「ここに住み続ける法的な根拠は何ですか?」 モラハラ歯科医が40代妻に送った、衝撃の“立ち退き請求”

「ここに住み続ける法的な根拠は何ですか?」 モラハラ歯科医が40代妻に送った、衝撃の“立ち退き請求”

タワマンに住む木村さん ©文藝春秋

 新型コロナウイルスにより、私たちの生活は大きく変化している。リモートワークが当たり前になったり、テイクアウトやデリバリーを利用して、自宅で食事を楽しむなど、家族が一緒に過ごす時間も増えた。

 明治安田生命が行ったコロナ禍での夫婦関係についてのアンケート調査によると、配偶者と「仲が良くなった」と答えた人は全体の2割にのぼった。

■妊娠後、夫から攻撃的なことを言われ続けている

 しかし、絆が強くなる家庭が増えつつある中、とあるセレブ妻は長年にわたり夫との関係で悩み、夫婦関係に終止符を打とうとしていた。

「態度の変化を感じたのは、妊娠8か月頃でした」

 ある地方都市のタワーマンションの高層階に住む専業主婦、木村琴美さん(仮名・43歳)は、歯科医師である夫から攻撃的なことを執拗に言わていると打ち明けた。

 18年前、木村さんが歯科助手として働いていた医院で、勤務医だった夫と出会うった。当時の夫は妻子持ちであったため、恋愛対象としては見ていなかったそうだ。

 ある日、夫から歯科医院開業に伴い、公私共にパートナーとなってほしいという情熱的な内容が綴られた3枚ほどの手紙を受け取る。しかし、妻子ある人と交際することに抵抗があった木村さんは、その誘いをのらりくらりとかわし続けた。

 木村さんに対して真剣な想いを伝え続けた夫は、12年前に離婚。その熱意にこたえる形で、木村さんは7年間ほど同棲し、5年前に結婚した。現在住んでいるタワーマンションは、夫が同棲時代に購入したものだそうだ。高層階かつ100平米以上の広さということもあり、1億はくだらないという。

■夫の嫌な部分には目をつぶってきた

「昔から感情が共有できないとは思っていました」

 木村さんによると、夫は〇か×かの性格で、人に対する思いやりに欠ける言動が多いとのこと。出会った当初からその傾向はあったものの、できるだけ早く結婚し子供を授かりたいという気持ちが強かったので、夫の嫌な部分には目をつぶってきたそうだ。

 しかし思うように子宝には恵まれず、不妊治療にも取り組んだ木村さん。当時は夫も協力的で、共に頑張ってきたという。そして5年前、3度目の体外受精で授かることができた。

 夫婦ともに望んでいたはずの妊娠だったが、同じころ夫に女性の影がちらつき始める。

「現在、愛人に月18万円ほどかかる高級マンションを与えているようです。愛人と思われる女性は、夫が経営する医院に、職員として籍を置いています」

■自宅だけでなく職場でも

 愛人とおぼしき女性は、4年ほど前から歯科医院に在籍していることになっているというが、同じ医院で働く木村さんは、その姿を一度も見たことがない。木村さんは、探偵を雇い、くだんの女性を追跡してもらった。探偵が撮影した写真には、30代前後の少し派手めな印象の女性が映っていた。

 愛人ができた影響なのか、子供が生まれてからの夫は攻撃的な言動が増え、木村さんをさらに悩ませ始める。

「『結婚したくらいで権利を主張するな!』など、私の立場がなくなるような発言を、自宅だけでなく職場でも浴びせてきました」

■生活費は5万円、子供の月謝も支払わない

 生活費を入れてほしいと頼むと、渡されたのは5万円だけ。家族が生活するには到底足りない金額だ。そのため、貯金を取り崩して生活するしかなかった。節約を心掛けてもどんどん減っていく預金残高に、先の見えない不安を感じていたという。

 自宅でも職場でも夫と一緒の木村さんは、居場所がなくなっていった。必要以上にミスを指摘するので、職場内で恥ずかしい思いを何度もした。事情を知らないスタッフからは、悪者扱いされたこともあったそうだ。誰にも相談できない、理解されない状況が長いこと続き、精神的に参っていった。

 それに加えてワンオペ育児の日々。夫は、子供の世話は全くしないという。木村さんが唯一覚えているのは、数回入浴の世話をしてくれたことだけ。それ以外の育児は全て、木村さんが行っている。

「わが子のはずなのに、一切興味を示しません。生まれてから今まで一度も、旅行はもちろん、公園にすら連れて行ってもらったこともないですよ」

 夫は、子供の幼稚園の月謝も支払わない。引き落とし口座の残高はほぼゼロ。担任の先生との話し合いの末、毎月月謝袋を手渡しする方法となった。地域では伝統のある幼稚園として有名で、きちんとした家庭が多いという。月謝トラブルを起こしている家庭は我が家だけではないかと、恥ずかしそうに話してくれた。

 さらにモラハラの矛先は、木村さんの母にも向かった。娘夫婦の仲を取りなそうとした義母に向かい、「子供の喧嘩に親はでんときましょ、ってお前が家に来るからおかしくなったんやろ?」、「生活費を旦那が払ってる人は、決まりではなくその旦那さんがそうしたいからだけですよ」といった暴言を、ショートメールで送りつけたのだ。

 経済的DV、そしてモラハラに神経をすり減らした木村さんは、心療内科で適応障害と診断される。不安定な気持ちからか、真夜中にラーメンを食べて10キロ以上太ったこともあれば、突然拒食症になり10キロほど痩せたりしたこともあったそうだ。

■とある自己啓発に多額の投資

 夫の行動の中で、とりわけ理解できないと話してくれたエピソードがある。それは、ある自己啓発セミナーに多額の投資をしていること。長年入れ込んでいる著名人がおり、書籍やCDの購入、50万円を超えるセミナー参加などに積極的だという。一時期、木村さんにもセミナーへの参加を勧め、断るのに苦労したそうだ。かなり熱心に取り組んでいるので、時には気持ち悪さを感じることもあったと語った。

 蓄積される不満から、木村さんは離婚を考え始める。しかし、話は進展しないどころか、より一層嫌がらせがエスカレートしていったのだ。

■“ここに住み続ける法的な根拠は何ですか?”という手紙

「今は夫は自宅を出ました。どこに住んでいるかは分かりませんが、多分ホテル暮らしではないでしょうか。彼は、私たちをこのマンションから追い出そうと計画しているようです……」

 定期的に“ここに住み続ける法的な根拠は何ですか?”と、宛名を殴り書きした手紙が届く。最初のうちは手紙を受け取ると恐怖からパニック状態になっていたが、徐々に慣れてきたという。「今ではいい証拠集めくらいだと思うようになりました」

 一緒に住んでいた時には、木村さんが集めた、夫に非があることが分かる証拠書類の数々を盗まれたこともあった。夫が書類から目を離した隙に奪い返した際は、「心臓がバクバクした」と話してくれた。

 なかなかタワーマンションから退去しないことに腹が立ったのか、夫は木村さんを突然解雇した。今年6月の出来事である。解雇される半年前から体調不良による休職をしていたが、傷病手当金の手続きもしてもらえなかった。収入がない木村さんを支えたのは実母。わずかな年金から費用を捻出してくれているそうだ。

■大金を積んで逃げ切ろうとしている?

 現在はお互いの弁護士を通じて離婚の話を進めている。しかし、自分に非はないと言いながらも解決金に1000万円以上を提示してくるなど、夫からの主張は支離滅裂なものばかり。一般的な離婚では十分すぎる金額ではあるが、木村さんは納得できないという。

「彼は探られたくないことがあるはずです。だから大金を積んで逃げ切ろうとしていると思うんです」

 具体的な内容は本人特定につながるため公表できないが、明るみに出ることで夫の立場が危うくなる問題があるそうだ。現在、この件も含め、解決に向けて進めている。

 現在無職の木村さんだが、夫との離婚が成立した後はどのように暮らしていくつもりなのだろうか。

「同棲と言っても事実婚状態でしたから、その期間を含めると、夫からはまとまった金額が貰えるかと思います。そのお金を使って起業したり、自分の経験をまとめた自叙伝執筆にもチャレンジしていきたいと思っています。彼が買ったタワマンにも、もう住む気はありません」

 これからも夫と全面的に争う姿勢を見せている木村さんからは、力強さを感じた。

 成功者が集うタワーマンションの高層階。そんな華やかさの裏側には、ドロドロとした夫婦問題が潜んでいた。

(吉田 みく)

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