『イソジン吉村』嘘のような本当の話で吉村洋文府知事から感じる「進次郎臭」

『イソジン吉村』嘘のような本当の話で吉村洋文府知事から感じる「進次郎臭」

大阪では多くのテレビ番組に出演している吉村洋文知事 ©?AFLO

 一部で人気上昇中の大阪府知事・吉村洋文さんを見ていると本当に面白いんですよね。

 いまや「イソジン吉村」の愛称でも呼ばれるようになってしまい、急落する維新支持率にもさらに影響しそうです。

■維新、面白い政党だとは思うんです

 私の身の回りでも、ものすごく日本維新の会にシンパシーを感じる面々からの熱狂的な吉村支持が感じられる反面、維新の会にはこれといって興味のない層からの冷たい視線のコントラストが、サウナ後の水風呂的な状況になっておるわけですよ。

 維新、面白い政党だとは思うんです。自民党や与党、安倍晋三さんを支持したくはないけど、気持ち的には日本を愛する考えを持っている右派の拠りどころという意味でも。ただ、いかんせん大阪以外ではなかなか大変なんですよね。全国政党への脱皮の苦しみという感じでしょうか。

 今回の一連のコロナ対策でも、非常に頑張っている風の吉村洋文さんがテレビなど媒体に露出するたび、「ああ、なんか頑張っているんだな」と受け止める風潮が広がるわけですよ。大阪も、維新も、引っ張ろうと。「目指せ、大阪都構想!」という。でも、大阪府のコロナ感染者数の推移などを見ていると、無能と評判の小池百合子さん率いる東京都と比べてもそんな良い状態でもない。大阪でも普通に流行っておりますね、コロナ。頑張ってる割に成果が出ないので、ますます頑張ってると見せたくなるという。

 そんな頑張ってる感を醸しつつ、大阪の独自の対策を何か打たなければと焦っているのか、8月4日に突然吉村さんが記者会見をやるというので見物していたら、何かとんでもないことを言い始めるんですよ。

うがい薬がコロナに効果か研究|NHK 関西のニュース
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200804/2000033223.html

■検証可能な論文にまでなっていないどころか

 いやー、馬鹿なんですかね。成分であるポビドンヨードには殺菌効果があり、医療機関でも一般に使われているものですから、確かにコロナウイルスを壊す効果はあるかもしれないけど、それが配合された「イソジン」などのうがい薬が「コロナウイルス感染者の重症化予防に効果がある」なんて話には一足飛びにはならんわけですよ。

 どうも話を良く聞くと、検証可能な論文にまでなっていないどころか、そもそもまだ「イソジンでうがい」「水でうがい」「何もしない」に軽症者や無症状感染者を分けて経過を見たり、喉や鼻腔などでのウイルス濃度を測定して感染力の強さを調べたりといったこともしていないようです。

 さすがにこのレベルで大阪府知事が記者会見に出てきて「研究論文がまとまる前に、一定の効果が出た段階で呼びかけた」とかとぼけたことを言っている場合じゃないんですよ。一緒に記者会見に出てきた研究者の人も、相当なお調子者なんじゃないかとすら思います。大丈夫なのでしょうか。

■イソジンは医療用医薬品なので、転売そのものが違法です

 お陰でテレビでもネットでも報じられて、うっかり真に受けた国民が薬局に走り、メルカリなどでは転売ヤーの皆さんがウッキウキでイソジンうがい薬を陳列しておられます。いやいや、いまあなた方が転売しているそのイソジンは第3類医薬品なので、転売そのものが違法です(薬機法24条1項)。お巡りさん、こちらですよ。

 それにしたって、府知事が出てきて記者会見やって「イソジンに効果ありまぁす」とか言っちゃったら、そりゃ買い占めのひとつも起きますって。マズいでしょ。

 さすがにヤバいと思ったのか、吉村洋文さんがTwitter上で急遽釈明をおっぱじめました。

 いま世の中全体がこれだけフェイクニュース対策をしようと頑張っているところで、吉村洋文さん自らが率先して「イソジンが重症化対策に効く」とか言った結果、コロナ騒ぎ初期のトイレットペーパー買い占め騒動にも匹敵するイソジン買い占めに国民が走ったことについても思いをはせるべきだと思うんですよ。翌日の8月5日にも「釈明記者会見」をやっていましたが、主張していることを「誤解」されているとしつつも、結局はイソジンが何らかの効果がある前提での話になっていて、アチャーと思うわけであります。そうじゃないだろ。

 これはもう『イソジン吉村』と『日本イソジンの会』の爆誕ですよね。

■いくらピュアでも浮かれて記者会見をしちゃ駄目

 もちろん、吉村洋文さんはピュアにコロナウイルス騒ぎで困っている人たちのために、重症化してしまう国民を一人でも減らしたいという想いで黙っていられず記者会見してしまったのかもしれない。

 ただ、ちょっと考えれば分かることだと思うんですよ。重症化はもっぱら肺や全身の血管で発生しているのに、飲むわけでもなければ、のどの表面のウイルスを除去できるだけであるイソジンが重症化予防に効果的なはずはない、って。のどの表面からイソジンでウイルスを取り除いて、唾液によるPCR検査をしたらウイルスが見つかりませんでした、凄い! という話だけでハメ外し過ぎじゃないですかね。

 ひょっとすると、軽症者や無症状感染者の多くはのどにしかコロナウイルスがいないのでイソジンを使うことで症状の悪化を抑えられる可能性はあるかもしれない。でもそうであればこそ、論文もまともにない状態で浮かれて記者会見をしちゃ駄目だと思うんですよ。

■見栄えは良いんだけど、危なっかしい

 この吉村洋文さんの「軽さ」と言いますか、表に出られる優れたリーダーシップの割に言葉と脳みその軽い感じがまた、どうしても小泉進次郎くささを感じさせるんですよね。見栄えは良いんだけど、危なっかしいという。

 その点で、同じくコロナ対策で大阪独自のコロナ指標として話題になった「K値」に関しては、提唱した中野貴志教授・核物理研究センターも宮沢孝幸准教授・京大ウイルス再生研も、それが感染者の将来を予想する推移モデルという形では何ら立証することができず、証拠(エビデンス)はどこにあるのって話が完全に抜け落ちてしまっています。

■コロナワクチン、いったいどうなったんです?

 さらには、大阪府が大々的に発表していたコロナワクチン。いったいどうなったんです。医療関係者を集めて治験をやり、この秋にはワクチン開発の実用化にむけて大規模治験までするとされていたわけですが、創薬ベンチャーのアンジェスに関しても、結局成果はさっぱりな上に吉村さんが下手な政治主導をやったので責任問題に発展しかねない情勢です。

国内初のワクチン治験 吉村大阪府知事「前のめりの政治主導」の危うさ - 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20200703/k00/00m/040/136000c

■大阪らしいパンチの効いたギャグよりも

 ただでさえ、PCR検査のために医療機関に雨がっぱを配ろうとしたり、一個一個のネタは大阪らしく細やかなギャグでパンチを効かせているのは分かるのですが、なにぶん相手は感染症対策ですので大見得を切るよりもまずは着実な成果を出していき府民国民の請託に応えることのほうが大事なのではないでしょうか。

 それにしても、政治家が若くて見栄えが良くて歯切れの良い物言いとともにリーダーシップを発揮しようとすると、どの人も進次郎っぽい感じになるのは何故なのでしょう。吉村洋文さんも弁護士時代に武富士側の顧問弁護士として消費者金融訴訟を手がけていたということ以外は爽やかなイメージで売っている分だけ、ここできっちりと落ち着いた風格を身に着けて一層羽ばたいていってほしいと願っています。

 今回の件が、いい薬になったのではないでしょうか。

 間違っても、府民からつける薬がないと見放されることのないように。

(山本 一郎)

関連記事(外部サイト)