三井住友トラスト新社長人事 影響を及ぼした「東芝事件」

三井住友トラスト新社長人事 影響を及ぼした「東芝事件」

左から大久保氏、高倉氏、大山氏、橋本氏 ©共同通信社

 三井住友トラスト・ホールディングスは1月28日、高倉透執行役員(58)が三井住友TH社長、大山一也常務(55)が三井住友信託銀行社長に就く人事を発表。11年4月、旧住友信託銀行と旧中央三井THの経営統合で発足した三井住友THは、メガバンクグループに属さない日本唯一の「専業信託銀行」だ。

「高倉、大山両氏はともに旧住友信託出身。統合以来、両社長を旧住友信託と旧中央三井の出身者で分け合うタスキ掛けが続いてきましたが、その慣例が崩れた形です」(信託銀行幹部)

 高倉氏は会見で“行内融和”を強調したが、舞台裏では「旧行間で激しいバトルが繰り広げられていた」(金融庁関係者)という。

 トップ人事が動き出したのは、昨年5月頃。THの大久保哲夫社長が信託銀の橋本勝社長に「統合10年を迎える21年4月に退任したい」と明かしたのだ。

「指名委員会の松下功夫委員長(ENEOSHD元社長)を交え、後任の議論が本格的に始まりました」(同前)

 ところが、旧住友信託出身の大久保氏がTH社長に高倉氏、信託銀社長に大山氏を推したのに対し、タスキ掛けを死守したい旧中央三井出身の橋本氏はTH社長に大山氏、信託銀社長に山口信明常務(旧中央三井出身)を推したという。

■橋本案が潰えることになった“ある事件”

「両者の議論は平行線が続き、指名委に高倉、大山、山口の3氏のトップ候補案が上がってきたのが昨年12月中旬。ここから指名委が個別面談に入るドタバタぶりでした」(同前)

 だが、この間、後任人事に影響を及ぼす事件が起きていた。東芝が開催した株主総会の議決権行使書を巡り、昨年9月、三井住友信託の不適切集計が発覚。東芝は旧中央三井の親密取引先で、議決権行使書の集計受託も旧中央三井時代からだ。東芝の大株主である投資ファンドが不適切集計を問題視し、臨時株主総会の開催を要求する事態に発展。旧中央三井の山口氏を推す橋本案は潰えた。

「11年の統合を決めたのは住友信託側が常陰均社長で、中央三井側は田辺和夫社長。組合閥の社長が多い中央三井にあって、田辺氏は金融庁とも親密で常陰氏と対等の関係を維持してきました。タスキ掛けはその象徴でしたが、田辺氏が体調を崩して一線を退いた一方、常陰氏は今も大きな影響力を持っている。THの高倉新社長も常陰氏の秘蔵っ子です」(同前)

 指名委で「高倉君では行内の多くの社員が失望し、意気消沈する」と漏らしたとされる橋本氏。旧行間の“信頼”構築は、これからが正念場だ。

(森岡 英樹/週刊文春 2021年2月11日号)

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