警視庁元署長はコロナ陽性翌日に即刻左遷。付き合った部下たちの運命は?《通達無視で約20人の飲み会》

警視庁元署長はコロナ陽性翌日に即刻左遷。付き合った部下たちの運命は?《通達無視で約20人の飲み会》

警視庁 ©iStock

 警視庁尾久署(東京都荒川区)元署長の大野良治氏(60)が新型コロナウイルスに感染し、感染経路の調査によって年末に開かれた大規模懇親会の存在が明らかになった。

 大野氏は昨年12月28日夜、都内の飲食店で同署の交通課長ら3人とともに、地元の交通安全協会のメンバーら約20人が集う懇親会に出席した。この懇親会は、2021年春に定年退職を控える大野氏の退職祝いも兼ねていたという。

 新型コロナウイルスの感染拡大以降は、地元の交通安全イベントの多くが中止となっており、大野氏は久々に対面した同協会のメンバーや関係者らと酒を酌み交わしながら2次会にまで参加したと見られる。

■異例のスピードでの“左遷人事”

 警視庁は当時、飲食を伴う会合は外部の人も含めて4人以下にするよう内部通達を出していた。これを無視した元署長に対して、陽性判明の翌日という異例のスピードで警務部付とする異動が発令された。事実上の“左遷人事”に、警察関係者の間では「見せしめだ」と衝撃が走った。警視庁内で、警察署長の感染が明らかになったのは初めてだった。

 大野氏は、大みそかから元日にかけて初詣の警備を視察後、1月1日午後に37度4分の熱が出たことなどから、医療機関を受診。3日にPCR検査を受け、5日に陽性が判明した。

 大野氏がPCR検査を受けた3日には、懇親会に同席した交通課長の50代女性警視が、そして6日には地域課の60代男性警部補の感染も次々と確認され、参加した同署員4人のうち3人の感染が判明する騒ぎとなった。

 せっかく招待されて参加した祝いの席だったが、新型コロナウイルスへの危機意識の薄さによって、めでたい退職祝いが一転して警察官としての晩節を汚すこととなってしまった。

 大野元署長が受けた「警務部付」という辞令は、定年退職する警察官が所属先から離れて退職日までの間に休暇を取得するために、形式上、籍を置く一時的な所属先などとして使われている。つまり、実務はなく形だけの所属先だ。2021年3月での定年退職が予定されていた大野元署長も2月に警務部付の内示が出て休暇に入るはずだったが、今回の騒動を受けて異動が約1カ月早まった形だ。ある警察関係者が、その人事の異例さへの驚きを語る。

「定年退職する人は毎年いるけれど、警務部付への異動が早まったケースは聞いたことがない。今回の異動は、署長の業務から早めに外されて、事実上“干された”ということ。あとは退職を待つだけの宙ぶらりんの状態に置くことで、『本部の取り決めに違反すると、こうなるぞ』という見せしめだろう。警察という組織はメンツを大事にする。署長まで行った人のメンツを潰すのは本当に異例。確かに飲み会は浮かれすぎだと思うが、そこまでやるかという驚きの方が強い」

■不祥事の時よりも厳しい対応

 新型コロナウイルス陽性判明からたった1日で人事が発令されたことに加え、2日後付での異動という期日の短さにも、警視庁幹部の怒りが滲んでいる。別の警察関係者も、そのあまりに強硬な対応に目を丸くしていた。

「警視庁では普通、もっと深刻な不祥事であっても人事から異動までは1週間くらい空く。それが今回は2日後とは……。しかも、副署長は無事だったので署長が自宅待機でも業務自体はなんとか代行できる状態。あんなに急いで署長を飛ばして、新しい署長を配置する必要はなかった。今回の対応は完全に他の人への警告を狙ったものだと思う」

 警視庁のトップである警視総監を含め、幹部たちもこの件には神経質になっていると警察内部では話題になっている。

「警察署のトップである署長は署員を引き締めなければいけない立場なのに、その署長が率先して規律を破っては話にならない。署員への示しがつかない。『よりにもよって、署長のお前が行くなよ……』と、幹部は思っているはず。しかも署長が1人でコッソリ参加するならまだしも、課長たちを引き連れているわけで、言い訳の余地はない。最初の人事は署長だけだったけど、同行した課長たちも3月の内示で転勤になっておかしくない。署長の定年祝いだと誘われたら断りづらいのはわかるけど、さすがにこの状況では止めるべきだった」

■「一瞬でスリーアウトだよ」

 警察は身内の不祥事に甘いと言われるが、今回は驚くほど対応が早く、厳しかった。その陰には、政治家の会食がバッシングにあっていることも影響しているという。大野元署長の件についても、発表直後から新聞やテレビはこぞって警察の意識の低さを非難した。

「批判は受けたが、元署長を少しでも守ろうとしていたらさらに大炎上していた。その意味では、本部の厳しい対応も当然だったと言える。警察は批判されることを極端に嫌うからね。今回の件だって、懇親会に参加していても感染さえしていなければバレなかったし、内々の注意で済んだ可能性がある。しかし署員を引き連れて大人数の懇親会に参加、2次会にまで行って感染したのではさすがにアウト。人数もダメ、2次会もダメ、感染したのはもっとダメ。一瞬でスリーアウトだよ」(同上)

 大野元署長が警務部付となった1月8日には、首都圏の1都3県での2回目の「緊急事態宣言」の発令が重なった。警視庁はその後、より厳しい内部通達を出している。飲酒を伴う会合は人数を問わず全て控えるよう求めたほか、飲酒を伴わない会合も、万全な感染対策を条件とした。

 事実上外食はすべて禁止という視線で警視庁は目を光らせている。人を取り締まるためにはまず自分たちから。厳しい時期はまだ続きそうだ。

(新井 璃紅/Webオリジナル(特集班))

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