2021年の立ち食い・大衆そばへ“5つの予言” 閉店ラッシュの先で生き残る店の特徴は?

2021年の立ち食い・大衆そばへ“5つの予言” 閉店ラッシュの先で生き残る店の特徴は?

12月14日で閉店した五反田の「後楽そば」の焼きそばは絶品だった

 2020年、今年の漢字1字は、清水寺は「密」、河野行革相は「砕」と発表した。

 ちなみに2019年の清水寺の1字は「令」だった。2019年の師走は、インバウンドだ、オリンピックだと日本中で盛り上がっていた。

 ちょうどラグビーワールドカップの成功もあって拍車をかけていた。2019年の立ち食い・大衆そば業界の漢字1字は「継」と個人的に発表して、神田三崎町の「とんがらし」を紹介していた。

■2020年という年を振り返ると…

 2020年の立ち食い・大衆そば業界の漢字1字は「悲」とか「無」とかもありえるが、「閉」に決まりだろうと個人的に考えている。とにかく閉店の嵐。ひどい1年だった。

 今年閉店していった立ち食い・大衆そば店を列記してみるとこんな具合だ(太字は文春オンライン掲載店)。

 青砥の「青砥そば」、豊洲東雲の「てっちゃん」、田町の「丸長」、春日の「源太郎そば」、六番町の「ゆで太郎」、自由が丘・御茶ノ水・蒲田などの「そば新」、歌舞伎町店・西新宿店の「嵯峨谷」、「六文そば昌平橋店」、「六文そば浜松町店」、大森の「麦の城」、御茶ノ水の「明神そば」、大森の「信濃路」、市ヶ谷の「宇ち乃」、東中野の「えきそば」、銀座の「小粋そば」、渋谷・本郷・神田西口・京橋・駿河台の「小諸そば」、稲城長沼の「一休」、新橋の「かき天」、渋谷の「本家しぶそば」、五反田の「後楽そば」、米原駅の「井筒屋」、甲府の「丸政甲府駅南口店」などなど。

 こうしてみると、長きにわたり営業していた店も多い。

 また、個人店に多いというわけではなくチェーン店として人気となっていた店も含まれている。このあたりが空恐ろしい。

「本家しぶそば」はビル再開発のために9月13日に閉店した。閉店時は多くのファンが集まり、店長や関係者からの挨拶に惜しみない拍手を送っていたのが印象的だった。

 京橋の「小諸そば」は1号店であり、その後の繁栄を象徴する店であった。9月30日の閉店前には開業当時の値段でサービス販売をしていたのが寂しかった。また、大衆店ではないが近所のうどんすきの老舗「美々卯」も5月20日に廃業していた。

 12月14日に閉店した五反田の「後楽そば」は製麺所も廃業するという。系列店はラーメン店のみ残し他はすべて閉店するという。あのやや太い麺の濃い味の焼きそばがもう食べられないと思うと残念でならない。

 この業界は「薄利多売」で利益をあげている。それがコロナ禍で来客数が激減し、「薄利少売」になってしまった。テレワークで都心のオフィス街に人がいないのだ。神田和泉町の「二葉」のオーナー、堤知宏さんは「背広を着た人がほんとに少なくなった。近隣の大企業がテレワークしていることが原因ではないか」と話す。

「そば処かめや」のオーナー荒川雄行さんは、「居住地域が近い店舗の売り上げはそう落ち込んでいない。コロナ禍をバネに自分たちの営業力をアップするいいチャンスだ」という。

■2021年の立ち食い・大衆そば店はこうなる

 さて、2021年は立ち食い・大衆そば店はどのような状況になるのだろうか。少し予測してみようと思う。

■予測1:来年も閉店が続く可能性がある。

 コロナ禍の第3波が襲っている。ワクチン投与が来年に始まるとしても、まだ混乱は続くだろう。今後、ロックダウンがないとも限らない。オリンピック開催で感染が再燃することもありえる。2021年も立ち食い・大衆そば店の受難は続くと考えておいた方がよいと思う。ただ、これ以上の閉店は辛い。どうにか、生き残る方法を模索して欲しいし、我々も密にならないように、お店を利用していきたいと思う。

■予測2:高単価メニューの開発が進む。

 各店舗は「薄利少売」にならないように工夫することが必要だ。路面店では居酒屋が減って焼肉屋が増加している。客単価を上げるための作戦といわれている。立ち食い・大衆そば店でも、「安いうまい早い」という従来のメニューにこだわらず、少しでも単価の高いメニューを増やすことも必要になると思う。

 そんな中、いま新メニュー開発に力を入れているのが、大手「名代富士そば」である。

「名代富士そば恵比寿店」では「クリームシチューうどん」(500円)を期間限定で発売し話題を集めた。「名代富士そば北千住東口店」では、12月16日から「タンタン蕎麦」(590円)を発売中だ。

 2021年1月5日からは、銀だことコラボした「銀だこそば・うどん」(500円)を販売するという。いずれも若干の高価格帯を取り入れているが、それは目新しさとうまさでアピールしていく作戦のようだ。付加価値のあるメニューが人気を呼ぶということである。

 「しぶそば」でも高付加価値のメニューを揃えている。「冷しぴり辛ねぎそば」(490円)は他店にはない人気メニューである。こういったメニューの開発が進んで行くのだと思う。

■予測3:テイクアウトが増える。

 同時に、自宅でそば・うどんを食べたい人や密になりたくない人が、テイクアウトをする頻度が益々増えていくと考える。温かいそば・うどんは寒い時期にはありがたいし、夏場なら冷やしぶっかけそば・うどんなら麺も伸びにくいのでテイクアウトに適している。

 先日取材した、代々木上原の「つけ蕎麦 ツヅラオ」のように、太いごわっとした蕎麦なら、テイクアウトにもぴったりである。「つけ蕎麦 ツヅラオ」は「名代箱根そば」を運営する株式会社小田急レストランシステムの新しいブランドである。

「名代箱根そば」では年越しそばのサービスを行っている。年越そば(生そば・そばつゆ各3人前、薬味1セット[のり、揚げ玉、わさび、七味])が予約特価700円(オンライン予約は18日(金)まで、前売り引換券は店頭にて26日(土)まで)、店頭価格750円(12月27日〜31日)だという。

■各店テイクアウトのさまざまな試み

〜箱根そばで今年一年の締めくくり〜「年越そば」オンライン予約を
12月1日(火)〜18日(金)の期間限定受付!(PRTIMES)

「しぶそば」でも生そば・つゆなどの持ち帰りや年越しそばの注文を受けている。年越しそば(生そば2人前、希釈用つゆ付き)は420円(税込み)、年越しそば天ぷらセット(生そば2人前、希釈用つゆ付き、海老天、ちくわ、南瓜×2)は960円(税込)。販売期間は12月27日(木)〜12月31日(月)。

「しぶそば」公式web

 また、前出の「名代富士そば北千住東口店」では、12月21日(月)から新しい出前館を北千住東口店のみで実験開始するという。

「名代富士そば」お知らせ〜
新しい出前館を北千住東口店で実験をします! 12月21日(月)開始予定!

■予測4:昼型の店が増える。

「終点駅には何がある?」シリーズでおなじみの鼠入昌史氏の記事によれば、2021年には戦後初めての終電の繰り上げが行われる(「 新橋〜横浜間で「最終18時」だった日本の終電…どうしてこんなに遅くなった? 」)。

 コロナ禍がしばらく続くと、深夜の利用者は減るだろうし、さらに景気は冷え込むことが予想できる。立ち食い・大衆そば屋も深夜より、昼間の明るい時間に売り上げのウエイトを置くようになるはずだ。例えば、朝定食や昼呑みを増やすなどの方法である。もちろん各社すでに取り組んでいると思うが、一層昼の客を奪い合う状況になると予測する。女性客のハートをつかむ努力も必要になるだろう。

■予測5:国内産蕎麦粉の使用の比率が上がる可能性も。

 2019年から2020年にかけては、国産そば粉の在庫がかなりだぶついたようだ。必死でさばいているところだと思うが、この傾向は2021年も続くと思う。少し高めでも、国産のそば粉を使ったキャンペーンが増える可能性もある。「しぶそば」で恒例行事となっている国産の新そばの提供といったキャンペーンが、他社でももっと増えていくかもしれない。

「丸亀製麺」などでは国産の小麦粉を使用していることをアピールしている。つなぎの小麦粉も国産にする可能性もある。

 秦野の「丹沢そば本店」代表取締役の石井勝孝さんと知り合ったことは今年最大の収穫だった。秦野の三廻部や横野に7000坪以上のそば畑を開拓し、そばを収穫保存し、玄そばの「剥き立て・引き立て・打ち立て・茹で立て」の4たてを実現し、販売・ブランド流通までを一気通貫で行っている奇跡の男である。こうした国産のそば粉が立ち食い・大衆そばに利用される日も遠くないかもしれない。

 

■「新しいそばの世界」の広がりの胎動を

 食の安全、密にならないコロナ対策、アピールできる付加価値のあるメニュー開発、テイクアウトなどの新しいスタイルが求められている。もう驚くような売り上げを目標とする時代は終わったのだろう。じわじわと浸透するような、心に訴える商品をそろえていくような考え方が必要なのかもしれない。それが多少キテレツなメニューであってもよいと思う。

「名代富士そば北千住東口店」が提供した「きのこクリーム蕎麦」(500円)や「Seafood Soba」(600円)でもいいと思う。

 立ち食い・大衆そばは、そば食いの登竜門だとよく言われる。しかし、いつの時代でもこの領域の達人たちが、新しいメニューを大衆市民とともに開発し、大きく花開させていったわけである。そういう意味で、新しいそばの世界の広がりの胎動をじっと待つ2021年になるのだろうと期待している。

 どうか読者の皆様もコロナには留意して、年越しそばを召しあがってください。

(坂崎 仁紀)

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