今だからこそ読書は貴重な孤独体験----アーバンギャルド・松永天馬が影響を受けた本とは?

今だからこそ読書は貴重な孤独体験----アーバンギャルド・松永天馬が影響を受けた本とは?

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 本の楽しみ方を実践するイベント「本のフェス」のプログラムとして3月24日、「松永天馬×原カントくん BOOK STAND.TVトークライブ」が都内で開催され、アーバンギャルドのヴォーカルであり、作家としても活躍する松永天馬さんが登場しました。

(アーバンギャルドの松永天馬さん)

 この日はミュージシャンでありながら、書き手としても活躍する松永さんが、これまでにどのような本を読んできたのか、今どんな本を読んでいるのかを紹介しながら、松永さんの世界を掘り下げました。

 当日は「本屋B&B」等のプロデューサーでもある編集者の原カントくんが進行役を務め、60人以上の多くの参加者が詰めかけました。

 最初のトークテーマは「松永天馬と読書」。

「最初の読書体験は?」との原さんの質問に松永さんは「小学生時代に中学教師だった母から毎月1冊の課題図書が渡されていた」と驚きの回答。「その本を読むと500円がもらえた」と明かしつつ、「それ以外でも本は好きでたくさん読んでいたし、文章を書くことも好きだった」と当時を振り返りました。

 そんな幼少期から多くの本を読んできた松永さんですが、今は昔より本を読む量が減っているそうで、「SNSなどの情報があふれ、それに気を取られ、いたずらに時間が過ぎてしまう」と少し残念な様子も。その一方で、「読書は他人に干渉されずに、自分とだけ向き合える時間であり、自分と作者との対話ができる貴重な孤独体験。今の社会は情報があふれ人を孤独にさせないから、もっとみんなが孤独を大事にした方がいいのでは」と語り、いまだからこそ感じられる読書の大切さを伝えました。

(進行役の編集者の原カントくん)

■ロシア文学が長いのは、ロシアの冬が長いから

 続いてのトークテーマは「松永天馬は、こんな本を読んできた」。松永さんがこれまでに自身が影響を受けた本を持参し、それぞれの魅力について解説しました。

 その1冊として寺山修司の『寺山修司少女詩集』(角川書店)を手に取る松永さん。「この本は歌の歌詞ではないけど声に出して楽しめるし、ポップな側面と繊細で文学的な側面も楽しめる」と紹介。寺山修司について「時代を経ても変わらない文学的な味わいがあり、時代を切り取ったキャッチーな表現がすばらしい」と話し、「歌詞を書くうえで、お手本のようなところがある」と教えてくれました。

 他にもロシアの作家・ウラジーミル・ソローキンの『青い脂』(河出書房新社)を紹介。なんでも夢野久作の『ドグラ・マグラ』のような奇譚だそうで、松永さんは「とても実験的な作品だった」とその難解なストーリーや作風を解説。そのうえで「ソローキンの作品は基本的には読みづらくて少し退屈なものが多いけど、最後の数ページがものすごく面白い。彼の作品をはじめ、ロシア文学がとにかく長いのは、ロシアの冬が長いからだと言われています。とにかく長くてつらい読書体験だけど、その先に光が現れるんです」とその魅力を話し、「物語を読み終えることも大事だけど、読んでいること自体を楽しんでほしい」とおすすめしました。

「松永天馬は、こんな本を読んできた」のテーマでは以下の7冊を紹介しました。

・寺山修司『寺山修司少女詩集』(角川書店)
・アンディ・ウォーホル『ぼくの哲学』(新潮社)
・菊地成孔『スペインの宇宙食』(小学館)
・金原ひとみ『憂鬱たち』(文藝春秋)
・ウラジーミル・ソローキン『青い脂』(河出書房新社)
・四方田犬彦『ハイスクール1968』(新潮社)
・中森明夫『東京トンガリキッズ』(角川書店)

■松永天馬オススメのノンフィクション本

 次のトークテーマは「松永天馬の、ノンフィクション推し本」。松永さんおすすめのノンフィクション本を紹介しました。

 その1冊として松永さんは、田中圭一著のマンガ『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)を手にします。これは著者の田中圭一さんが実際にうつになり、その闘病記を描いた1冊。松永さんは「うつを克服するために必要なことは、自分を好きになることだ」とこの本から学んだといいます。また、「田中さんもそうですけど、フリーランスって明日どうなるかわからず常に不安にさらされているので、会社員よりうつになりやすいのかも」と話しつつ、「でも、今の世の中は会社員であっても会社が潰れないとは限らないし、昔より年功序列ではないから、そういう不安は常にみんなが抱えているんじゃないかな」と現代の生きづらさについて触れる一幕もありました。

 さらに松永さんは、高橋ヨシキ著『暗黒ディズニー入門』(コアマガジン)も紹介。「いい意味でも悪い意味でもディズニーが持つパワーのヤバさを伝える1冊」だと解説しつつ、近年、ディズニーがさまざまな企業を取り込み拡大していく様子について「ミクスチャーされる現代をうまくサーフしている」と表現。加えて「ディズニーは年齢、性差、国、人種、宗教などをも問わないマーケット意識を社会に植え付け、いろいろなカルチャーがディズニーに覆われている」と語りました。

 そんななか、会場に『暗黒ディズニー入門』の筆者でアートディレクターや映画ライターとしても活躍する高橋ヨシキさんが、サプライズゲストとして登場。『暗黒ディズニー入門』をもとに、ディズニーの企業戦略や社会に対する影響力などを深く考察しながら、多角的で会話がざっくばらんに繰り広げられました。

(『暗黒ディズニー入門』の筆者・高橋ヨシキさん(右))

 「松永天馬は、こんな本を読んできた」のテーマで紹介した4冊は以下のとおり。

・千葉雅也 二村ヒトシ 柴田英里『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』(KADOKAWA)
・田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)
・石川善樹 吉田尚記『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』(KADOKAWA)
・高橋ヨシキ『暗黒ディズニー入門』(コアマガジン)

 イベントの最後には「読書の魅力」についての話題になり、高橋さんは「読書体験はご飯を食べることも水を飲むことも忘れるくらい夢中になり、気が付いたら何時間も経っているもので、時空がゆがむような体験」と表現。これに松永さんは同調しながら「読書は1人で旅ができるようなものであり、普段とは違った体験ができる貴重な体験だ」と力強く語りました。

 次々に繰り出される本を通して、読書の魅力をたっぷりと感じられる時間となりました。

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