会社員の“東京脱出”で「魅力度ランキング最下位」茨城県が大注目されているワケ

新型コロナ影響でサラリーマンらに"東京脱出"の機運 軽井沢や湘南の物件に問合せ急増

記事まとめ

  • 新型コロナの影響で、サラリーマンを中心に東京を脱出しようという機運が高まっている
  • 長野県の軽井沢や神奈川県の湘南、横須賀や三浦半島では中古物件の問い合わせが急増
  • 都道府県魅力度ランキング7年連続最下位の茨城県はコロナ後には見直されそうだという

会社員の“東京脱出”で「魅力度ランキング最下位」茨城県が大注目されているワケ

会社員の“東京脱出”で「魅力度ランキング最下位」茨城県が大注目されているワケ

JR常磐線 ©iStock.com

 コロナ禍は緊急事態宣言解除で終息を迎えるどころか、ここにきてさらに感染拡大の様相をみせている。政府が繰り出す対策は、後手に回り、疲弊する宿泊・観光業を救済しようと立ち上げたGo Toキャンペーンもそのネーミングの上から目線さと、打ち出したタイミングの悪さもあいまって散々な評価に陥っている。

 あてにならない国や自治体の政策、いっこうに先が見えない閉塞感などから人々は自衛に走り始めている。当初コロナ禍は全く得体のしれない感染症であり、恐怖にさらされた人々は、ひたすら自宅に引き籠った。その結果、飲食店や物販店などが苦境に立たされ、国内外の顧客を失った宿泊業などを中心に倒産が出始めている。

■会社員の“東京脱出”が始まった

 こうした状況下、労働人口の多くを占める勤労者、いわゆるサラリーマンを中心に東京から脱出しようという機運が高まっている。彼らの多くは緊急事態宣言中、自宅でのテレワークを余儀なくされたが、この全国一斉テレワークお試しキャンペーンは政府のGo Toよりもはるかに国民の間で定着してしまった感がある。というのも、宣言解除後も多くの企業がテレワークを継続しており、その流れは最近の感染拡大を受け、より確固たるものになっているからだ。

 勤労者の側もこの動きはむしろ歓迎のようだ。毎朝毎夕の通勤という行為がいかに苦行であったかに気づいただけでなく、毎晩上司や取引先などと夜の街を徘徊する習慣が健康に悪く、生産性も少ないことを自覚したのだ。

 通勤が週に1、2回、あるいは月に2、3回程度になった企業も多くなり、どうやらこの状態が今後も継続することが確定的になった人々の間から、東京を脱出しようとする動きが顕著になっている。

■軽井沢や湘南では中古物件の問い合わせが急増

 長野県の軽井沢では、いまだかつてないほど中古別荘を購入したいという問い合わせが増えているという。神奈川県の湘南は、東日本大震災直後は津波を警戒してこのエリアから脱出する動きもあったが、ここにきて問い合わせが急増している。また、都心居住傾向が強まった結果、通勤圏外に追いやられていた横須賀や三浦半島でも、やはり中古住宅を買いたいという問い合わせが増えている。

「密」を避けて自然環境のよいところに住み、基本的には自宅ないし自宅近辺にあるコワーキング施設などで働くライフスタイルになれば、これまでのように一生分の給料債権を担保にして、都心のマンションを買うような行為をせずともすむ。住宅にはあまりお金をかけずにすむ場所、街を選ぶ。日本人の住宅選びもようやく「会社ファースト」から「生活ファースト」に進化しそうだ。

 そうした観点から住む場所を選ぶとしたら、軽井沢や湘南、三浦などに人々の目が向くのはよくわかる。だが、これらのエリアは地価がかつてよりも下がったとはいえ、それなりの水準にある。もっと手ごろで生活環境の良いエリアはないだろうか。

■「都道府県魅力度ランキング」最下位からの大逆転

 茨城県は、ブランド総合研究所から毎年発表される「都道府県魅力度ランキング」で、7年連続全国47都道府県中の最下位になっている。この調査は過去11回実施されているが、茨城県は12年の46位を除き、10回最下位に沈むという不名誉な地位に甘んじてきている。

 昨年の調査結果発表にあたっては、茨城県内に台風で大きな被害が出ている年に、さらに県民のプライドを傷つける発表だとして茨城県知事が抗議し、調査会社が謝罪。サイト上では30位までしか記載しない処置までとられる事態になった。

 そんな不人気県代表の茨城県だが、アフターコロナにはおおいに見直されるのではないかと思われる。茨城県は利根川を挟んで千葉、埼玉と接する。東京から40キロ圏には取手が入り、60キロ圏まで拡大すれば土浦やつくばが入ってくる。この距離感は神奈川県でいえば平塚や大磯、三浦付近と一緒になる。

 ところが2005年につくばエクスプレスが開業するまでは、県内から東京に向かう通勤に使える鉄道はJR常磐線のみ。しかもこの路線は老朽化が進み、車両故障も多く、2015年に上野東京ラインが開通するまでは上野止まりだったことから、東京に通うサラリーマンの住宅地としての地位は神奈川方面などと比べると低いものだった。

■野菜、果物、魚……なんでも美味しい!

 だが、アフターコロナでは、様相が変わってきそうだ。月数回の通勤を前提に、基本的に1日を自分が住む街ですごすことから見直すと、茨城県の魅力がわかってくるはずだ。

 たとえば、意外と知られていないが茨城県は食の宝庫だ。農業産出額は北海道、鹿児島に次いで全国3位。米や、東京向けに出荷される野菜、果物など品ぞろえも豊富だ。特にメロンやいちご、梨やすいかなどは高品質のものが多い。県内でメロンなどを扱う農家の中には、年収が数千万円から1億円を超えるところも珍しくない。

 また茨城県の沖合は、日本海流と千島海流がぶつかる国内でも有数の漁場だ。カツオやヒラメなどの高級魚の他、アンコウは冬の鍋料理に欠かせぬ存在だ。県内には利根川のみならず、那珂川、久慈川などの河川が多いことから鮎や鰻などの川魚も食卓を飾る。

 豊かな水源は酒造りにも最適だ。「大観」や「結」などの日本酒は首都圏のみならず全国に出荷されている。肉も肉質等級4級以上を誇る常陸牛は高級和牛として知られる。

■ひたち海浜公園や偕楽園など、観光地も充実

 観光地としては人気がいまいちの茨城県だが、ひたちなか市にある、ひたち海浜公園はネモフィラが咲き誇るゴールデンウィークには多くの人出で賑わう。山好きなら筑波山、海でサーフィンや釣りが楽しみたい人は鹿島灘や大洗海岸へ。大洗海岸から見る日の出は得も言われぬ美しさだ。冬は大子町の袋田の滝を訪れると、高さ120m、幅73mの滝が巨大な氷柱となる氷瀑を楽しむことができる。

 歴史に触れたい人は水戸の偕楽園がよい。偕楽園は1842年に9代藩主徳川斉昭によって造られた日本庭園で、岡山の後楽園、金沢の兼六園と並び、日本三名園の一つに数えられる。園内の梅は全国的に有名で毎年2月になると梅まつりが開催される。梅ばかりがクローズアップされるが、5月になると咲き乱れるつつじも見どころ十分だ。また秋の訪れを感じさせる萩の季節も見逃せない。偕楽園は全体が公園となっていて、その面積はニューヨークのセントラルパークに次いで世界第2位の広さを誇る。

 偕楽園を訪れる際に足を延ばしたいのが千波湖だ。この湖は水戸城の南側にあって外堀の役目をしていたが、戦後の埋め立てなどによって整備されたものだ。湖周辺を歩くとこの街の持つ独特の風情を感じることができる。梅やつつじの季節でなくとも、この散策路はゆったりとした時間の歩みを体感できる素敵な空間だ。

■中古住宅は取手付近で1000万円から

 実は茨城県には、生活するうえで魅力的な環境がいっぱいだ。不便だと散々腐されてきた鉄道も常磐線が上野東京ラインで品川までつながるようになり、つくばエクスプレスは東京への距離をぐっと縮める役割を果たした。たまに東京に出向くくらいならこの程度の交通網で不足はないだろう。むしろ県内には東京にはつながらないが、福島県郡山市とつながり紅葉が見事な水郡線をはじめ、ひたちなか海浜鉄道、鹿島臨海鉄道など、地域の魅力をたっぷり味わえるローカル鉄道もあり、おすすめだ。

 道路も常磐自動車道は東北道よりも空いていて運転がしやすいし、圏央道も整備されて成田方面へのアクセスも飛躍的に向上した。首都圏第3の空港、茨城空港からは札幌、神戸、福岡、那覇の各都市へ、国際線も今はコロナ禍で休止中だが上海や西安、台北などとつながる。

 こうした生活環境を享受できる茨城県。家も格安だ。取手あたりでも駅徒歩15分以内、築20年以内の中古住宅が1000万円から2000万円台、水戸でも3000万円台で手に入る。ねらい目といってよいだろう。今年も秋には都道府県魅力度ランキングが発表される。茨城県の躍進を期待したい。

(牧野 知弘)

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