ポスト・コロナの家選び 茅ケ崎ではなく、江の島・鵠沼エリアがおすすめのワケ

ポスト・コロナの家選び 茅ケ崎ではなく、江の島・鵠沼エリアがおすすめのワケ

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 昨年は、いつまでたっても収束を見せないコロナ禍で「おうち時間」が増えた方が多かっただろう。今年になってもいまだに鳴りをひそめないコロナといったいいつまでつきあっていくのだろうと思う反面、会社に通勤する必要が必ずしもなくなったサラリーマンにとって、STAY HOMEを実践する中で自分たちが住んでいる家の住み心地にあらためて関心が向かったのではなかろうか。

■WiFiの容量不足、ランチ難民……自宅で働く困難

 これまではとにかく平日の朝は「通勤」という行為が必要だった。現代では夫婦共働きが当たり前だ。夫婦ともに通勤しやすい家に住むというのが、第一条件であったといってよい。ところが夫婦ともに家で仕事をすることが増えると、厄介な問題が起こった。都心部の狭苦しいマンションだと互いが働くスペースがとれない。夫婦でオンラインの会議が重なったりすると、どっちがどこの場所でやるかで喧嘩になる。これに遊んでくれとせがむ子供でも加わろうものなら収拾がつかない。マンションが契約しているWiFiでは容量が小さすぎて、住民の多くが利用すると全く使い物にならないこともある。

 自分たちが住むマンションがある街で昼間すごしたことがないため、ランチをしようにもお店をよく知らない。ちょっと骨休みに一杯、と思っても居酒屋もない。

 たしかに通勤には便利だけれど、実は家で働きながら毎日を過ごすにはあまり快適ではない街であると思い知った人も多かったに違いない。

■「生活ファースト」の家選びをしたいポスト・コロナ時代

 通勤に重きを置かなくてもよい、たとえば週1、2回、あるいは月2、3回程度通勤すればよくなった会社も多くなっている。そしてこうした勤務体系を、コロナ禍の今後の動向とは関係なく継続させる会社も増えてきた。さて、ポスト・コロナ時代、必ずしも通勤を前提とした「会社ファースト」の家選びをせずとも、環境の良いエリアで「生活ファースト」の家選びをしたいと、多くの人が家選びの基準を変えつつある。それは東京都において昨年7月以来5カ月連続で人口が「転出超」になっていることにも表れている。

■首都圏の「愛されている街」に住みたい

 とはいえ、全く通勤から解放されすべてリモートワークで仕事ができるようになった人は稀だ。ならば首都圏の中で居心地のよい街に住みたいと考えるのは自然だ。

 そこで注目されたのが、昨年SUUMOが発表した、毎年恒例の「住みたい街ランキング関東版」の中で、従来の「住みたい街」に加えて初めて発表した「住民に愛されている街(駅)」ランキングだ。ここで第1位に輝いたのが、神奈川県の片瀬江ノ島である。横浜の馬車道(2位)や東京の代官山(3位)、麻布十番(6位)などすぐにでも思いつきそうなブランド立地を抑えての堂々の第1位である。また片瀬江ノ島とほぼ同じ生活圏にある、鵠沼(8位)、鵠沼海岸(10位)、湘南海岸公園(26位)などエリア全体が上位に入ったのだ。

■別荘地として開発されたエリア

 このエリアは明治時代頃に別荘地として開発された地だ。また関東大震災後は政治家や文豪たちが好んで邸宅を構え、一区画は700坪から2000坪程度もあったという。今でも街を歩くととんでもなく広い敷地のお屋敷に出くわすが、この時代の名残である。

 1960年代以降はベッドタウン化がすすんだが、首都圏によく見られる山野を切り開いたニュータウンではなく、大きなお屋敷が相続などで徐々に細分化され、そこに東京に通うサラリーマン世代が住みついたため、街の新陳代謝がほどよく進んだのである。

 このエリアは穏やかな相模湾に面し、温暖で実に風光明媚なところだ。鵠沼海岸に出ると真正面に海が広がり、左手に江の島、右手にエボシ岩、その先に富士山を臨む。冬は相模湾の先に大島、利島を見ることもできる。この街の特徴は、「空が広い」そして「街が明るい」ということだ。湘南エリアが明るいのには理由がある。南に向かって海があるために、東から昇った太陽が西に沈むまで一度も日陰にならず、一日中燦燦と陽が降り注ぐのである。同じサーフィンのメッカ、九十九里浜では海が東側に面しているので日中を過ぎると日が陰りやすくなってしまう。湘南はいつでも明るいのは地勢的な理由なのだ。もう一つの要因としてあげられるのは、片瀬江ノ島駅周辺を除いて高い建物がないことだ。これらの理由で空が堂々としていて広いのだ。

■海水浴も楽しめる海に、地場の店の魅力「片瀬江ノ島駅」

 江の島とは橋でつながるために、島は格好の散歩コースになる。橋のたもとにあるのが小田急線の片瀬江ノ島駅である。竜宮城を象ったとされる駅舎は観光客に人気だ。このエリアの中では片瀬江ノ島駅周辺だけが、容積率が高いためマンション群が形成されている。中古マンションを選ぶなら駅周辺がよい。高層階になれば江の島、相模湾の眺望は抜群だ。価格も築年の浅い物件ならば坪当たり250万円程度。20坪程度であれば5000万円が相場だ。築年の古いもの(20年程度)でよければ坪当たり170万円程度。つまり3000万円から5000万円程度で毎日海が目の前の生活が手に入る。7000万円から1億円もの、東京の湾岸タワマンを、返済に一生かかるローンで買っても、部屋から見える海はどんより薄汚れて、海と戯れることさえできない。片瀬西浜は昔と異なり水質も改善され、サーフィンには最適。夏の海水浴も目の前で楽しめる。浜で揚がるシラスはゴールデンウィークから11月くらいまで街の定食屋で生のものを食べることができるし、街中のお店で買うこともできる。もともと観光地なのでレストランや居酒屋には事欠かない。また大手チェーン店は少なく、地場のお店が多いのも魅力的だ。

■戸建て住宅がおすすめの「鵠沼」「鵠沼海岸駅」

 戸建て住宅を求めるのならば鵠沼だ。ひとくちに鵠沼といってもエリアは広い。鵠沼海岸駅から東側に広がるのが、地元では「松・藤・桜」と呼ばれるブランド住宅街だ。地名は松が岡、藤が谷、桜が岡を指すがいずれもかつての別荘地であるために、現代では相続による分割が広がっているとはいえ、区画の広い住宅が多く、また街のシンボルである松がいたるところに残され、街に落ち着きを与えている。このエリアは富裕層が多く、ここで育った子供たちが、東京には定住せずに街に戻り、親とは別の鵠沼海岸エリアに住むのが定番である。若い人ほど活動的なので海岸近辺に住む。海に近いのでサーフィンやヨット、釣りを楽しむことができるからだ。

 さてこのエリアで中古戸建て住宅を選ぶならば、相続等が発生して敷地が分割された住宅が価格的には狙い目となる。敷地40坪程度、建物30坪程度の3LDKであれば築10年未満程度の比較的新しい物件でも4000万円台前半が相場だ。子供が一人ないし二人程度ならば、この広さで十分だろう。夫婦の仕事スペースも確保できるし、独自にWiFiを敷いて仕事にも専念できる。なんといっても気晴らしをするところには事欠かない。海辺にパソコンを持って出て、海を見ながらリモートワークするなどという夢のような生活が可能となるのだ。

 このエリアはもともと別荘地であること、海に面して温暖であることが相まって、住む人たちの人柄も屈託がなく明るい。教育環境も整っているし地元愛の強い人が多いせいか、子供たちも地元同士でつきあいを続け、結婚するカップルも多いと聞く。

■いざという時にも都心にアクセスできる強み

 都心居住が強まったここ四半世紀では、「会社ファースト」の家選びでは選択されることが少なくなっていたが、都心まで通勤するにもおおむね1時間から1時間半程度。毎日となると苦痛でもリモートワーク時代には、いざという時にも都心にアクセスできるのは大いなる強みといえよう。

 湘南といえば茅ケ崎を思い浮かべる人が多い。加山雄三やサザンオールスターズの面影が強いせいだ。だが茅ケ崎の海寄りに住むには、茅ケ崎駅からはバス便が主だ。鵠沼から片瀬江ノ島エリアは藤沢駅から小田急、江ノ電の2つの路線が海際まで連れて行ってくれる。市の財政状況をみても、北部の境川、引地川沿いに多くの有力企業、工場が立地し、財政が豊かな藤沢市に比べ、住宅地がほとんどの茅ヶ崎市は自治体サービスでも不満だという住民は多い。

 ポスト・コロナに住む街はやはり江の島、鵠沼エリアで決まりだ。唯一の不安点は、地震だ。関東大震災時には、このエリアも津波の被害を受けた記録が残っているが、このエリアでは膝丈程度のものだったという記録が残されている。ハザードマップによれば、津波で危険度が高いのはむしろ江の島の東側、鎌倉寄りである。こればかりは発生してみないとわからない「神のみぞ知る」だ。それらを差し引いてもこのエリアに住む価値は高そうだ。ポスト・コロナ時代の幕開け、家選びにも大きな変化が訪れることになりそうだ。

(牧野 知弘)

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