ゆる〜り、でもちょっとしんみりする兼業主夫のエッセイ漫画

ゆる〜り、でもちょっとしんみりする兼業主夫のエッセイ漫画

『今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』劔 樹人 双葉社

 ひと昔前の「夫は外で働いて稼ぎ、妻は家の中のことをするもの」というスタイルから、"専業"主夫や"兼業"主夫になる男性も増えている昨今。その一端がうかがえるのが、劔樹人さんによるエッセイ漫画『今日も妻のくつ下は、片方ない。妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』です。

 劔さんの奥様は、作家・エッセイストの犬山紙子さん。サブタイトルにもあるとおり、犬山さんのほうが収入が多かったことから結婚後は劔さんが兼業主夫に。慣れない家事の難しさや面白さ、夫婦としてのささやかな幸せやモヤモヤなどが、劔さん独特のゆる〜いタッチで描かれています。

 そもそもなぜ劔さんが兼業主婦になったのか? 本書の「はじめに」でそれが紹介されています。34歳のころフリーランスの音楽プロデューサーとして活動していたという劔さんですが、仕事がないときは月収が6〜7万。これを見かねて、当時付き合っていた犬山さんがかけたひとことが「よし、結婚しよう」(男前!)。「いい? 私たちふたりはちょうどお互い得意不得意の分野が逆なんだよ。私はお金を稼ぐことが好きだけど、あなたは基本的にお金に興味がない。でも人の面倒を見るのは得意でしょう? だから結婚して家のことをやってほしい」(本書より)と犬山さんに言われ、「つまり僕は兼業主婦になればいいってことか。よし、やってみよう」となったのだとか。

 こうしてスタートした劔さんの兼業主夫ライフ。家賃や生活費は収入の多い犬山さんが負担し、そのかわりに家事はすべて夫である劔さんの担当しているのだそうですが、そこには日々さまざまなトラブルやお悩みが降りかかります。

 たとえば、とつぜん犬山さんから「昨日食べたタッカンマリが美味しかったから、今度うちでも作ってみてよ」という難しい発注があったり、犬山さんが寝室で脱ぎ散らかしたくつ下がかたっぽだけいつも見つからなかったり。よくある家事や、主夫の「あるある漫画」として共感を呼ぶものではなく、あくまでも劔さん目線の日常のしょうもない風景がゆるゆると綴られているのが本書の特徴ではないでしょうか。

 それが少し、けれどたしかに変わるのは、最後のほうで犬山さんの妊娠がわかってから。妊活や妊娠という問題に直面し、劔さんの奥底にある悩みや心境の変化が漫画にも現れます。

 主夫という仕事にやりがいや楽しみはそれなりに感じていたものの、「妻に稼いでもらっている」「本当は音楽の仕事で生活して普通の稼ぎのある男になりたい」というモヤモヤをずっと抱いていた劔さん。妊活について夫婦で話すことが多くなると、子どもが生まれた先の生活について自然と思いをめぐらせ不安を感じるようになります。そして、そこにおとずれた奥さんの妊娠。劔さんがどう感じ、どのような結論を出したのか......中盤までとはちがうテイストのしんみりしたラストにも注目です。

 本書と、犬山さんの著書『私、子ども欲しいかもしれない。 』刊行を記念した、劔さんと犬山さんのトークイベントも、7月2日(日)に本屋B&Bで開催されます。望むものをすべて手に入れられることはできない私たちですが、その中から何を選んで何を幸せとしていくかはその人次第。「人がどうであろうと、人にどう思われようと、その時、その場所で自分の幸せを決めてゆく」(本書より)という劔さんの生き方は、ライフスタイルや夫婦のスタイルが多様化した今の時代、私たちが自身の幸せを見つけるためのヒントになるかもしれません。

■「本屋 B&B」
http://bookandbeer.com/

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