「二度とブラジルへ来るな」サッカー本田圭佑が炎上したパーティー事件の真相 最大の地雷は“有言不実行”

「二度とブラジルへ来るな」サッカー本田圭佑が炎上したパーティー事件の真相 最大の地雷は“有言不実行”

“パーティー”を開催した本田圭佑 FogaoNET公式YouTubeより

 サッカー元日本代表の本田圭佑(34)が白い椅子の上に立ち、マイクを握り、仲の良いCBマルセロ・ベネヴェヌートと掛け合い漫才のようなことをしている。

 本田が英語で「君は何歳?」と尋ねる。ベネヴェヌートが少しまごついてから「24歳」と回答。本田が以前ベネヴェヌートに「英語を勉強した方がいいよ」とアドバイスした経緯を知っている他の選手たちが、手を叩いて笑う。

 画面が替わり、奥のステージに陣取るバンドの演奏に合わせ、本田と数人の選手が体をくねらせて踊る。

 外はまだ明るいが、室内はカーテンを閉めて薄暗くなっており、コンサート会場のように青や赤のライトが交差する。

 テーブルの上には水タバコの器具が置かれ、肉の切り身が並んだ皿があり、ビールらしきコップ、そしてカイピリンニャ(ブラジルの蒸留酒ピンガにライムと砂糖を加えたカクテル)と思しきコップなどが並ぶ。

■非難はコロナよりも「裏切り」

 1月11日にこの1分間の動画を配信したのは、ブラジルのリオデジャネイロを本拠地とするサッカークラブ「ボタフォゴFR」のニュースを専門的に提供する電子サイト「フォゴンネッチ」。配信直後から日本では本田が、ブラジルでは参加した選手全員が非難された。

 日本では、新型コロナウイルスの感染が再び拡大していることもあり、「この時期に大勢で集まり、マスクをせず、しかるべき距離も取らないでパーティーを開くとは何事だ」という声が多かった。

 一方、ブラジルでは新型コロナウイルス感染による死者が20万人を超える状態でありながら(いや、だからこそと言うべきか)、感染防止に対する意識が低い。選手たちが非難を浴びたのはそこではなかった。

 チームが2部リーグ降格の危機に瀕しているボタフォゴのファンが、「この非常時に、選手たちは能天気にも飲んで歌って騒いでいる」、「こいつらはみんなクズ」と糾弾。本田に対しては、「ボタフォゴ愛を誓っておきながら、チームが最も必要としているときに逃げ出した卑怯者」。「もう二度とブラジルへ来るな」という声まであった。

 両国で批判を受けた本田が、反応した。

 1月13日、自身のツイッターでボタフォゴファンに向け、英語で「君たちがどれだけ僕を憎もうとも、僕は君たちに感謝しています」と投稿。さらに、「僕が開いた最初で最後の昼食会に来てくれて、それで批判されたチームメイトに申し訳なく思っている」とつぶやいた。

 しかし、これが火に油を注いだ。ボタフォゴファンは、「お前を憎んではいない。ただただ失望しているだけだ」、「お前が謝るべきなのは、チームメイトではなく、お前を大歓迎して無残に裏切られた俺たちに対してだろう」と辛辣だった。

■「パーティーを開いているつもりはなかった」

 さらにその翌日、本田は自身が運営する音声配信サービス「NOWVOICE」で、「僕がボタフォゴを出るときに開いた会で問題になっているみたいなニュースを見たんで」と前置きすると、状況を説明した。

「最後にお別れの挨拶をしたいと思い、僕が皆を招待した」

「(12月29日か30日の)練習の終わりのランチの時間に開いた」

「そもそもパーティーを開いているつもりは全くなかった」

「(参加したのは)スタッフが10人くらい、選手が10人弱で合計20人いないくらい」

「(日本ではコロナ禍の中で、という批判があるようだが、ブラジルの)現地の感覚としては、何の問題もない。ただ、実際に沢山の人が感染にかかって死んでいるという事実が存在しているのは間違いないわけで、それで気を悪くした人がいるんやったら『ほんと、申し訳ない』と言うしかない」

 そして、「(ブラジルで批判されているのは)チームの状況が悪い。僕自身が思ったような結果が出せなかった。で、結果的に僕はチームを離れていったから」と批判の理由を理解する一方で、「(この会を開いたことへの)後悔は全然ない」、「唯一の後悔は、僕がダンスをする映像が流れるんやったら、もっと練習してうまく踊れたら良かったということくらいかな」と冗談交じりに開き直った。

■ブラジルのフットボール文化を理解できていなかった

 ただ、たとえ時間帯が“ランチ”であろうと、バンドを入れて薄暗い室内で皆が踊り、アルコール(らしき飲料)とタバコを嗜む者がいながら「パーティーではない」と言うのは無理があるのではないか。

 また、ファンが本田に対して最も怒っているのは自身のプレーとリーダーシップでチームの成績を上げることができなかったことに加え、危機的状況にあるチームを見捨てて退団した点にある。

 結果論ではなく、本田はこのような会を開くべきではなかった。もし明るみに出たら、本田自身が火だるまになるのみならず、参加した選手まで批判されるのは明白だったからだ。

 ブラジルに10カ月滞在していながら、本田と彼のスタッフはブラジルのフットボール文化を全く理解できていなかったと言わざるをえない。

 2020年2月初め、本田は東京五輪にオーバーエージ枠で出場するためのアピールの場として、リオの古豪ボタフォゴを選んだ。入団会見では、「この数年、ボタフォゴがいいシーズンを過ごせていないとしたら、それは僕個人にとってもボタフォゴにとってもチャンス」、「これまで自分が経験したことを、全部、このクラブに置いていく」と熱く語り、地元メディアとファンから喝采で迎えられた。

 キャプテンに指名され、チームメイトを鼓舞し、自らミドルシュートを叩き込んでチームを勝利に導いたこともあった。しかし、クラブが財政難で給料を遅配して選手の意欲を損ねたり、目先の結果に右往左往して監督の首を何度も挿げ替えるといった外部要因も重なり、チームは転落を始める。昨年末の時点で、20チーム中19位の降格圏に沈んだ。

■「プライドが許さない」と言ったはずが

 12月初め、本田はポルトガル1部のポルティモネンセからオファーを受けた。本田個人のことを考えれば、移籍すればステップアップになる。しかし自身の「NOWVOICE」で、「オファーを受けたのは事実だが、断った。(降格の危機にあるボタフォゴを見捨てて)1月に退団することはできない。それはチームのためでもあるが、それ以前に自分のプライドが許さない」と言い放った。シーズンの期間延長に伴い、契約期間も12月末から2月末まで延長した。

 ところが12月末、本田は前言を翻して退団。日本とブラジルのメディアは「ポルティモネンセへの移籍を模索している」と報じ、その後、本田自身が「NOWVOICE」で「ポルティモネンセもしくは他の欧州のクラブへの移籍を考えている」と明かした。

 このような有言不実行は、ブラジルで最も嫌われる。本田は地雷を踏んだ。

 突然の退団の理由について、本田はボタフォゴファンに「プロとしての、また個人的な理由から」としか説明していない。しかし「NOWVOICE」では、「2月末までプレーした後、フリーエージェントとなって欧州のどこのクラブでもプレーできると思っていたが、それは自分の勘違いだった。欧州のクラブでプレーするには、冬の移籍期間が終わる1月までに退団しないといけないから」と説明した。「自分のプライド」発言とは180度逆の決断である。

■「ボタフォゴ愛」など存在しなかった

 そもそも、このようなフットボールの世界の基本的なルールを、長く外国でプレーしてきた本田と彼のスタッフが知らなかったというのは、にわかには信じがたい。

 いずれにせよ、ファンに誓った「ボタフォゴ愛」など存在しなかった。

 本田のブラジルでの挑戦は、失敗に終わった。しかし、彼はまだオーバーエージ枠での東京五輪出場を諦めていない。

 12月31日、「NOWVOICE」で、「これから大活躍をしないと、東京五輪には選ばれない。(12月19日のブラジルリーグの試合で痛めた左太ももの)怪我を治して、2月からギアを上げていく。5月までの4カ月が勝負だ」と語っている。

 本田圭佑にとってキャリア最後の目標かもしれない「東京五輪プロジェクト」の前半は、不本意な結果となった。はたして、ここから盛り返せるのかどうか。

 34歳は、正念場を迎える。

(沢田 啓明/Webオリジナル(特集班))

関連記事(外部サイト)