退職者続出 陸自の第1空挺団長は“パワハラ”常習者で通称「ハカイダー」

陸上自衛隊の第1空挺団長はパワハラ常習者と内部告発 2年5カ月で10人近くが退職か

記事まとめ

  • 陸上自衛隊の第1空挺団長はパワハラ常習者であると防衛省幹部が内部告発している
  • 土嚢のひもの種類やたたみ方で激怒し、部下の貯金が少なくても怒るという
  • また、空挺団の労働環境は劣悪を極めるが、団長だけは9時から5時のホワイト出勤らしい

退職者続出 陸自の第1空挺団長は“パワハラ”常習者で通称「ハカイダー」

退職者続出 陸自の第1空挺団長は“パワハラ”常習者で通称「ハカイダー」

第1空挺団長を務める戒田重雄陸将補(第1空挺団ホームページより)

「この夏の人事で、陸上自衛隊はパワハラで隊員が皆殺しになるかもしれない」

 筆者に内部告発した防衛省幹部はこう肩を落とした。

 隊員への被害がこれほど懸念されるのは、この夏の人事で一般企業の人事部長にあたる(陸上幕僚監部)人事教育部長に就任するのが確実視されている戒田重雄陸将補。現在は陸自唯一の落下傘部隊である「第1空挺団」の団長を務める。

■学生時代から後輩にハラスメント

 第1空挺団は千葉県習志野市に拠点を置き、陸自きってのエリート部隊として知られる。標語は「精鋭無比」。約2000人の団員がいる。空挺部隊は上空300mからパラシュートで飛び降りることを任務としており、日々の訓練も含めて、常に死と隣り合わせにある危険な部隊である。その団長がパワハラの権化のような人物だとはにわかには信じがたい。

 先の防衛省幹部はこう話す。

「彼のニックネームは学生時代から名前をもじって『ハカイダー』。少林寺拳法部では後輩に対するハラスメントで人を破壊しまくっていました。1年生に手押し車の姿勢で手にモップを持たせてモップがけをさせるという拷問のようなシゴキをした上、夜の休み時間にも下級生にうさぎ跳びでジュースを買いに行かせたり、もはやこの手の話は枚挙にいとまがないほどです。

 任官してからも渡り歩くポストほぼすべてで、誰かを潰したり、人生を歪めさせたりしており、まさに人材を破壊し続けているのです。2018年3月に空挺団長に就任してから10人近くが辞めています。前任者時代の退職者はゼロでした」

■土嚢のひもの種類やたたみ方で激怒

 昨年、千葉県を大型台風が襲った際には、第1空挺団は落木を伐採するなどの献身的な活動で注目を集めた。しかし、対外的にはイメージ向上となっているはずの災害時の活動についても、内部では不満の声が高まっているという。

「上へのアピールには熱心で、災害時の落木伐採や屋根のブルーシート張りなど第1空挺団の本来業務でない仕事を命令する。地元住民の方は喜ぶとは思うのですが、その間に部隊は訓練をはじめ、様々な活動に従事できなくなるため、パフォーマンス以外の何物でもありません。

 しかも土嚢のひもの種類やたたみ方という無意味な内容まで部下の幹部に命令し、従わないと激怒するので、災害支援にも支障をきたしています」

■部下の貯金が少ないとキレる

 戒田氏のハラスメントについては、多くの情報が寄せられた。筆者は複数の元空挺団員を含む陸上自衛隊関係者に取材したところ、以下のような所業が明らかになった。

「2018年11月、戒田氏は空挺団の中に借金がある団員がいることを知り、『金銭管理ができていないやつは自衛隊失格だ!』と激怒し、部下全員の貯金やローンなど、家計について書類提出させたのです。戒田氏なりの貯金の基準は100万円らしく、それ未満だと罵倒し、それ以上だと『エラい!』とわめきちらしていていました。借金を抱えている事実を周囲に知られ、恥をかいた隊員は少なくありません」(第1空挺団関係者)

 改めて言うまでもなく、自衛隊であろうと個人の金銭事情はプライバシーの最たるものである。個人情報や人権を保護する観点からも最悪だが、現場の士気は著しく下がった。

 また、別の第1空挺団関係者も嘆きを口にした。

「この無意味な『調査』は通常業務とは別に行われたため、集約に当たった各部隊の指揮官は早朝出勤に加えて、課業後の残業が1日当たり2〜3時間増えました。ひどいときには深夜11時までの勤務や土日出勤も強いられています。空挺部隊本来の訓練もできず、これでは最精鋭部隊に入った甲斐がありません」

 自衛隊員は国民の税金で雇われた公務員であり、個人の恣意的な命令で時間とエネルギーをムダにしていい理由は何一つない。

■「中間管理職も、間接的な被害者であるといえます」

 パワハラ事案に詳しい、弁護士の佐々木亮氏が解説する。

「今回のケースは、一般的に定義されている『パワハラ6類型』のうち、『精神的な攻撃(ひどい暴言)』と『個の侵害』に当たります。借金や貯金は基本的には個人の問題で、業務には何も関係ありません。民間企業であれば、民事訴訟で損害賠償請求の対象となるでしょう。

 また、とりまとめに当たった中間管理職も、本来やる必要のないハラスメントに関する命令を受けているので、間接的な被害者であるといえます。

 私が過去に相談を受けた、業務と関係ないことについて言及したパワハラの暴言としては、『親は破産しているのか? おまえもそうなるだろう』といった類似例があります。

(本件では)『借金をして脅されるリスクがある』『機密情報を漏らすリスクがある』との言い訳も考えられますが、そもそも上司がみんなの前で公表して罵倒するなど論外です」

■自分だけはゆうゆうホワイト勤務

 現在、空挺団の労働環境は劣悪を極めている。隊員は朝7時には出勤し、戒田氏のシゴキに付き合わされ、深夜になっても帰れない。一方で、戒田氏は9時から5時のホワイト出勤をして、土日ものんびりしているというから驚きだ。

 また、別の防衛省関係者からも以下のような証言を得ている。

「長期の海外派遣から帰国した隊員の苦労をねぎらうどころか、派遣期間中に自分が必要とする報告をタイムリーに上げて来なかったことについて数十分間大勢の前で罵倒しました。過酷な任務を日本のために頑張った隊員に対してはあり得ない対応で、まさかの屈辱を受け、その隊員は悔し涙を流した」

「部下が自分より先に帰宅するのは許さない。土日もまったく同じで、自分が出てきたときに部下がいないことが許せない」

「1分でも待たせると『オレを1分待たせるとはどういうことか!』と恫喝し、壁をなぐって穴を空ける」

 筆者のもとに届いた告発は多数に及び、およそ人の上に立つのに適当な人材とは思えない。

■恫喝が怖くて逆らえない

 戒田氏の恫喝により部下も萎縮し、現場の些細なトラブルについても報告がきちんとなされていないのが現状で、陸自の精鋭部隊とは言えない状況になっているという。元団員はこう話す。

「結局、戒田氏は部下や現場を全般的に信じていない。本来の軍事組織であれば、団長は大まかな方針を提示し、大隊長がそれをかみ砕いて中隊長に指示し、中隊長が隊員に説明するべきなのに、戒田氏はそうしない。何かあると臨時指揮官会議と言って、しょっちゅう長々とああだこうだ説教する。自分が全部細かく指示しないと気が済まないので会議時間が延び、非効率きわまりない。

 軍隊は部下を信じるところから始まっているのに、真逆の悪循環になっている。こんな指揮官のもとで中国などの他国が侵略してきたら、とてもではないが対応できる自信がない」

■防衛省にパワハラがまん延する理由

 軍隊はもともと体育会的な体質であるとはいえ、なぜこのような問題のある人物が左遷されるどころか、本流中の本流で出世していけるのだろうか。

 防衛省の人事決定プロセスでは、将官に推される人物は「能力人格に優れ」と閣議に諮られるため、深く詮索されることはない。また、入隊間もない時の成績で人事管理上基本となる同期での序列が決まり、よほどのことがない限りひっくり返らない。つまり、初めの段階でいい成績をとり、上司の覚えさえよければ一般企業とは比べ物にならないくらいパワハラが温存される組織文化がある。

 戒田氏も卒業した防衛大は年次が絶対的な差となるため、対等の人格として相手と接するよりは「俺の方がえらいのだから従え」という態度が普通となる。もちろん、一般的に軍隊とはそういうところだが、部下の人格や事情を細やかに考え柔軟に対応する能力が必要とされるのは言うまでもない。

■パワハラになる言動も「服務指導の一環」

 文春オンライン編集部を通じて防衛省報道室に戒田氏のパワハラについて質問したところ、なぜか1週間も待たされた挙げ句、以下のような回答があった。

〈個別の部隊等における退職状況の詳細についてはお答えを差し控えさせていただきますが、第1空挺団の依願退職者が自衛隊全般の状況と比べて特に多いということはありません〉

〈(借金と貯金の報告について)具体的にお答えすることは差し控えさせていただきますが、一般論として部下、隊員の身上把握のため服務指導の一環として必要な範囲で借財について情報を聴取することはあります〉

 民間企業であれば間違いなくパワハラになる言動も「服務指導の一環」だという言い分だ。河野太郎防衛相も、この回答には目を通しているという。

 防衛省と自衛隊は、今年3月1日から、パワハラやいじめに対する処分基準を引き上げている。その背景には、相次ぐ不祥事が自衛隊のイメージ悪化を招き、入隊を希望する若者が大幅に減っていることもある。それに先だって行われた記者会見では、河野防衛相も以下のように話していた。

「『パワハラ』、『いじめ』の件数が増えているということがございます。そういうものに対する処分の基準が少し甘いのではないかという疑問がありましたので、昨年から、それぞれ陸海空、あるいは内局に少し基準を厳格にすべきだと申し上げ、何回かキャッチボールをさせていただきました。基本的に、『いじめ』、『パワハラ』は根絶をしなければならないという大前提の中で、やはりルールをきちっと決める。それによって若い人に安心して入隊をしてもらうということは大事だと思っております」

 このときの覚悟は、言葉だけのものだったのか。

 もし戒田氏が人事教育部長に就任すれば、パワハラ幹部が出世し、被害者がもみ消される組織となり、陸上自衛隊は戦わずして崩壊してしまう。まさに国防の危機である。

(松岡 久蔵)

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