NTTの執行役員に天下り 柳瀬秘書官が従う「首相案件」

NTTの執行役員に天下り 柳瀬秘書官が従う「首相案件」

柳瀬唯夫氏 ©共同通信社

 9月29日、NTTドコモの完全子会社化を発表したNTT。買収総額は4兆円を超え、国内企業へのTOBでは過去最大だ。その過程で重要な役割を果たした人物がいる。NTT執行役員の柳瀬唯夫氏(59)。安倍政権の首相秘書官だ。

「柳瀬氏と言えば、加計学園の獣医学部新設問題を巡って、官邸で学園側と面会していたことが物議を醸しました。その際、『本件は首相案件』と発言したとする愛媛県の文書の存在も明らかになっています。にもかかわらず、『記憶の限り、お会いしていない』と“迷答弁”を重ね、時の安倍晋三首相を守り抜いた。18年7月に経済産業審議官を最後に退官しますが、約5000万円の退職金は満額支給されました」(官邸関係者)

 その後、19年2月にNTTグループの海外事業を統括する「NTTインク」の社外取締役に天下り。株主総会では「政府に忖度したのか」という質問も出たが、“NTTのドン”と言われる澤田純社長は「政府からの依頼は一切ない」としつつ、「もともと知人であり海外に広い人脈を持つことから私からお願いした」と起用の経緯を明かした。

「グループの経営改革に力を注ぐ澤田氏は今年6月、政府と太いパイプを持つ柳瀬氏をNTT本社の執行役員兼事業企画室長という中枢ポストに起用します。柳瀬氏自身も経済紙の取材に『しがらみを離れて、NTTグループの成長やグローバル化に向けたポートフォリオ組み替えのお手伝いをしたい』と抱負を語っていました」(NTT関係者)

■携帯料金は下がっても家計負担は増える可能性も……

 ところが、NTTを揺るがす出来事が起きる。「携帯料金の4割値下げ」を掲げる菅義偉首相の誕生だ。首相は以前からドコモの吉澤和弘社長を「こんな人が経営者で大丈夫なのか」とこき下ろしてきた。対応を迫られたNTTが踏み切ったのが、冒頭に触れたドコモの完全子会社化である。

「完全子会社化でコスト削減を進め、海外勢に対抗するとともに、料金値下げの原資を捻出する方向です。TOB発表後、柳瀬氏は安倍氏の前に首相秘書官として仕えた麻生太郎財務相に、子会社化の経緯を報告している。麻生氏も『国際競争力のある組織に変わって欲しい』と期待感を示したといいます」(経済部記者)

 しかし、懸念も残る。

「行政改革によって、無駄が多かった巨艦NTTは分社化されたはずでした。それが“先祖返り”する形です。ドコモの携帯料金が下がったとしても、光ファイバー網の構築など他の事業にしわ寄せがいき、結局、家計負担は増える可能性が高い」(携帯会社幹部)

 だが、携帯料金値下げは「首相案件」。柳瀬氏は本件を着実に実行するだろう。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年10月22日号)

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