迷走「アベノマスクおかわり」や「Go Toトラベル」の官邸は消費税減税の夢を見るか?

迷走「アベノマスクおかわり」や「Go Toトラベル」の官邸は消費税減税の夢を見るか?

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「アベノマスクが追加で8,000万枚配布」という衝撃的な見出しが出ていたわけです。どういうことなんですかね。もちろんこの報道は一部ミスリードであって、すでに発注が終わっている分の残り8,000万枚が介護施設や障害者施設に配られるというだけの話なんですが、まあ、これだけ見れば「馬鹿なのかな?」とは思いますよね。

■感染者拡大とともにズッコケる「Go Toトラベル」

 また、政策という点では同じく酷評される「Go Toトラベル」も、明らかに7月の4連休前にどうにか前倒しで強行しようとして感染者拡大とともにズッコケるという問題を引き起こしております。突然官房長官の菅義偉さんが「ワーケーション」とか言い始めて、それって旅行して金を使え、使ったうえで旅行先で働け、というダブルの意味で苦行であることに気づいてないんじゃないかと思うんですよね。旅行先で働いたって全然楽しくないだろ。

 確かに観光業単体で言えば、世界的な観光地にまで成長したはずの日本のフラッグシップ京都では外国人観光客が2020年5月の速報で前年同月比99.9%減少。インバウンドどころではありません。日本全国で言えば、観光庁が発表した国内旅行も前年同月比96%減少と、これはまあ壊滅っていうレベルじゃねえぞというぐらい大変なことになっているわけですよ。

京都市観光協会データ月報(2020年5月)?
https://www.kyokanko.or.jp/report/hotel202005

主要旅行業者の旅行取扱状況速報(2020年5月)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001356227.pdf

■困るのは国民ですからね

 苦境に陥った「観光立国」日本の問題を解決するためにも、何とかGo Toキャンペーンを成功させたかったのでしょうが、立ちはだかるのは小池百合子都知事、もとい、コロナ感染者数の急増です。心配された第二波が心配された通りやってきてしまい、政府がどうにか日本経済を原状復帰させようと頑張ろうとするも空回りに終わってしまいそうです。

 政府が対策失敗して、みんなで馬鹿にするのは仕方ないんですが、困るのは国民ですからね。

■観光業を盛り上げようと腕まくりしていた矢先に……

 何より大変なのは、我が国の観光業が地方経済の大事な産業の一つにまでようやく成長したところで、コロナ禍の直撃で一気に駄目になってしまうという問題です。それこそ、2003年当時の首相・小泉純一郎さんの掛け声で観光立国を推進しようとし、観光庁もビジット・ジャパン・キャンペーンを実施。さらには2019年のラグビーワールドカップの成功で、「さあこれから2020年東京オリンピック・パラリンピックで多くの外国人観光客を呼び込もう」と腕まくりしていた矢先にコロナですから大変です。

 大都市圏では200万室以上も宿泊施設が足りないと叫ばれ、空き家の増えてきた国内ではリノベして民泊にする動きも急増。地方の観光地でもオリンピックで増える旅行者に1泊でも2泊でも多く来てもらおうと頑張ってきていたわけですよね。

 それが、京都ですら外国人観光客が99.9%減少って、要するに1000分の1になっちゃったんですよ。見込み違いにも程があります。「Vやねん!」みたいな。また、国内旅行で言えば7割超が日本人による旅行だったわけですけど、こちらも「都道府県をまたいでの移動は控えましょう」「いや、旅行は構いません」「でも企業さんには7割は在宅ワークでお願いします」と、とっ散らかった指示ばかりが国や都道府県から降ってくるわけですから、国民からしても生活や健康の自衛のために「余計な移動は控えておこう」となるのも当然じゃないですか。混乱するしかありません。クーラーでガンガンに冷やした部屋でアツアツのうどんを喰うみたいな状態で大丈夫なのか、と。

■ヤバイのは観光だけではない

 そして、コロナ患者が徐々に増えてきて、医療現場でも軽症者から中等症の患者さんの入院がじわじわと増えてきました。一方で、感染症のクラスターになりかねない病院には患者さんが寄り付かず、地方の医療システムが崩壊しそうなほどな状態で経営を直撃し、Go To病院というぐらいの勢いでコロナ破綻しそうになっています。

 そういう状況なのに、東京都では軽症者を収容するホテルをかなり解約しちゃった痛恨のミスがあって、いま借り直ししているみたいですけど、小池百合子さんは何を考えているんでしょう。もう都知事選勝ったからどうでもいいとでも思ってるんでしょうか。

 さらには、飲食、輸送、アパレルといった各種産業もコロナショックで大きく経営が圧迫され、いまや信用保証協会も空前の案件激増といわれています。カネを借りたくても審査待ちで2か月近くかかってしまう現状があります。さらには、東京都では22時までの営業に短縮するよう休業要請が出て、その代わりもらえるお金が20万円とかですよ。家賃にもならないんじゃないですかね、これ。

「観光業がヤバイ」と言っているうちに、本当に夏を越えられない企業の破綻が8月9月にどっさりとやってきて、地方経済の破綻が現実のものになりかねません。100万人単位で失業者が出るでしょうし、これから社会に出る高校生、大学生なども就職氷河期に直面してまたロストジェネレーションになってしまうかもしれない。また、今年はジューンブライドが減って婚姻数も伸びず、生まれる子どもの数も増えないぞとなれば少子化一直線であることは間違いありません。大変なことですよ、これは。

■安倍さん、ちゃんと出てきてくれよ

 そのためにも、安倍政権におかれましては実効性のある、より具体的な経済対策が求められているわけですけれども、みんなズッコケているのはアベノマスク未配達分8,000万枚が配られるらしいというしょうもないニュースぐらいしか出てこない点なんですよね。いや、もちろん官邸内部でもどうにか対策しようといろいろ検討はされているとは思うんですよ。でも、実際にはいまひとつ追加の具体策についての発表はなく、1か月以上、総理である安倍晋三さんの記者会見もないという状態です。安倍さん、ちゃんと出てきてくれよ。

 また緊急事態宣言を出すのか出さないのか、飲食店などに対する自粛要請を都市圏で出すのかどうかという話だけが上滑りして流れてくることになるのです。

 そりゃ感染症は怖いし、死亡率は低くても、若い人にも後遺症があるぞとなれば大変なことですから、自粛するのはいいけれども、どこまで我慢すればどうなるのか。政府はもっとしっかりと指し示すべきだと思うんですよね。

 地方経済破綻後にますます都市部に人口は流れてきて、日本全体の人口もさらに減少する方向にいくとなると、これはもうニューディール政策のような地方経済の国有化議論ぐらいしか活路がなくなるのではないかと心配しています。

■秋に衆議院解散。本当にそれで大丈夫なのでしょうか

 それでいて、どうも秋に衆議院解散するぞという話をしているようなのですが、本当にそれで大丈夫なのでしょうか。たぶん、本格的に地方経済がアカンとなれば、与党自民党は大変なことになるでしょうし、安倍さんの進めたい改憲どころの騒ぎではなくなるのではないかと思うんですよね。それでも、自民党自らが消費税減税を打ち出して、野党が弱いうちに選挙をやろうという魂胆なのかもしれませんが、国民が一番つらいところで政局としては有利だから解散総選挙をやろうというのはなかなか厳しい判断だなあと思います。

 アベノマスクのような予算があるのならば医療機関や保健所など直接感染症対策に資するところへお金を厚めに出してほしいという願いも持ちつつも、このまま静かな夏が訪れるのだろうかと明けない梅雨を見ながら残念に思っております。はい。

(山本 一郎)

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