インサイダー取引の懸念も 吉村洋文府知事「イソジン会見」強行 内部文書

インサイダー取引の懸念も 吉村洋文府知事「イソジン会見」強行 内部文書

大阪"イソジン会見"内部文書

インサイダー取引の懸念も 吉村洋文府知事「イソジン会見」強行 内部文書

吉村洋文知事 ©共同通信社

 8月4日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染予防策として、「イソジン」などポビドンヨードを含むうがい薬の使用を呼び掛けていた大阪府吉村洋文知事(45)。会見直前の打ち合わせで、松井一郎大阪市長が株価への影響に言及していたにもかかわらず、吉村氏が会見に踏み切っていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。

 問題の打ち合わせは、7月31日午後に大阪市役所の市長応接室で開かれた。出席者は、吉村氏、松井氏、府健康医療部の藤井睦子部長、イソジンに関する研究を主導した大阪はびきの医療センター・次世代創薬創生センターの松山晃文センター長ら7名。?30代女性・沙和さん(ツイッター名) が情報公開請求を通じて、この打ち合わせのやり取りなどを含む約720ページに及ぶ記録を入手し、「週刊文春」は女性から資料の提供を受けた。

<知事・市長と機構との面談(概要メモ)>と題された文書には、この日の吉村氏らの発言が詳細に記されている。

 イソジンの殺菌効果に関する研究結果を説明する松山氏。当初は症例数の少なさを気に掛けつつも、吉村氏は次第に前のめりになっていく。そして、マスクのような品不足に陥らせないためにも、「国にも協力を仰ぐべきだ」と主張する。

吉村「官邸か国に『大阪で大実験をするから製造ラインを至急増やしてほしい』と伝える。対象としてはホテル療養者と入院患者、できれば自宅療養者も電話診療等で処方して、1度(※註=8月)20日まで、1回それをやったらどうなるのか。減るのか。予防効果がないから、重症化するのが減るとか早く回復するとかの結果が出るかもしれない」

松山「これまでのデータは府で持っているので、(嗽実施)前後で比較したら差が出てくると思う。自宅療養者はデータが出ないかもしれないが、患者周辺でクラスターが発生しないという結果が出るかもしれない」

吉村「本当は夜の街の人にも配りたいんだが」

松井「そうやけど、それは量を確保しないと無理やから。公表したら薬局は大慌てになる。株価にも影響する話。スケジュールとして、(※8月)4日に5日からの休業要請について知事と俺で会見をやるから、そのときにこの研究成果を先生に発表してもらって」

 関連銘柄の株価が大きく動いてしまうことなどへの懸念を示した松井氏。ところが、吉村氏はその点には一切触れず、こう応じるのみだった。

吉村「(※松山氏に)同席してもらったらいい」

 結局、8月4日に行う休業要請に関する会見の際に、松山氏が同席し、イソジンに関する研究の成果を発表することを確認し、打ち合わせは終了した。

■うがい薬メーカーの株価は年初来高値を更新

 実際の8月4日の会見では、吉村氏がイソジンなどのうがい薬を並べ、「(イソジンが)コロナに効くのではないかという研究結果が出ました」などとアピール。昼過ぎからスタートした会見はテレビ番組で生中継され、全国のドラッグストアではうがい薬が飛ぶように売れたという。

 株式市場が開いていた時間だったこともあり、うがい薬を販売する「明治ホールディングス」の株価は一時、前日終値比640円高の8990円をつけ、年初来高値を更新。松井氏の懸念が的中する形となった。

 さらに、吉村氏の会見から5日後の8月9日のこと。タレントのテリー伊藤が「サンデー・ジャポン」(TBS系)で以下のように発言し、物議を醸した。

「僕、この発表する時にですね、『ミヤネ屋』(日本テレビ系)に出てたんですよ。で、実はこの話を1時間半くらい前に知った。場合によってはこれね、薬メーカーの株価も買えるなっていうふうに、一瞬、頭も入ったんですけど。それちょっとインサイダー取引みたいな感じで、僕の立場でそれやると申し訳ないなと思ってやらなかったんですけども」

 テリー氏の発言に対し、吉村氏はツイッターで「テリー伊藤さん自身が、TVでの発言を撤回されています」としたうえで、「インサイダー取引は犯罪です。ネットで根拠なく軽々に発信されない方がいいです。当然、僕にそのような事実はありません」などと反論している。

 金融証品取引法で規制されているインサイダー取引を誘発しかねなかった吉村氏の“イソジン会見”。発表の時間帯や方法を見直すという判断はなかったのか。

 吉村氏は「週刊文春」の取材に以下のように答えた。

「株価が上がるか下がるかは、僕は意識していない。松井さんが『株価に影響する』という話はしているけれど、全体を見てもらったら株価がどうのこうのという議論にはなっていない。市場が閉じた後にとか、それが株価に影響するかとかそういう意識はないし。株価は市場が決める事。(イソジンの主な成分である)ヨードの株を持っているわけでもないし、そこをどうこうしようというのはない。結果は上がっているみたいだけど、そこは分からない。そこは市場が決めること。我々は研究結果を発表して、感染拡大を抑えたいという思いですよね」

 ただ、そもそも8月4日の会見では、医師である松山氏がイソジンに関する研究成果を発表することになっていた。それがなぜ、吉村氏自らが発表する形になったのか。その経緯を記した別の内部文書や、約20分間に及ぶ吉村氏との一問一答についても、10月8日(木)発売の「週刊文春」で詳報している。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年10月15日号)

関連記事(外部サイト)