「軽自動車に軽油」だけじゃない…ベテラン店員が語るガソリンスタンドに来たヤバい客

「軽自動車に軽油」だけじゃない…ベテラン店員が語るガソリンスタンドに来たヤバい客

ガソスタで失敗した悲劇紹介

「軽自動車に軽油」だけじゃない…ベテラン店員が語るガソリンスタンドに来たヤバい客

©iStock.com

 セルフ式のガソリンスタンドには、どこか気が抜けない雰囲気がある。

 従業員による誘導がないことで、「どのように振る舞えばいいか」について明確な正解がないからだ。「セルフが苦手」という人たちは、おそらくテーブルマナーを知らずにフレンチの席に着かされたかのような思いがするのだろう。

■セルフ式スタンドの恥ずかしい失敗

 実際に、セルフ式スタンドにおいては日々さまざまな「恥ずかしい失敗」が起きている。「軽自動車に軽油を入れた」という話はよく聞く話だが、給油口キャップの閉め忘れやガソリンの吹きこぼしなど、不慣れであるがゆえの失敗は日常茶飯事だ。

「一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター」の調査では、2020年3月の段階で、全国のガソリンスタンドのうちセルフ式のものは34.8%を占める。年々ガソリンスタンドの軒数が減っているなか、セルフ式スタンドは増加しており、「セルフは苦手だから避ける」ということができない場面も出てくるかもしれない。

「人の振り見て我が振り直せ」というわけで、スタンドで起きた「恥ずかしい失敗」から学んでみるのも悪くないだろう。実際にガソリンスタンドに勤務している、あるいはかつて勤務していたスタッフ達から、印象的な“ヤバい客”について話を聞いてみた。

■「レーン間違い」の末に……

「給油口の位置を間違え、反対側のレーンに入ってしまう」という失敗は、セルフ式スタンドにおいて最もよく見られるものだろう。セルフに慣れていても、レンタカーなど普段と違う車に乗っている時にはつい間違えてしまうこともある。

 間違いに気づき、すんなりレーンを移動することができればよいが、焦りがさらなる失敗を呼ぶケースもあるようだ。

「逆側のレーンに入っちゃったら、一旦前に出て、バックで隣のレーンに入れればOKじゃないですか。でも結構、ぐるっとUターンして逆側のレーンにつけちゃう人がいるんですよね。逆のレーンに移ったのはいいんですけど、車の向きも逆になってるんで……」

 当然、給油口の位置は逆のままである。

 スタンド内で右往左往する車の姿はなんとも滑稽だが、このような動きをする客はさほど珍しくないという。

「1回や2回じゃないですね、不思議と結構目にします。焦ってテンパっちゃうのと、運転席に戻ると向きがわからなくなっちゃうのかもしれません」

「恥をかいた」と思うと、周りが見えなくなって不可解な動きをしてしまうこともあるものだ。接触事故を起こす危険性もあるため、少々失敗したとしても落ち着いて対処するようにしたい。

■ドライブスルー式洗車機は失敗の宝庫

 続いては「洗車機」をめぐる失敗である。セルフ式スタンドであっても、洗車はスタッフに任せる形式のところもあるが、客側ですべてを完結できるドライブスルー式の洗車機を置いている店舗も多い。

 お金を入れてメニューを選び、レーンに進んで洗車が終わるのを待つ。それだけのことなのだが、ちょっとした「うっかり」が悲劇につながることもある。

「ミラーを閉じないまま洗車しちゃう人が多いです。ブラシに押されて、逆側に折れ曲がっちゃうケースが結構あります。大抵の車はミラーが逆側に行っても普通に手で戻せば問題ないんですけど、びっくりした勢いなのかそのまま怒鳴りこんでくるお客さんもいました。目の前で元に戻して、動作確認して……気まずい空気でしたね」

 洗車機の中ではミラーを畳むのが基本である。ミラーが畳めない車種や、ミラーにウインカーが付いている車種などは、洗車メニューを選ぶ際に「付属品」の箇所でミラーを選択すれば、洗車機がミラーを避けて洗ってくれる。

「ただ、これは別店舗から聞いた話ですけど、洗車機によっては特定の車種のミラーと相性が悪いものがあるようです。ドアミラーを閉じていてもブラシと衝突するとか……。ミラーが一時的に逆側を向くだけじゃなくて、取り付け部が破損してクレームになったケースもあるみたいです」

 つまり、ミラーを閉じた状態であっても、一部の車種は洗車機の設定画面で「畳めないミラー」を選択する必要があるということだ。ミラーが大きく、畳んでもボディの側面から大きくはみ出すような車種は、洗車機で「畳めないミラー」を選択しておくのが無難らしい。

■忘れがちな「閉め忘れ」

 もうひとつ、洗車に際しての「閉め忘れ」といえば、窓である。小さく開いている程度なら被害は少ないが……

「窓ならまだいいんですけど、サンルーフだと悲惨ですね。外を見回っている時、洗車機の音にまぎれて、なんか人の叫び声が聞こえたような気がして……近寄ると、車内で水を被ったお客さんが恨めしそうにこっちを見ていました。店側としては責任を取るわけにもいかないですし、バスタオルを貸すくらいしかできなかったです。やっぱりずっと不機嫌な様子で、なんとも後味が悪い感じでした」

 セルフ式スタンドでのトラブルは基本的に自己責任だ。車内に大量の水が入れば、電装系の異常や漏電の可能性も考えなければならない。洗車機に入る際には、とにかく「閉め忘れ」に注意しよう。

■意外と多い釣り銭の取り忘れ

 セルフ式のスタンドには、現金の支払い方法にいくつかのパターンがある。

 なかでも先に一定額を投入し、給油後に精算機で釣り銭を受け取るシステムはトラブルにつながりやすい。

 給油してノズルを所定の場所に戻すと、バーコードの記載されたレシートが発行される。それを読み取り機にかざすことで、釣り銭が出てくる仕組みだが、このレシートを取り忘れて去ってしまう人が稀にいるという。

「お客さんが取り忘れたレシートを、スタッフ側が気づいて取っておければ大きな問題はないんですけど。次のお客さんがレシートを取って、お釣りをもらっちゃうと大変です。ウチでも、お釣りをもらい忘れたお客さんが帰ってきて、はじめて盗られたことに気づくってことがありました。監視カメラを見ればお釣りを持っていったお客さんはわかりますけど、スタンド側で追うことはできないので、結局警察沙汰ですね」

 前の客のお釣りを受け取ることは、遺失物横領(占有離脱物横領)にあたり、当然刑罰の対象となる。レシートで釣り銭を受け取るシステムのスタンドで、万が一前の客のレシートが残されていたら、すぐさま店員に知らせるようにしたい。

■セルフスタンドの「割り込み」は誤解が原因?

 セルフスタンドの順番待ちには明確なルールがあるわけではなく、給油口の向きで順番が前後することもある。スタッフが誘導している場合はそれに従えばよいが、必ずしも誘導があるとは限らない。

 誘導がない場合には、自車の給油口の側にあるレーンのうち、早く空きそうなところに並ぶ「フォーク式」が効率的であるように思えるが、人によっては「一番前に並んでいる車が、逆側の給油レーンであっても向きを変えて入ればよい」と考えていることもある。

 お互いに割り込みをするつもりがなくとも、「方向転換しているうちに入られてしまった」あるいは「並んでいた列に別方向から入られてしまった」ということが起きうるわけである。スタンド側としても、並び方についてはっきりとした基準をもっているわけではないようだ。

「立地条件にもよりますけど、基本的にはレーンごとに並んでもらった方が安全だと思います。混みやすいスタンドだと、道路まで列が続くことも多いですし。ただ、状況によっては方向転換して逆側に入ってもらう方がスムーズなこともあります。国産車は給油口が左側にある車種が多いので、レーンごとに並ぶと偏っちゃう場合が結構あるんです」

 仮に車の給油口が両側にあるのだとしたら、レーンごとに並んでおけば間違いないのだが、現実には左右で偏りがあるため、臨機応変に対応する必要があるわけだ。誘導がない場合には、近くの車がどのように動くのかある程度想定しながら動くことが望ましい。

■誘導があっても割り込む猛者も

 しかし、誘導があったとしてもトラブルになるケースもあるという。

「普通に皆さん従ってくれるんですが、ごく稀に無視して割り込みをするお客さんもいます。ウチのスタンドには常習の方がいますね、並んでる方向とは別のところから結構なスピードで進入してくる。誘導中のスタッフにぶつかりそうになったこともあって、並んでくれないなら来ないでくれとは言ってるんですけど……」

「もし逆上して暴走したら」ということを考えると、車に乗っている人間に強く注意することもためらわれる。実際に、2015年、岩手県のガソリンスタンドで割り込みを注意されたドライバーが故意にスタッフをはねた事件もあった。

 泣き寝入りのようで釈然としないが、逆上した車による煽り運転などが話題に上る昨今、一部の横暴なドライバーに対しては「なるべく関わらない」ことが正解なのかもしれない。

■「目に見えてタイヤがぺちゃんこに」

 最後に、スタンドに設置されているさまざまな備品をめぐる失敗やトラブルを見てみたい。

 まずはタイヤの空気圧を調整するエアチェッカーだ。

「店によって置いてあるタイプが違うんで、使い方がわからなくて空気圧をどんどん減らしていっちゃうお客さんなんかもいます。目に見えてタイヤがぺちゃんこになってたり。もちろんなるべく声はかけますが、そのまま高速とか乗っちゃうと最悪バーストの危険もありますし、操作がわからない時には遠慮せず聞いてほしいと思います」

 車の部品で唯一地面に触れているタイヤは、乗員の安全に直結する。冬場などは放っておくと大幅に圧が下がっていることもあるので、自身でチェックする習慣をつけておくことは重要だ。わからなければ、素直にスタッフに聞くことも運転手の義務なのだろう。

 洗車機まわりの備品も、使い方が明示されていないため、奔放な行動を呼び起こしやすい。

「洗車スペースの備品の使い方には結構個性が出ます。ウチは洗車機の手前に、ホイールを洗うためのホースとブラシを置いてるんですけど、それで結構な時間をかけてボディまで洗ってたり。あとは拭き上げスペースの掃除機ですかね。車内のマットを一旦全部出すのはいいんですけど、パンパン叩くのはなるべく遠慮してほしいと思います」

■何よりも大切な「周りへの配慮」

 当然、ここに挙げたようなケースはごく一部なのだろう。スタッフに聞いても、ほとんどの客は何も問題なく利用できているという話だった。

 けれどもやはり、常識の範囲は人によって異なり、また人為的なミスや不注意の可能性は常に存在するため、設備の使い方をめぐるトラブルを完全に防ぐことは難しい。

「誰でも使える」と思われがちなセルフ式スタンドだが、周りの目に焦ることなく、しかし共同のスペースであることにも配慮するというバランス感覚は、案外「当たり前」のものでもないのかもしれない。
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(鹿間 羊市)

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