代々木上原で見つけた“オシャレ鶏白湯スープ” 名店の味を進化させた「つけ蕎麦」の衝撃

代々木上原で見つけた“オシャレ鶏白湯スープ” 名店の味を進化させた「つけ蕎麦」の衝撃

小田急線代々木上原駅は綺麗な高架の駅である

 コロナ禍でそば屋の閉店が相次ぐ中、果敢に新規オープンしている大衆ファスト系そば屋がある。3月30日、東京駅八重洲中央口改札内に株式会社JR東日本フーズの「蕎麦 29 東京」が、そして7月27日、四谷三丁目に日本レストランシステム株式会社の「蕎麦いまゐ」がオープンした。いずれも外食大手の資本である(「蕎麦 29 東京」については、平松洋子さんが「本の雑誌11月号」に詳しく記されている)。

 そして、11月4日、小田急線代々木上原駅の「小田急アコルデ代々木上原」2階に株式会社小田急レストランシステムの「つけ蕎麦 ツヅラオ」がオープンした。

■「つけ蕎麦 ツヅラオ」カタカナ店名での新規参入

 株式会社小田急レストランシステムは、人気立ち食いそば店「名代箱根そば」を経営している素敵な会社である。他にも「そば処 つづらお」も経営しているのだが、さらに「つけ蕎麦 ツヅラオ」とカタカナの店名での新規参入となる。どんな店なのかさっそく訪問してみることにした。

 小田急線代々木上原駅は西側が井の頭通りに接し、高架下に駅舎や商業施設「小田急アコルデ代々木上原」が細長く配置された、なかなかユニークな構造である。西側が平坦で低く、東側(新宿側)がやや高くなり坂が多い地形である。駅前ロータリーなどはなく、商店や飲食店ビルが高架線路沿いに並び、商店街が駅の両側に広がっている。昔の駅舎の面影はまったくない。

 改札口は2階にある。改札を出ると正面に階段とエスカレーターがあり、その横をまっすぐ行くと小田急アコルデ2階の商店街が続いている。「つけ蕎麦 ツヅラオ」はその商店街に入ったすぐ左の好立地にある。

 ツヅラオのヅの字の部分の暖簾をくぐって店に入る。入口にはエタノールボトルがどんと置いてある。店内はかなり大きく、右側が厨房とカウンター、左側がゆったりとテーブルが配置されている。開店11時すぐの訪問であったが、すでに、お一人様女性客がちらほらと入店していた。

「鶏つけ蕎麦」(900円)が一番人気だというが、若いお店の方に聞いてみると、「豚胡麻だれつけ蕎麦」(1,050円)がイチオシというので、さっそく注文してみた。注文後メニューを改めてよくみてみる。女性に人気な「バジルつけ蕎麦」、「トマトつけ蕎麦」、「バターチキンカレーつけ蕎麦」というメニューもある。

■11種類すべて“つけ蕎麦”で、9種類は鶏白湯スープを使用

 11種類、すべてつけ蕎麦である。しかも、返しと鰹節などの出汁を使った「そばつゆ」を使っているのは「もり蕎麦」、「青森県産とろろと八ヶ岳卵のつけ蕎麦」だけ。9種類は鶏白湯スープを使用していることに気が付いて、少し驚いた。

 現在、営業休止中の麹町の「そばうさ」でさえ、つゆのベースは「そばつゆ」を使っている。虎ノ門にあった伝説の店「港屋」もそうであった。

 メニューのラインナップをみると、商品開発には相当な時間と試行錯誤をかけたであろうことがうかがえる。『箱根そばさん、やりおるな』などとつぶやいていると、5分と待たず、「豚胡麻だれつけ蕎麦」が登場した。

■「豚胡麻だれつけ蕎麦」(1,050円)

「豚胡麻だれつけ蕎麦」のビジュアルを紹介しよう。白く大きめのどんぶりに、海苔、沢山の白胡麻、太めのメンマ、豚ばら肉、沢山のねぎ、糸唐辛子が配置され、中心に味玉が添えられていて、そばはまったくみえない。一見、中華つけめんのようなビジュアルである。

 そばを引っ張りだしてみると、いわゆる田舎そば系のごわっとしたタイプである。そしてつけ汁をひとくち飲んでみると、温かいつけ汁で、鶏白湯スープに濃厚な胡麻だれを合わせて、赤いラー油が少しだけ浮いている。まず、そばと豚ばら肉をつけ汁に入れて食べてみる。

 ツルっとした中華麺と違い、田舎そばは胡麻だれをうまく纏って、つけ汁を持ち上げている。そばは一般的に濃厚な食材と相性がいい。胡麻だれや胡桃だれは当然合うわけである。これはなかなか良い味である。

 食べていると、田舎そばにのる具材が中華系なので、なんだか和中融合した不思議な感覚に襲われた。いろいろ、具材と田舎そばをつけ汁に入れて楽しんでいると、そば湯をもってきてくれた。『胡麻だれにそば湯』は初体験だ。でもこの胡麻だれのそば湯割りもすごくうまい。味がまとまっていて濃厚なあと味だ。

■「トマトつけ蕎麦」(1,100円)を追加注文

 実は、何を血迷ったか、食べ終わる頃、「トマトつけ蕎麦」を追加注文してしまった。お店の方も「えっ大丈夫ですか?」と心配してくれるくらいの勢い。

 しばし待つこと5分。「トマトつけ蕎麦」が登場した。つゆで衣類が汚れるのを避ける紙エプロンが付いている。

「トマトつけ蕎麦」のビジュアルも紹介しよう。白く大きめのどんぶりに、生バジル、多めのミニトマト、薄めに揚げた3枚の鶏天、沢山のねぎと糸とうがらしがのって、中心に味玉がのって登場した。なかなか斬新なビジュアルだ。

 さっそくそばをまた引っ張り出してトマトのつけ汁につけて食べる。つけ汁はアツアツでトマトソースと鶏白湯スープを合わせたものでオリーブオイルがかかっている。なんとなくイタリアの風まで吹いている。そして薬味の七味とうがらしをかけて食べると和欧融合の「ツヅラオ」の世界に忽然と紛れ込んでしまったような異次元体験となるわけである。気が付くとトマトつけ汁にそば湯を入れてゴクゴクと飲み干してしまった。

 つけ蕎麦2品を食べて、従来のそば屋とは異なる異次元食空間を体験してしまったような気分である。

■営業推進部・長谷川真也さんに疑問をぶつけてみた

 訪問後、ふつふつと疑問がわいてきた。そこで、運営会社である株式会社小田急レストランシステムの営業推進部・長谷川真也さんにいくつか質問してみた。

――従来からある「そば処 つづらお」と「つけ蕎麦 ツヅラオ」はどう区別しているのでしょうか?

長谷川:「そば処 つづらお」は、いわゆる街のおそば屋さんの雰囲気を残しつつ、気軽に伝統の味を楽しんでいただきたいお店です。一方、「つけ蕎麦 ツヅラオ」は、文字通りカタカナになって、つけ蕎麦を専門とする斬新な味を追求したお店です。メニュー開発にも相当苦労しました。コロナ禍という状況でもあり、本当に手探りの状況でオープンしました。

――小田急アコルデ 代々木上原1 階には「名代箱根そば」があります。こちらとはどのようにすみ分ける予定ですか?

長谷川:小田急アコルデ1階はどちらかというとファスト系のお店が多いのです。朝昼晩となるべく急いで移動される方は1階の「名代箱根そば」をご利用いただければと思います。そして、昼・晩はファミリー層や女性のお客さま、ご夫婦様やカップルの方、また近隣にお住いのオフィスワーカーの方などが気軽にゆっくりご利用していただきたいと考えております。お店のレイアウトも、少人数で、密にならないようにご利用しやすいように配置しております。

――「つけ蕎麦 ツヅラオ」はどのジャンルにも属さないようなメニュー構成だと思います。商品開発には相当ご苦労されたと思いますが、一番、お客様にアピールしたいことはなんでしょうか?

長谷川:それぞれのつけ汁や盛り付けの華やかさ等開発には相当苦労しました。つけ汁ごとに全く違った味わいをお楽しみいただけますので、是非ご来店ください。

――「つけ蕎麦」の多くが、鶏白湯スープがベースになっています。従来のそば屋にはないコンセプトだと思います。ある意味冒険だと思いますが、これには何か意図がありますか?

長谷川:色々試作する中で、そばつゆとの相性も良く、その他のつけ汁と合わせても主張しすぎず、麺とのからみも良かったので鶏白湯スープに決めました。

――お客様にメッセージなどがあればお願いします。

長谷川:このコロナ禍の状況においては、お客様には安全を十分に確保していただき、「つけ蕎麦 ツヅラオ」をご利用いただければと思います。

「つけ蕎麦 ツヅラオ」は「名代箱根そば」とも「そば処 つづらお」とも全く違うコンセプトで誕生したことがよくわかった。そのメニュー構成も斬新で、鶏白湯スープを使うなど、従来のそばの世界を超えた新しいジャンルの食を創造していると思う。

「つけ蕎麦 ツヅラオ」は確かに虎ノ門にあった「港屋」や麹町の「そばうさ」などの「ごわっとしたそばとユニークなつけ汁」という系統のお店であることは間違いない。

 しかし、「港屋」はファウンダーとしてのリスペクトが人気の源だった。「そばうさ」はそば好きには堪らないマニア感があった。そして、「つけ蕎麦 ツヅラオ」はさらに進化させ、より一般の人にも受け入れられるように創意工夫した味を演出しているところが良いと思う。

 しかし、困ってしまった。人気の「鶏つけ蕎麦」も食べてみないとならないし、「バジルつけ蕎麦」も食べないと「そばうさ」との違いが判らない。折をみて代々木上原に複数回、再訪必至である。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

つけ蕎麦 ツヅラオ?
住所:東京都渋谷区西原3-8-5 小田急アコルデ代々木上原2F
営業時間:
 平日 11:00〜15:00(LO14:30)
   /17:00〜22:00(LO21:15)
  土 11:00〜22:00(LO21:15)
日・祝 11:00〜21:00(LO20:15)
※蕎麦なくなり次第終了
定休日 小田急アコルデ代々木上原休館日
03-6416-8205

https://www.odakyu-restaurant.jp/shop/tukesobatsudurao/yoyogiuehara.html#shopinfo

(坂崎 仁紀)

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