《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反、国会虚偽答弁の疑い

NHK経営委員会の森下俊三委員長に放送法違反と国会虚偽答弁の疑い 議事録を入手

記事まとめ

  • NHK経営委員会の森下俊三委員長に放送法違反と、国会虚偽答弁の疑いが浮上した
  • 週刊文春が入手した議事録によると森下氏は、番組編集に干渉する発言を繰り返していた
  • 「番組の具体的な制作手法を指示した事実はない」と明言したが虚偽答弁の疑いも

《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反、国会虚偽答弁の疑い

《議事録全文入手》森下NHK経営委員長に放送法違反、国会虚偽答弁の疑い

森下経営委員長 ©共同通信社

 NHK経営委員会の森下俊三委員長(75)が、経営委員会でNHKの番組制作に干渉する放送法違反が疑われる発言をし、また、そのことを今年3月に国会で質問された際に虚偽の答弁をした疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。森下氏の発言を記録した経営委員会の議事録を入手した。

「週刊文春」が入手した議事録は、「経営委員会(委員のみの会)平成30年10月23日」と題された文書。この議事録には、当日の発言が書き起こされており、森下氏は「この番組の取材も含めて、要するに、僕は今回、極めてつくり方に問題があると思う」などと述べていた。森下氏は、この会で番組編集に干渉する発言を繰り返していたことになる。

 この議事録を巡っては、今年5月、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が、“速やかな全面開示”を求め、前田晃伸NHK会長も6月の会見で開示を促しているが、森下氏が公開を拒んでいる。

 森下氏が槍玉にあげたのは、2018年4月24日放送の『クローズアップ現代+』。かんぽ生命が保険商品を、顧客に虚偽の説明をして契約していたことをいち早くスクープした番組だ。だが、当時はまだ不正が明白になっておらず、同年7月、続編のために情報を募る動画を番組側がSNSに上げると、日本郵政グループは猛反発。上田良一NHK会長(当時)に抗議文書を送った。

 10月23日、経営委員会のうち、NHK執行部を外し、経営委員のみで行う通称「のみの会」でこの問題が話し合われた。今回、小誌が関係者から入手したのはこの日のやり取りを全て書き起こした議事録だ。A4用紙で35ページにわたり、「のみの会」に呼び出されて参加した上田会長と経営委員とのやり取りが分かる。

 森下氏はこの席で『クローズアップ現代+』について次のような発言をしている。

「今回の番組の取材も含めて、極めて稚拙」

「現場を取材していないわけです。これ、オープン・ジャーナリズムと言っているんですけれど、インターネットを使う情報というのは極めて偏っているわけですよ」

「この番組の取材も含めて、要するに、僕は今回、極めてつくり方に問題があると思う」

 だが、実際には、番組はSNSでの情報募集にとどまらず、複数の情報提供者に直接話を聞き、裏取りもしていた。事実誤認の批判である上に、番組編集に干渉する森下氏の発言は放送法に抵触する恐れがある。

■「今後の番組の具体的な制作手法などを指示した事実はございません」

 この件に関して、森下氏は今年3月17日、衆議院総務委員会に参考人招致されたが、「番組に関する意見や感想も出ましたが、今後の番組の具体的な制作手法などを指示した事実はございません」と明言した。だが議事録に記されている森下氏の発言は、インターネットによる取材を危惧し、現場取材を強く要請するなど「制作手法の指示」に等しい発言が多く、虚偽答弁の疑いがある。

 立教大学の砂川浩慶教授(メディア論・放送制度論)はこう指摘する。

「この議事録の通りなら、森下氏の発言は明らかに番組への口出しを禁じる放送法第32条第2項違反です。また、国会での答弁も虚偽答弁にあたります」

 経営委員会を通じてこれらの疑惑について森下氏に尋ねると、次のように回答した。

「番組に関する意見や感想も出ましたが、番組の編集の自由を損なう事実はございません」

 NHKの予算やガバナンスを監督し、会長の任免権を持つ経営委員会のトップに、放送法違反や国会虚偽答弁の疑いが浮上したことで、議事録の全面開示や森下氏の説明を求める声が高まりそうだ。

 8月6日(木)発売の「週刊文春」では、森下氏が語った番組批判発言の詳細、経営委員会が議事録を開示しない裏側、森下氏と元総務事務次官である日本郵政の鈴木康雄上級副社長(当時)との関係などについて詳報する。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年8月13日・20日号)

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