隔離期間中に外に出たら“銃殺&火炎放射” あまりに過激すぎる「北朝鮮式コロナ対策」最前線

金正恩氏のコロナ隔離指針違反で銃殺され火炎放射器で焼却 衝撃の「コロナ怠慢罪」

記事まとめ

  • 北朝鮮で「海水が新型コロナで汚染された恐れがある。漁業や塩の生産を禁止」と指示も
  • 都市のロックダウンも連発され、恵山市、羅先市、南浦、平壌までが封鎖される事態に
  • 金正恩氏の「コロナ隔離指針」を破った党部長が銃殺され火炎放射器で焼却されたという

隔離期間中に外に出たら“銃殺&火炎放射” あまりに過激すぎる「北朝鮮式コロナ対策」最前線

隔離期間中に外に出たら“銃殺&火炎放射” あまりに過激すぎる「北朝鮮式コロナ対策」最前線

奇想天外なコロナ対策が次々繰り出される北朝鮮。何が起こっているのか… ©iStock.com

「海水が新型コロナウイルスで汚染された恐れがある。漁業や塩の生産を全面禁止せよ」

 韓国の情報機関である国家情報院(国情院)が11月27日に国会に報告した内容によれば、北朝鮮ではいま、金正恩委員長のこうした奇想天外ともいえるような指示が飛び交っているという。都市のロックダウンも連発され、11月1日には恵山(ヘサン)市、5日には羅先(ラソン)市、6日には南浦(ナムポ)、20日には平壌までが封鎖される事態になっている。

■「最悪の逆境」→「過酷な激難」→「前代未聞の苦難」…日に日に強まる北朝鮮のトーン

 封鎖されているのは「都市」だけではない。中国との国境についても、今年の1月から人の往来や物資の移動が厳しく制限される封鎖状態が続いている。

 中国当局の発表では、10月の貿易総額は前年同月より99%減少したという。韓国国情院も、北朝鮮の極端な封鎖政策で対中貿易規模は今年1月〜10月で5億3000万ドルと前年同期比4分の1に急減したとしている。

 2020年、北朝鮮市民は制裁の長期化と水害、新型コロナウイルスによる国境封鎖という「3重苦」に悩まされた。とりわけ国境が封鎖されたことで物資が滞り、北朝鮮市民は物価高騰で加速度的に厳しい状況に置かれている。

 中国への経済的依存度の高い北朝鮮国内では、物資が入ってこないことで食料品など生活必需品の価格は4倍に跳ね上がった。砂糖も年初の6000ウォンから2万7800ウォンに急騰し、ロックダウンされた国境周辺都市に至っては物価が10倍になったと報じられている。

 さらに、原材料設備の導入も止まった影響で、産業稼働率は金正恩政権での最低水準になっている。コメの生産量も今年は20万トン減少する見通しになっており、食糧不足に拍車がかかっている。

 北朝鮮ももはやこうした困難を隠そうとしない。経済的苦境を伝える北朝鮮国営メディアの表現も、「最悪の逆境」→「過酷な激難」→「前代未聞の苦難」と、日に日に強くなっている。

■自宅隔離期間中に外に出たら“銃殺&火炎放射”…衝撃の「コロナ怠慢罪」

 しかし、金正恩は締め付けを弱めるどころかますます強化し続けている。8月には中国との国境から内陸1〜2キロの区域を「コロナ封鎖ライン」、いわば緩衝地域に定め、「無断でこの封鎖ラインを越えたものは、人でも動物でも銃殺せよ」という指示も下した。非正規ルートでの入国を避けるため、中朝国境の一部に地雷を埋めているともいわれている。

 さらに、北朝鮮の朝鮮中央通信が11月29日に明らかにしたところでは、「国境と境界沿線(軍事境界線)地域で縦深深く封鎖障壁を構築して、警備体制を強化している」という。本当に北朝鮮が「壁」を築いているかは確認されていないが、警戒の程度は並大抵ではないことはたしかだろう。

 さらに、11月3日には韓国国情院が「北朝鮮がコロナウイルス感染防疫のため、非常防疫法に“コロナ怠慢罪”を新設し、コロナを管理できなかった罪を犯した幹部に死刑宣告まで可能にするよう規定した」と明らかにした。新型コロナウイルスへの防疫対策に失敗したり参加しなかった場合、最高で死刑とするというあまりに過激すぎる防疫政策がとられているのである。

 実際、10月にこの国境の緩衝地域を訪問した朝鮮労働党経済部長は「緩衝地帯を訪問した者は平壌に入る前に(指定した場所で)30日間自ら隔離生活せよ」という金正恩の「コロナ隔離指針」をやぶってすぐに平壌に戻った結果、責任を問われて幹部たちの立ち会いのもと銃殺され火炎放射器で焼却されたという。

「コロナ隔離指針」に違反して処刑されたのはこの部長だけではない。羅津で中国と貿易業を営む人物も、隔離期間中に銭湯に行ったという理由で2月16日に処刑されている。

■「国内にコロナ感染者は一人もいない」と語る北朝鮮だが…

 元首相である朴鳳柱(パク・ボンジュ)をトップにした「国家超特級非常防疫委員会」を設置して極端な防疫措置を次々に導入し、「国内にコロナ感染者は一人もいない」と主張する北朝鮮だが、「防疫」の実態はかなり悲惨な状態であることが明らかになっている。

 エイブラムス在韓米軍司令官は4月、新型コロナウイルス感染患者はいないという北朝鮮の主張に対し、「得られているすべての情報から考えて不可能な主張だ」と発言。筆者自身、7月中旬、北朝鮮の国境と平壌、元山(ウォンサン)、清津(チョンジン)などに電話取材した結果、平壌だけで300人が感染し5人が死亡(保健省集計とされる)、国境では地域によって「あそこは10人、こっちは15人」と次々と新型コロナウイルスによる死亡者が出ていることを確認した。

■「韓国の感染による死者数」を大きく超える「北朝鮮の処刑人数」

 深刻なのは感染による死者数だけではない。

 北朝鮮防疫対策本部の資料によると、外国から帰国するにあたっては、平壌の東北部の衛星都市である平城の旅館や、平安南道の感染病予防院に隔離されることになっている。

 問題は、この指示に違反するとどうなるのかである。

 金委員長は4月3日に「防疫措置が長引いてだらける状況を防がなくてはいけない。誕生日パーティーや結婚式などの集会を開くことは、『敵と内通した』と考え、容赦なく処罰せよ」と述べ、防疫を損なった人を軍法で処理するよう指示。結果、処刑された人数が4月中旬の時点ですでに700人を超えた。韓国での新型コロナウイルス感染による死亡者数は526人(12月2日時点)。「防疫違反」によって北朝鮮で処刑された人数の方が多い計算になる。

■北朝鮮「コロナパニック」に歯止めがかからないワケ

 北朝鮮のこうした極端な措置は、もはや「パニック」といっていいだろう。「ヒト・モノ」とともにウイルスが流入してこないかと相当神経質になっており、特に外部物資搬入に対する警戒心は尋常ではない。感染を恐れて、中国が提供したコメ11万トンも受け取っていないという。また、韓国からの支援物資も受け取らずにいる。8月中旬に韓国支援物資であることを隠して北朝鮮に搬入した(新義州の)税関員たちが処罰を受けた。「コロナフォビア(恐怖症)」に歯止めがかからない状態だ。

「海水に触れると感染する」「輸入品で感染する」「隔離生活中に外に出たら銃殺」……。どうして北朝鮮ではこのような「荒唐無稽」な考え方や指示がまかり通るのか。それは金一族の皇帝のような統治体制に起因している。

■「コロナも怖いが…」

 北朝鮮では、「元帥様は即ち、神である」ため、「神様」である金一族に誰もアドバイスや忠告はできない。金委員長の言うことは、たとえ非現実的で間違っていたとしても、助言や異議を申し立てれば、その幹部はほぼ処刑を免れることができない。

 そのため、常識外の指示でもそのまま従うしかない状況になっている。「『死ぬかもしれない』コロナも怖いが『ほぼ間違いなく殺される』金正恩はそれ以上に怖い」というわけだ。

■姿を消した金正恩

 加えて、その肝心な金正恩の精神状態にも不安がささやかれている。

 今年4月、金正恩は約20日間姿を消した。理由は様々に語られているが、大きな要因の1つは神経衰弱と不安症状によって、急に怒鳴りつけたかと思えば何も手につかないほど落ち込んだりと、感情の浮き沈みがコントロールできない症状が続いたからともいわれている。

 当時は幹部たちからの報告も受けられず、妹の金与正・党第1副部長が相当部分代わって決裁していたようだ。8月に韓国国情院が、「金委員長が金与正第1副部長などと一部の権限を共有し、委任統治をしている」と明らかにした背景には、このした金委員長の状態があったのである。

 制裁の長期化にコロナが加わり、想像以上のストレスで暴走に走る金正恩。権力を集中させた北朝鮮体制の副作用が、「パニック」として噴き出している。こうしている間にも、北朝鮮暴発の危機が静かに高まっているのだ。

(朴 承a)

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