《日経平均3万9960円になったら赤信号》専門家が教える「金融機関のカモになりやすい投資の考え方」

《日経平均3万9960円になったら赤信号》専門家が教える「金融機関のカモになりやすい投資の考え方」

2月16日の二系平均株価は連日の3万円超え ©時事通信社

 コロナ禍にも関わらず株価は上昇を続け、2月15日には日経平均株価が3万円を突破した。いわゆる「バブル景気」のさなかの1990年8月以来、30年半ぶりの大台回復だ。

 こうしたなか、各地で開催されている投資セミナーにも多くの人が集まっている。コロナ禍によって将来の先行きに不安をもった若者を中心に「投資熱」が高まっているのだ。

 しかし、世の中にあふれる投資の本や投資セミナーの通りに株や債券を買うと損をする人が多いという現実もある。果たして今、このコロナバブルとも呼べる状況で、どのような投資をするのがいいのだろうか。楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏に訊いた。

■コロナの“おかげ”で株価が上がった

――コロナ禍の今、なぜ株価が上がっているのでしょうか。

 コロナ禍なのになぜ、というよりはむしろ、現在の株高は、コロナの“おかげ”で起きています。遡ると、コロナの第一波が始まった2020年3月に、今まで見たことがないようなスピードと幅で、日経平均は急落し、1万6000円台に突入するほどでした。このときコロナは、株価にとって大きな悪材料でした。

 その状況に対して、日本銀行はもともとの金融緩和を拡大しましたが、加えて政府もコロナ対策で莫大な額の財政支出を行いました。その結果、これまで広義のマネーサプライやそのベースになる銀行貸し出しが年率で2%くらいしか増えていなかったものが、両方とも対前年比で5〜7%に増えた。そうした資金が、株式などの投資に流れました。同様の動きが米国でもあって、その結果、米国の株価は史上最高値を更新している。日本株は米国株に連動するので、米国の影響は大きい。

「コロナのおかげで株価が上がった」と言われると、嫌な感じがするかもしれませんが、これが今回の株高の背景です。

――2月15日には日経平均は3万円を突破。これはバブルではないのですか。

 確かに今の株価の形成は「バブル的」です。

 一方、バブルとは、長期的には維持できないほど資産価格が高くなった状態を指します。株価はまだまだ上がる可能性があるし、もちろん、下落する可能性もある。何れにしても、投資家は株価の絶対水準が高いのか安いのかについて判断しなければなりません。

 株価がバブルか否かを判別する手掛かりの1つとしては、「PER(株価収益率)」を見る方法がオーソドックスです。PERは、1株当たりの株価が、その企業の1株当たりの純利益の何倍に相当するかを示す指標です。この数字が大きいほど、その会社は利益に対して株価が高いと言えます。

■株価が高いという「黄色信号」が点灯し始めた

 たとえば、1株1000円の株で、年に1株当たり50円の純利益があるとします。純利益が株主のものだとすると1年に獲得する利益は株価に対して5%です。この利回りを益利回りと呼びます。この場合、PERは20倍です。利益そのままで株価が1250円に上昇すると益利回りは4%となってPERは25倍です。更に株価が上昇して、益利回りが3%になるのは、PER33.3倍です。

 経験的に、アメリカの「S&P 500(米国株式市場の動向を示す株価指数)」は、S&P 500のPERが20倍を超えてくると、少し高いなという水準になったと言われることが多かった。

 では、今の日経平均を1つの銘柄として見立ててみるとどうなるか。1株当たりの利益を計算すると1200円くらいなので、株価3万円の現在のPERは大凡25倍です。

 これは、株価が高いという「黄色信号」が点灯し始めた水準といえるでしょう。今後さらに株価が上昇し、PERが33.3倍となる3万9960円になったら、赤信号だというくらいに考えるといい。

 黄信号の3万円から赤信号の約4万円手前までずいぶん幅があるなと感じるかもしれませんが、どこが限界かを予想するのは非常に難しい。ただ、今の日本の株価は黄色信号が灯りはじめた状態だなあと思っておくのがいいだろうと思います。

■バブルが弾けて大損する可能性は?

――具体的に危険水域に入った場合にはどうすればよいのでしょうか。

 もし、もうすでにある程度投資を行っている人なら、赤信号の前後で投資の額を微調整するのはいいでしょう。ただし、仮に1000万円投資しているのなら、それを900万円か800万円くらいに落とすのが妥当な調整の限界です。バブルのようだから、持っている株式や株式に投資している投資信託を全部売るとか、半分売るというのはやり過ぎです。

――これから投資を始めると、バブルが弾けて大損する可能性が高いのでしょうか。

 そうとも言えません。そもそも、仮にバブルが弾けて、株価が3割下がったとしても、株式を持ち続けたらいい。米国の過去の経験では、バブルがはじけてもその損失を取り戻すのに3年程度でした。株価はまた持ち直すことが多い。

 基本的に、株価に上昇と下降の波はあっても、長期的には預金や債券よりも投資収益率が高いことが多い。今から20〜30年後に振り返ってみると、「株価2万円でも3万円でも安かったじゃないか」ということになるのではないかと期待して買うのが株式投資の基本的な考え方です。

■プロの投資家も「損した」と公言しないだけで、結構痛い目にあっている

 アメリカの有名な格言に、「株式投資で大事なのはタイミングではなくて、タイムだ」という言葉があります。つまり、どれだけ長い時間、株式市場にい続けるかが大事だということです。株価が上がったところで売って、下がったところで買ってと、タイミングよく売買するというのは、口では簡単に言えるが、実際にはそれをうまくやれる人はほとんどいない。年金基金のような世界有数の運用会社でも、うまいタイミングでの売買はできないというのが常識です。プロの投資家もみんな、「損した」とわざわざ公言しないだけで、実際には結構痛い目にあっています。

――あまり、その時々の「株価」に一喜一憂すべきではないと。

 心が一喜一憂するのはいいけれども、余計な売り買いをすべきではない。

 これは投資を始めたばかりの人が陥りやすい思考法なのですが、今、日経平均が3万円になったことをもって、「昨年3月の、株価1万6000円台のときに買っとけば儲かったのに」と思うのはよくない。それは今だから言えることにすぎない。

 昨年3月の1万6000円の時点ではそれよりもっと株価が下がる可能性もあった。原則論として、その時々の株価にはその時点の市場参加者の将来に対する予想が反映しているので、いつの時点で株を持つとしても、有利・不利はないのです。つまり、「いい時」は分からないので、いつ投資してもいい。

■金融機関のカモになりやすい人の思考法とは

――では、具体的に株式投資の初心者は、今はどういう買い方をすればいいのでしょうか。

 まず投資をするうえで初心者であるかどうかは何も関係がないと知るべきです。初心者向け投資というものがあり、そのレベルをマスターしたら、次はベテラン向けの投資があり、さらに次のステップとして富裕層向けの投資がある、というようなイメージを持つのはよくない。レベルが上がるよりよい投資方法があると考えるのは、金融の世界では、田舎臭い恥ずかしい考え方です。そう考える人は金融機関のカモになりやすい。初心者でもベテランでも、富裕層でも、庶民でも、投資にあっては、共通の「一番効率のよいことをする」だけが正解です。

 では、一番効率が良い方法とは何か。先ほども述べた「ずっと持ち続けること」を実現するためには、1銘柄だけに絞って株を買うようなことは避けるほうがいい。

 例えば、トヨタやファーストリテイリングだって、今は絶好調でも未来永劫に安全な株かは誰にもわからない。電気自動車の分野で競争に敗れてトヨタが没落する可能性だってないとは言い切れない。

 つまり未来に起こることは分からない。だから、リスクはできるだけ分散しておくのがいい。この原則はプロも初心者も共通です。

■高い株も安い株も両方を少しずつ買いなさいが投資のセオリー

――コロナの巣ごもり需要で、任天堂やソニーが上がっているから、それだけを買うというような買い方はダメと。

 その通りです。「例えば、任天堂の業績が好調なことは、みんな知っている。その情報をすべて反映したうえで今の株価がついている」ということです。

 だから、今の時点である企業の株が高くなっていたり、安くなっていたりしても、これからどう動くかは正直分からない。今、値段が上昇している株と下降している株では、どっちを買えばいいかは分からないのです。高い株も安い株も両方を少しずつ買いなさいというのが投資のセオリーなのです。

■「損をしても大丈夫」と思える金額の3倍まで

――具体的にどう投資をすればよいのでしょうか。

 少量ずつ自分で個別株を選んで買い、家庭菜園のように、育てていく方法はあります。自分が何に投資しているか分かる安心感があります。ただし、この方法はバランスを取るのが難しく、手間暇がかかるので、投資を趣味でやる人向けです。

 やりやすいのは、やはりインデックスファンド(日経平均株価やTOPIXといった指数の動きに連動するように運用されているファンド)を利用する方法でしょう。外国株連動型と国内株連動型を半々で買うといいだろうと思います。

 日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、現在、日本株25%、外国株25%、日本債券25%、外国債券25%で運用しています。外国と国内の株式を半分ずつインデックスファンドで持つという買い方は、世界的に最大級の投資家であるGPIFでもやっている方法であって、概ね無難です。ただし、この内、外国債券は、為替リスクがある割には利回りが高くないので、個人の投資ではあまり必要がないと思います。

――インデックスファンドにどれぐらいの金額を回すのがよいのでしょうか。

 基本は「損をしても大丈夫」と思える金額の3倍までです。300万円までの損なら耐えられるという場合なら、900万円まで投資できるというくらいに考えて下さい。ただ、健康で且つ定職についている人なら、一時的に運用資産が値下がりしても、働いて稼いだり、生活の中で節約したりすることで、損失の影響を吸収できるので、よく考えると、当面使わないお金の大半をインデックスファンドに投資できる場合が多いと思います。

 もちろん、投資にリスクはつきものです。投資にあっては、損が出た時にも動揺しない胆力と、売らずに持ち続ける忍耐強さが必要です。

(清水 典之/Webオリジナル(特集班))

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