【本日接種スタート】「ワクチン不信は社会が救われない」 東京都新型コロナ対策アドバイザーの医師が語る感染症対策の“不備”

【本日接種スタート】「ワクチン不信は社会が救われない」 東京都新型コロナ対策アドバイザーの医師が語る感染症対策の“不備”

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【本日ワクチン接種スタート】「GoToは国民の意識を狂わせた」 最前線の医師の予想外だった小池百合子の“発言” から続く

 連日1000人越えの感染者数を出し、危機に瀕していた東京。この1年、東京都新型コロナ対策アドバイザーとして、最前線で奔走してきた大曲貴夫医師が取材に応じた。「何が失敗だったのか」「小池都知事に対する評価」「感染収束の見通し」など、数々の問題を徹底的に語った緊急インタビューを、『 週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド 』より、一部抜粋して紹介する。(全2回中の2回目。 前編 を読む)

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 その後、結局は標準治療を見出さない限り、全然前には進めないということが分かって、準備に1カ月かけて、米国との共同治験に踏み切ったのです。今、コロナに対して世界ではいくつかの治療薬が承認されていますが、すべてそういう手続き、具体的にはランダム化比較試験を経たものです。何となく使ってみて効果があった、なんていうほど薬は甘いものではない。時間がかかっても絶対に手続きが必要です。

■極めてロジカルに対応できる現在

 もう一つは「病態」、つまり病気が発生する仕組みが分かってきたので、これを基に治療戦略が立てられるようになりました。新型コロナは、あるタイミングで突然、容体が悪くなって重症化します。そのタイミングがわからずに治療が後手後手になってしまうケースがありました。ところが、血液中のサイトカインや尿に含まれるある物質を、重症化のマーカーにすることができるようになってきたのです。

 その数値によって、この患者さんはこれから容体が悪くなるな、というのが見えつつある。糖尿病、高血圧、心臓病、肺の病気など基礎疾患を考慮し、先回りしてこの投薬を始めよう、こういう治療をしよう、と極めてロジカルに対応できるようになってきました。

 昨年末頃から救急車を呼んでも、ベッドがなくて、なかなか入院先が決まらないケースが相次いで報告されている。中には容体が急変しても入院できず自宅で亡くなるケースもある。感染拡大にともなう医療体制の逼迫については、連日議論になっているが、その点についてはどう考えているのか。

■日本の医療は余裕を持てないようにできている

「この一年、なぜ、全部の患者さんを受け入れられるように、医療側は準備してこなかったのか」との批判がありますね。ですが、一方で過去これまで医療に少しでも無駄があれば、国の財政を圧迫していると怒りの声があがっていたのも事実です。本来、日本の医療は余裕を持てないようにできています。理由は社会がそれを求めてきたから。これは強く言いたいです。

 もちろん単純にベッドを増やすことはできると思います。ただ、医療は人がやるものです。特に新型コロナの治療は大きなマンパワーが必要で、コロナの患者さんにベッドを空けたとなると、他の病棟から一般医療をやっている医師や看護師を連れてこないと回りません。その分、今度は一般医療が圧迫されることになります。医療はいわば莫大なお金のかかるインフラなので、簡単に伸び縮みできません。 

 コロナの来るずっとずっと前から感染症対策に携わって感染対策への備えを訴えてきた我々としては、新型コロナに対応するだけのキャパシティ、人手の確保、そのための人材教育をさせてもらえなかったと思っていて、そこには忸怩たるものがあります。そうさせてくれなかったのは社会です。

?今、感染拡大を抑えるのに期待されているのがワクチンだ。2月17日より日本でも医療従事者から接種が開始された。

 ワクチンには非常に期待しています。海外のデータですが、有効率95%という数字が出ていますね。これは大きいです。

 ただ、ワクチンの効果は、なかなか見えづらい部分もあります。個人レベルであれば、90%とか95%といった数字で見ることができますが、社会に適用した時、つまり多くの人がワクチン接種をした時に、どのような結果が得られるかは予想するのが難しい。もちろん、重症化する人が減れば良いですが、一時的に蔓延が収まるだけで、やがてワクチンの効果が薄れて、また患者が出てしまうのか、そのあたりはわかりません。

 一方でアナフィラキシーショックなど副反応の問題も指摘されていますが、ワクチンには必ずアレルギーがあり、極端な反応が出る方もいらっしゃいます。ただ、アナフィラキシーの場合、症状が出るのは接種後15分程度なので、それに対応できるようにしっかり準備して、不必要に恐れるべきではないと思います。

 実際、我々も新型インフルエンザ対策として新宿区内で年に1、2回ワクチンの集団接種の訓練をやる際に、開業医の方々に集まっていただき、アナフィラキシーにも対応できるようにしてきました。

 ワクチンは社会を一気に救う可能性があります。そこには医師として心底期待したい。そのためにはワクチンが適切に広まらなければならない。しかしそこで、副作用の話を歪んだ形でおどろおどろしく伝えて不安を煽ることは絶対に行ってはいけません。結果的に人々がワクチン不信に陥ります。それでは救われる社会も救われなくなります。不幸すぎます。

 さらにワクチンが変異株のウイルスに効果があるのか、という問題もありますね。変異株は感染力が強い、致死率が高いといった報道もありますが、正直なところ不確かな情報しかなく、なんとも言えません。ワクチンに効果があるのか、変更が必要になるのか。ただ、まずは変異株がどうという前に、やはり目の前の感染を強く抑えることが必要だと思っています。

■「うちの子だけ2回打ちたい」

?4月からは高齢者へのワクチン接種が始まる。一括りに高齢者といっても、基礎疾患のある人や、要介護で接種会場へ行けない人もいる。どう順番を付けるかも課題になっている。

 行政がある程度の順番を決めてくれるはずですが、ロジスティック(調達や配給)を組み立てるのが、相当大変です。

 09年に新型インフルエンザのワクチンが出回り始めたときもバタバタした経験があります。当時、私は静岡にいましたが、「今日は100人分だけ来る」「じゃあ、誰に打たせるんだ」「うちの子だけ2回打たせてほしい」とか、色々な問題が起きました。今回のコロナワクチンでも、3000万人分が1気に届くわけではなく、計画的に分配されることになるでしょう。どの高齢者施設に回すとか、どの集団接種会場に回すのか、といったことも考える必要があります。

おおまがり・のりお/1997年、佐賀医科大学医学部卒。2010年に静岡がんセンター感染症内科部長。12年より国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長。日本感染症学会専門医・指導医。感染症の臨床一般、危機管理を専門とし、この1年は東京都の新型コロナ対策アドバイザーとして、最前線で対応にあたってきた。

じんぼ・なおき/1970年生まれ。中央大卒。2004年より「週刊文春」記者。14年頃から主に医療・健康に関する記事を取材執筆。メイン執筆者となった文春ムック「認知症 全部わかる!」が発売中。20年10月をもって独立。

「朝10時、1時間後に入院してほしいと言われ…」 “陽性”診断に備えて用意すべき30のアイテム へ続く

(神保 順紀/週刊文春出版部 週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド)

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