「100年ライフ」が当たり前? 長寿化時代を生きぬくための教科書

「100年ライフ」が当たり前? 長寿化時代を生きぬくための教科書

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』リンダ グラットン,アンドリュー スコット 東洋経済新報社

 産業革命、大量生産方式の発達、インターネットの出現など、私たちは技術の発展によってこれまで幾度となく生活を激変させてきた。昨今では、AI(人工知能)にまつわる議論も活発に行われるなど、人々の暮らしに対する関心は急速に高まっている。今回ご紹介する、リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットによる『LIFE SHIFT』は、長寿化という視点から、人々の今後の生活がいかに変化し、それに対して私たちはどのように対処していけば良いかを探っていく。

 「いまこの文章を読んでいる50歳未満の日本人は、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいたほうがいい」(本書より)。

 こう著者が警告するように、「2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される」(本書より)というデータもあり、今後は100歳まで生きることが半ば当たり前になっていく。そうなったとき、従来の「教育→仕事→引退」という3ステージ型の人生は機能不全に陥り、人々はマルチステージ型の人生を生きるようになる、というのが本書のおおまかな主張だ。

 お金の側面から考えてみると、従来型の人生プランが立ち行かなくなることは明らかだ。本書では年代の違う架空の人物をモデルに、「引退年齢を65歳」「引退後の毎年の生活資金を最終所得の50%とする」などの前提条件を定め、比較検討を試みている。たとえば、1945年生まれの人物の場合、勤労期間中に毎年所得の4.3%を貯蓄しておけば老後を過ごせたが、1998年生まれの場合は所得の25%を毎年貯蓄することが求められるという。こうした違いを生んでいるのは、年金制度の崩壊などもあるが、その大きな要因は、引退後の期間が延びていることだ。「人生が長くなれば、働く年数を増やさないかぎり、十分な老後資金を確保することが極めて難しい」(本書より)というわけだ。

 そんなこれからの時代を生きるポイントの1つとして、「大きな不確実性に直面する世代にとって、選択肢をもっておくことは、計り知れない価値をもつ可能性がある」と筆者は語る。

 今まででは、人生の初期段階で磨いたスキルをもとに労働期間を生き抜くことができたため、他の選択肢に目を向ける必要があまりなかった。しかし、100年ライフでは、1つのスキルを頼りに長い労働期間を過ごすことが極めて難しい。そのため、ときにはお金などの有形資産を蓄えることを控えてでも、人生の様々な場面でスキルや人的ネットワークなどの無形の資産に投資し、幅広い選択肢を確保しておくことが重要だというのだ。

 そこで、筆者は以下の3つのようなステージが新たに出現すると考えている。1つ目は、「旅をすることにより世界について新しい発見をし、あわせて自分についても新しい発見をする」という「エクスプローラー」。2つ目は、「成功することよりも、ビジネスの活動自体を目的に」実験を重ねていく「インディペンデント・プロデューサー」。3つ目は、「異なる種類の活動を同時におこなう」という「ポートフォリオ・ワーカー」。

 こうした新たなステージは、長寿化時代に極めて重要な"選択肢"を充実させるために非常に有効な役割を果たし、その人固有の幸せを掴み取る1つの方法としても機能する。

 ここまではお金の問題を切り口に、労働の変化やそれに対する対処法について簡単に紹介してきた。本書では、他にも「パートナーの選び方」「余暇の過ごし方」など、様々な視点から長寿化時代を生き抜くための方法を紹介している。

 漠然と親世代をお手本にして生きている人も多いかもしれないが、本書を通じて、現在進行形で起きている大きな変化を体感し、自分の人生プランを考える最初の一歩にしてみてはいかがだろうか?

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