エアコンもダメ、添加物もダメ…姑(71歳)が手強すぎて困っています――中野信子の人生相談

エアコンもダメ、添加物もダメ…姑(71歳)が手強すぎて困っています――中野信子の人生相談

"電子レンジはダメ"姑に困惑

エアコンもダメ、添加物もダメ…姑(71歳)が手強すぎて困っています――中野信子の人生相談

中野信子さん ©文藝春秋

大久保佳代子「恋愛においても日常においても人のアラ探しばかりする私って」――中野信子の人生相談 から続く

 みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします。

◆ ◆ ◆

■Q 姑の“こだわり”が強過ぎて困っています――40歳・二児の母の薬剤師からの相談

 夫の両親は定年後、富士山が見える高原に家を建てて暮らしていました。義父が3年前に亡くなり、今は義母がそこで独り暮らしをしています。いいところだし、義母のことも気にかかるので、東京に住む私たちは家族4人そろって頻繁に訪ねていたのですが、近ごろは足が遠のきつつあります。

 というのも義母は団塊の世代の71歳。学生時代から討論好きで、今でも理論派。電磁波はカラダに悪いので電子レンジはダメ、エアコンもダメ、電子蚊取りもダメ、殺虫剤、洗剤、農薬を使った野菜、添加物……みんなダメ。使うモノにも食べるモノにも制約が多く、その理由を滔々と述べるのです。

 だからせっかく訪ねても居心地が悪いです。子どもたちはエアコンがないのは我慢できないと、行きたがらなくなってしまいました。

 義母は健康に悪いという情報は鵜呑みにして使用禁止物を増やす一方で、健康にいいという情報を取り入れることはなく、納豆ブームやエゴマブームには乗らないのですが、これはどうしてなんでしょう? そして、もう少しフツーの生活を受け入れてもらうにはどうしたらいいでしょうか?

■中野信子の回答「正しくない人に罰を与えるのは、脳にとって喜び」

A 団塊の世代が大学生の頃、DDTなどの危険性を訴える『沈黙の春』(レイチェル・カーソン著)がベストセラーになりました。恐らくお義母様も読まれているでしょう。

 当時は、思想を放棄したり変えたりすることは“日和る”“転向”などと呼ばれ邪道だと軽蔑されるような傾向もありました。現代の感覚では確かに「柔軟性に欠ける」お考えかもしれませんが、一方で「柔軟性がある」というのは“日和る”ことと同値だともいえます。

 ところで、倫理的な正邪の判定は、脳の内側前頭前野が担っています。「私は今、正しいことをしている」と判定すると脳は喜びという形で報酬が得られます。

 この仕組みが個人で完結していればことは単純ですが、実は、「正しくない」人に罰を与えるときにも、喜びが得られるという仕掛けになっているのが厄介です。

 納豆ブームなどにお義母様が乗らなかったのは、ステルスマーケティング(宣伝と気づかれないように行われる宣伝工作)ではないかと怪しまれたからではないでしょうか。脳の正邪を判定する領域は、あまりに商業的なことは、正しくない、と判定するという面白い性質を持っています。

■口実を作って距離を置き、かわし続けて

 どんなに現代のエアコンは身体のために良いのだと主張をしたところで、お義母様にとってはエアコンの設置は“悪”なのでしょう。お義母様も理論武装されていて、討論になれば年季が違うでしょうし、家族関係等のしがらみを考えてもおそらくあなたに勝ち目は薄いことでしょう。

 こうした場合、考えを改めさせようと企図するよりは、うまく口実を作って距離を置かれるほうがより合理的ではないかと思います。密な関係をとらないことに最初は後ろめたさをお感じになるかもしれませんが、実は、適度な距離感の関係を築くことはお互いにとってとても良いことなんです。夫婦間ですらこれは同じことが言えます。

 近くにいれば、人間は「なぜ同じルールで動いているはずなのに、あの人は私の意図と違う行動をするのだ」と互いに責める気持ちが強まり、どんなに大切な相手であっても、必ず争いが生じます。いえ、大切に思っている相手だからなおさら、かもしれません。努力すれば争いをなくせる、というのなら、努力しなければ争いはなくせない、ということです。

 そこで、互いが気持ちよくいられるような、良好な距離を保ち続けるために、言い訳をたくさんストックし、いざというときにすぐ使えるようリストアップしておきましょう。そして、相手のツボをよく観察し、短く効率のいいやり取りで相手をいい気分にさせて一緒にいる時間を長くしようとする誘導を可能な限りかわすのです。

 たまには違う文化に触れてみようかなと、余力のあるときにだけ、言葉の通じる外国を旅しにいくような感覚で訪問できるような距離感がベストではないかと思います。べったりと一緒にいるよりもずっと、そのほうが心地よく、互いにリスペクトし合って、良好な関係を長続きさせることができるだろうと思います。

◆ ◆ ◆

中野信子さんにあなたのお悩みを相談しませんか???
みなさまのお悩みを? woman@bunshun.co.jp (件名を「中野信子人生相談」に)もしくは〒102-8008 東京都千代田区紀尾井町3-23「週刊文春WOMAN」編集部「中野信子の人生相談」係までお寄せください。匿名でもかまいませんが、「年齢・性別・職業・配偶者の有無」をお書き添えください。

text:Atsuko Komine

(中野 信子/週刊文春WOMAN vol.3)

関連記事(外部サイト)