第一生命19億円詐欺 営業職員A子さんと山口銀行元頭取との“深い関係”が発火させた「地銀再編」

第一生命19億円詐欺 営業職員A子さんと山口銀行元頭取との“深い関係”が発火させた「地銀再編」

A子さんが勤務していた第一生命の徳山分室 ©共同通信社

 第一生命保険の営業職員だったA子さん(89)が10年以上にわたって、21人の顧客から計19億円を騙し取っていた詐欺事件。その影響は、銀行界にも波及する気配を見せている。

 地銀関係者が明かす。

「A子さんは第一生命徳山分室(山口県周南市)の所属で、社内で唯一『特別調査役』の肩書を持っていました。彼女が大口顧客の信頼を得てきた背景には、地元・山口銀行のドンとして君臨してきた田中耕三元頭取(94)との深い関係があったと言われています」

 92年から10年間にわたって、頭取を務めた田中氏。02年に退任後も相談役として、専用の個室も与えられていたという。17年9月に特別社友に退くが、以降も山口銀行の社宅である一軒家に住み続けてきた。

「田中氏は、人事課長時代にA子さんと知り合ったとされます。2人の親密ぶりで知られているのが、04年に山口銀行で起きたクーデター劇。当時の田原鐡之助頭取は田中氏とA子さんの只ならぬ関係を断ち切ろうとしたのですが、逆に田中氏から返り討ちに遭ったのです。田中氏は子飼いの役員たちに緊急動議を出させ、田原氏を解任にまで追い込みました」(同前)

 クーデター劇は成功したものの、金融庁から「ガバナンス不全」と目をつけられた山口銀行。余儀なくされたのが、広島県のもみじ銀行との経営統合だった。

「金融庁が問題を起こした山口銀行にプレッシャーをかけ、経営不振に喘ぐもみじ銀行を引き取らせたと言われました」(地銀幹部)

■銀行界で取り沙汰される“15年前の再現”

 今回も金融庁は、刑事告発もされているA子さんを巡る捜査の行方と山口銀行の対応を注視しているという。そこで目下、銀行界で取り沙汰されているのが“15年前の再現”だ。

「金融庁が山口銀行に再びプレッシャーをかけ、山口県の第二地銀、西京銀行を吸収させる案が浮上しているのです。西京銀行は、アパート向けローンの融資書類改ざんで業務停止命令処分を受けた不動産業者『TATERU』のメインバンクだった。一時は“第二のスルガ銀行”と言われ、現在も経営状況は芳しくありません」(同前)

 折しも11月27日には、地方銀行の経営統合を独占禁止法の適用除外とする特例法が施行される。

「同一県内の有力地銀が統合し、融資シェアが高くなっても独禁法は適用しないという法律です。これで山口銀行と西京銀行の統合も可能となります」(同前)

 山口銀行は「西京銀行との統合を検討している事実はありません」と回答。

 菅政権も力を注ぐ「地銀再編」。“第一生命詐欺女”が陰の主役になっている。

(森岡 英樹/週刊文春 2020年12月3日号)

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