上限に達した場合などは発売を中止する)が12000円で発売される。通常発売されている「北海道フリーパス」(7日間)は27430円である。

 こうした割引の情報は「 旅行クーポンサイト 」などにまとめられているので参考にしたい。

■(7) 「青春18きっぷ」も対象になる?

 最後に裏ワザ(?)も紹介したい。通常、旅行者の多くはパッケージツアーやフリーツアーなどを利用することが多いが、今回のGo To?トラベルキャンペーンは手配旅行や団体旅行のような受注型企画旅行も対象となる。この受注型企画旅行、実は人数の下限がない。そのため、極端な話、1名や2名であっても旅行会社が受け付ければ、Go To?トラベルキャンペーンの対象となる。

 受注型企画旅行になるとどのような利点があるのだろうか。たとえば、フルムーン夫婦グリーンパスや青春18きっぷといったエリアを限定したフリーパスと、宿泊・レストランの手配を行った場合でも、総額が半額還元の対象となる。旅行会社は最大20%の手数料を徴収できるが、それでも魅力的だといえる。もっとも少人数でこの形態を受け付けるかどうかはあくまで旅行会社しだいである。

 首都圏などを中心に新型コロナウイルスの感染は再び増加の傾向をみせている。2021年春まで続くキャンペーンであるため、必ずしもいますぐに出かける必要もない。また、自家用車やレンタカーでの利用を増やす、風呂付きの部屋や食事が可能な温泉旅館を利用するなど、新型コロナウイルスの罹患や拡散のリスクを下げる形の旅行も推奨されるだろう。こうしたこともふまえつつ、キャンペーンの利用法について慎重に検討したいものである。

(橋賀 秀紀)

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