三浦春馬さん、竹内結子さん、木村花さん…芸能人「自殺の連鎖」はなぜ起きるのか?

三浦春馬さん、竹内結子さん、木村花さん…芸能人「自殺の連鎖」はなぜ起きるのか?

三浦春馬さん ©文藝春秋

 三浦春馬さんが亡くなってから3カ月が経とうとしているが、いまだに彼の自死をめぐる報道は止まない。

 三浦さんだけではない。リアリティー番組「テラスハウス」に出演していた木村花さん、芦名星さん、藤木孝さん、竹内結子さんなど、芸能人の死をめぐる報道が「次なる死」を招きかねないと警鐘を鳴らすのが、筑波大学教授の斎藤環氏だ。

■夏から自殺者は増えている

「大変言いにくいことですが、精神科で患者が自死すると、同じように死を選ぶ患者が続発することがあります。同様に、生と死の境界線上にいる人たちが、芸能人の死の『物語』に触れることで死に傾く可能性が非常に高い。

 精神科医として私が診ている患者さんの中にも、三浦春馬さんや、竹内結子さんの自殺に深くショックを受けている方がいらっしゃいます。元からその芸能人の長年のファンだったわけではないのに、です。芸能人たちの死は、心が弱っている人たちに対して、大きな影響を及ぼしかねない。何とか立ち直っても、次の死でまたショックを受ける。メンタルを打ち砕くようなダブルパンチ、トリプルパンチを受けている人は、相当数いるはずです。このことを、きちんと考慮する必要があります」

 警察庁の発表によれば、8月の自殺者は1854人で、前年同月比で251人増加している。今年上半期の自殺者数が前年を下回っていたことを考えれば、この夏に急増したと言っていい。自殺が増えた背景にあるのは、「コロナうつ」という言葉に象徴される、新型コロナウイルスがもたらした社会の閉塞感だ。

■「投影性同一視」が悪影響を及ぼしている可能性

 それにしても、なぜ華やかな世界にいる芸能人の訃報が続くのか。斎藤氏は、芸能人には「投影性同一視」と呼ばれる心理作用が起こりやすく、それが悪影響を及ぼしているのではないかと指摘する。

「『投影性同一視』とは、例えば他人という鏡に自分の怒りを投影し、他人から自分が責められていると感ずるような心のメカニズムのことです。

 普段は人気があり、テレビ出演すれば視聴率という数字や視聴者の反応でその人気を実感できる立場にあったのに、それを肌で感じる機会が、コロナ禍において奪われてしまった。自分が評価されているという確たる証拠がない状況においては、目の前の現実を良くも悪くも解釈できてしまいます。その解釈がネガティブに振れると、不安や怒り、苛立ちを抱えてしまう。

 そのとき、自らの不安や苛立ちなどの負の感情を、みんなが自分を嫌っているだとか、自分に対して苛立っているというように、社会の評価へとすり替えてしまうのが『投影性同一視』です。自分は攻撃されていると感じてしまうのです」

■いま、芸能人が抱えている“リスク”

 5月に亡くなった木村花さんの場合、SNS上での誹謗中傷に悩んでいた。

「木村さんの例で言えば、バッシングする側は、番組の断片を彼女の真の姿と思い込んで見ているし、バッシングされる木村さんもSNSを通じてモンスターのような他者を見ているという不幸な悪循環が起こっていたように思います。いま、芸能人はある種のリスクを抱えた集団だと考えても間違いではないでしょう。精神科では、病院内で亡くなった方がいた場合、続発することのないよう、死に傾いている人がいないか、みんなで警戒します。SNSで暖かいことばをかけるといったささやかなことでも構いません。みんなで警戒し、目を配ることが大切です」

「文藝春秋」11月号および「文藝春秋digital」掲載の「 芸能人『自殺連鎖』の病理 」では、斎藤氏が新型コロナウイルスによって、「引きこもり」状態になったことで起こった社会の閉塞感や女性の自殺者が急増した理由を分析。「死を物語化」する報道への警笛、身近に「死にたい」という感情を抱いている人がいる場合の具体的な対処法について詳細に解説している。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年11月号)

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