大事なのは「視力ではなく距離」 メガネを作るときに勘違いしがちなこと

大事なのは「視力ではなく距離」 メガネを作るときに勘違いしがちなこと

「ニコンメガネ」の取締役社長、加藤宏太郎さん

PC作業が増えた人へ ブルーライトカットメガネの正しい選び方とは から続く

 パソコン作業やタブレットでの動画視聴、スマホでの情報収集など、目を酷使し続けている現在。「今まで以上に目が疲れるようになった」、「これまでのメガネが合わなくなった」と感じている人も多いのではないだろうか。もしかしたら、せっかく作ったメガネが疲れの原因になっていることも否めない。

 では、どうしたら自分に合うメガネを作ることができるのだろうか。メガネを作る際に押さえておきたいポイントについて、メガネレンズメーカー、ニコン・エシロールの直営店「ニコンメガネ」の取締役社長、加藤宏太郎さんに話を訊いた。

■レンズを決める際の注意点とは?

??メガネを買いに行くとき、フレームはある程度欲しいもののイメージを持っていても、レンズについては言われるがままという人も多いと思います。客側からお店へ伝えるべきことがあれば教えてください。

加藤 まずメガネを買おうと思った時点で、その人は見え方に何かしらの不具合を感じているわけですよね。「見えづらい=ピントが合わない」ということなので、まずは“どの距離のピントが合っていないのか”を自覚していただくことが大切です。

??距離ですか。

加藤 はい。そもそもメガネの役割は、“ぼやけたピントを合わせること”。ピントを合わせる補助をするものなんですね。ですから、ぼやけるのがパソコンの画面なのか、遠くの景色なのか、日常生活において見えづらくて困っている場面の距離を教えていただきたいんです。

■視力で考えず「見たい距離」に合わせて作る

??場面など想定せず、「1.5ぐらい見えれば」などと視力で考えてしまいがちです。

加藤 たしかに、健康診断で行なわれる視力検査では、視力1.5など遠くが見えたら問題なしとなり、いわゆる“目がいい人”とされます。ですが、40代を超えた大人が見えづらくて困るのは、パソコンなどの比較的近い距離ですよね? ところが、パソコンの距離が見えづらいかどうかを調べる機会はなかなかないわけです。

「目がいい」とされてきた人は、メガネがいらないと考えているから、その状態を放置してしまいます。そうした人ほど近くを見るときには目の筋肉を使いますから、現代社会においてはつらい目だと言えますね。

??子どもの頃の視力検査の印象が強いので、近視の人がメガネを作るときも「遠くが見えるものを」と思ってしまいがちです。

加藤 見たい距離に合わせて作る。それは、近視でも老眼でも同じです。若い頃は調節力があり、「明視域」といってピントを合わせられる範囲が広いんですね。ですから、近視用のメガネ1本で近くから遠くまで見えます。それが、年齢を重ねると明視域は狭くなり、ある一定の距離しか見えなくなるんです。

 ですから、ご自身が見えづらい距離はどこなのか。できれば何cmなのか、お店にくる前に計測してきてほしいです。その距離は、1か所とは限りません。「運転時に、遠くの景色もカーナビも見えづらくなってきた」ということもあるでしょう。

??そうした場合は、遠近両用レンズを使うわけですね。

加藤 はい。でも遠近両用を使えば見えるようになる、という単純な話ではないんです。たしかに遠近両用レンズは、レンズの上部に遠くを見る度数があり、下に向かうほど近くを見る度数へとなだらかに変化しているので、遠くから近くまで見ることができます。

 ですが、見たい距離を伝えないと、一番見たいパソコンの距離の度数がレンズの下側に少ししか入っていないというメガネができ上がってしまうこともあるわけです。つねにアゴを上げるような姿勢でないと見ることができず、それで「私には遠近両用は合わない」と諦めてしまう。これは私たちとしても残念ですね。

■お店にいる間が勝負!

??「とりあえず、遠くも近くも見たい」といったあいまいなオーダーだと、そうしたことが起きてしまうわけですね。

加藤 そうなんです。ですから、距離が大切なんです。きちんとした知識のある眼鏡店なら、その距離に合わせたメガネを作ってくれます。遠近両用や中近両用といった累進レンズ、もしくは運転用と日常生活用は使い分けたほうが良いのかなど、距離に応じて必要な度数とライフスタイルに合わせてレンズを提案してもらえるはずです。

??では、見たい距離に加えて「趣味で手芸をしている」、「車は運転しない」、「職場で使うパソコンはデスクトップ」など、自分の情報をできるだけ伝えたほうがいいですね。

加藤 お店で測定が終わったあと、仮枠をつけてテストレンズを試しますよね。それを掛けたときに、ラクな姿勢でパソコンなどご自身のやりたい作業ができるかを確認することも大切です。

??いつも通りの姿勢や距離でスマホを見てみたり、ノートパソコンを持ち歩いている人は、実際に出して作業をしてみるのもいいですね。

 加藤 はい。自分の普段の生活をできる限り再現して、その見え方で大丈夫なのかを確認してください。お店だと普段より妙に良い姿勢でスマホやパソコンを見たりしてしまうんですけど、あくまでいつもの姿勢で。お店にいる間なら、度数も変更できますから。お店にいる間が勝負ですよ!

■最初に予算を伝えてみる

??遠近両用レンズや中近両用レンズになると、設計によっては価格も上がってきますよね。メガネを買う際、レンズの価格が最後までわからないのが不安という人も少なくありません。

加藤 そうした場合、最初に予算を伝えるとよいと思います。レンズにはたくさんの種類があり、価格にも幅があります。良心的な眼鏡店なら、予算の範囲内でできるだけ適切なものを提案するでしょう。当店では測定の結果グレードの高いレンズが必要だと判断すれば、事情を説明したうえで予算内のものと比較していただくこともあります。そのうえで「数年間毎日使うことを考えれば快適な見え方のほうが良い」と、予算を超えても納得いただけることも少なくありません。

??毎日使うことを考えれば、快適に見えたほうが良いですね。その分、フレームの予算を下げるという選択肢もありますし。

加藤 見え方を比較したうえで、グレードの高いレンズとの違いを感じないようであれば、必ずしも高いものを買うことはありません。また、現在掛けていらっしゃるメガネに不具合がないようなら、レンズだけを入れ替えることもできます。それなら、レンズ代だけで済みますから。

??遠慮せず相談したほうが、自分にとって良い提案が受けられそうですね。

■先に測定をするとフレーム選びがスムーズに

加藤 自分に合うメガネを作るという点では、度数の測定を先に行なうのもおすすめです。実際、当店ではそのようにしています。

??フレームを選んでから測定というお店が多いですが。

加藤 はい。ですが、遠近両用を希望される方や、近視が強い方の場合、先に選んでいたフレームが必要なレンズに適さない場合があるんです。

 たとえば、近視のレンズの場合、度数が強くなるほど周縁に向かって厚くなります。そのため、大きなフレームだと厚みが目立ってしまうんですね。最初に度数がわかっていれば、厚みが目立たないデザイン、厚みを抑えられるデザインのフレームをおすすめするなど、スムーズなご提案ができます。

??必ずしも超薄型レンズといわれる高屈折率のレンズを使わなくても、フレーム選びでレンズを薄くできるということですね。見た目はもちろん、それは予算の面でも助かります。

加藤 ご自身に合うメガネを作るためにも、フレーム選びやレンズ選びについてわからないことや不安な点は、遠慮なくお話しいただければと思います。

 昨年から、リモートワークで目が疲れるという方が、本当に増えています。見えづらいせいで仕事の効率が落ちてしまうのは、本当にもったいないことです。「自分にはメガネが合わない」と諦めていたり、「自分は目がいいから」と不調をそのままにしている方は、ぜひ一度眼科や眼鏡店に相談してみてください。

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 これまで、一般的に「視力」で考えられがちだったメガネ。パソコンやスマホなど、近業の作業が増えたこともあり、「見たい距離」を意識してメガネを作ることは、これまで以上に重要なポイントになると言えるだろう。近年はレンズがフレームとセット料金になっていたりすることなどから、その存在が軽んじられてしまうこともあるが、ピント合わせをサポートするのはレンズである。ぜひ、しっかりと選びたい。

写真=今井知佑/文藝春秋
取材協力=ニコンメガネ(南青山)

(伊藤 美玲)

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