第98回 『パニック・アリゲーター 悪魔の棲む沼』

『パニック・アリゲーター 悪魔の棲む沼』
1978年・イタリア・85分
監督・脚本/セリジオ・マルティーノ
出演/バーバラ・バック、メル・ファーラー、クラウディオ・カッシネリ、リチャード・ジョンソンほか
英題『THE GREAT ALLIGATOR』

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 前回いきなり、ワニ映画の中で破壊力ナンバーワンの『ジャイアント・クロコダイル』を持ってきちゃったので、今回は「ボンドガールのスケチク」という別の角度から攻めてみたい。「スケチク」とは「衣服から透けて見える乳首」を意味するエロ方面のスラングで、本作のヒロインは『007 私を愛したスパイ』(77年)に出演したバーバラ・バック!

 ワイルドな顔に抜群のプロモーションを誇るバーバラ・バックは、私生活でも『おかしなおかしな石器人』(81年)で共演したビートルズのリンゴ・スターと結婚。そんなショービズ界の高みでリア充していたバーバラなのだが、一般人が一生観ないような珍作・怪作で頻繁に見かけた。スター・ウォーズのパチモン『ヒューマノイド 宇宙帝国の陰謀』(79年)や『恐怖のいけにえ 呪われた近親相姦の館』(80年)など、別に出なくてもよい低予算のゲテモノ映画に快く出演(としか思えない)する、お高く留まらない人となりもヲタ人気の高い要因だろう。

 他作品で脱いでいるバーバラ・バックのスケチクなど珍しくもないのだが、バーバラ愛好者にとっては「ワニ映画で見られる」というのが肝なのだ。VHSビデオのテイチクもDVDのクリエイティブアクザも、しっかりジャケットのスチールに該当シーンを選んでいて、「作品のウリはバーバラ・バックのスケチク」という共通認識がヒシヒシと伝わってくる。DVDの解説など「生贄にされイカダに括りつけられた極上ボディをクネクネと揺らし、肌に張り付く純白のドレスには恐怖で勃起した乳首を露わに!」と言い方がいやらしい。


 舞台はアフリカのどこか。未開の森を伐採して建てたリゾートホテルが招待客にお披露目される。観光事業会社パラダイス・ハウスの社長ジョシュア(メル・ファーラー)、広告写真カメラマンのダニエル、黒人モデルのシーナ、そしてホテル支配人のアリ(バーバラ・バック)が主な登場人物だ。社長役のメル・ファーラーはオードリー・ヘプバーンの元夫で、『史上最大の作戦』(62年)などの大作に出演していたが、実はトビー・フーパー監督の『悪魔の沼』(77年)でワニに食われた娘の父親を演じていた。『悪魔の棲む沼』というタイトルを付けたビデオメーカーの担当者は、それを知っていた可能性が高い。

 引っ掛かる点がもう一つ。アフリカにいるワニはクロコダイルで、アリゲーターの生息地は南北アメリカと中国の長江なのに、タイトルは「パニック・アリゲーター」(英題『THE GREAT ALLIGATOR』)。そこって生物学的に重要なことだが、細かいことは気にしないでタイトルを付けてしまったのだろうか?

 さて、この一帯に住むクーマ族の間ではンクルーナと呼ばれる巨大ワニが崇められていて、撮影で一緒になったイケメン原住民とシーナが密会中に食われてしまう。ダニエルとアリは、ンクルーナと遭遇したことがある白人に会う。11人の宣教師がンクルーナに食われ、彼だけ生き残り世捨て人となって洞窟で暮らしていた。ここでアリが、神父が岩に彫ったンクルーナを見て「あの彫刻はクロコダイルではない、アリゲーターよ!」と叫ぶ。

 クロコダイルとアリゲーターの外見上の違いは、上から見た口の先端がV字型に尖っているのがクロコダイルで、U字型に丸くなっているのがアリゲーター。また口を閉じた状態で下アゴの歯が牙のように出ているのがクロコダイルで、歯が見えないのがアリゲーター。見分けたアリも流石だが正確に彫った神父も凄い。これでタイトルに対する疑問が解けたが、なぜアリゲーターがアフリカに? 何か大きな秘密が隠されていそうだ。

 帰りの川で彼らはンクルーナの襲撃を受け、カヌーから落ちた案内役の原住民が食われる。ここはオモチャみたいなワニの作り物を使ったミニチュア特撮で、ボートから換算してその全長は10メートル程と巨大だ。何とか逃げた2人の報告を受けた社長だが、大金を注ぎ込んだ事業に支障を来すと招待客には隠蔽し、予定通りイカダ風のターザン号(実はモーター動力)によるナイト・クルーズを強行する。

 だが敵は人食いワニだけではなかった。開発に反発するクーマ族は町と結ぶ無線のケーブルを切断し、ンクルーナを鎮める生贄としてアリを拉致する。イカダに大股開きで大の字に縛られ、白いワンピースが濡れてスケチクするバーバラの見せ場だ。そこへンクルーナが現れ、ターザン号にアタックして衝撃で落ちた人間をバクバク噛み殺し、ダニエルがアリの救出に駆け付けたイカダにも向かう。陸ではクーマ族が待ち構え、ンクルーナから逃げてきた招待客に火が点いた弓矢と手槍をお見舞いしていく。社長も射抜かれ、ターザン号もホテルも大炎上! 水面で漂う人々を「バキバキ!」と次々にンクルーナが噛み殺していく。終了近くなってようやく全容を見せる実物大に作った巨大なンクルーナ。ラストはダニエルが、森林伐採用のダイナマイトと酸素ボンベを一緒にしてンクルーナの口に放り込んで頭を吹っ飛ばす!

 十数人の生存者が肩を寄せ合っているところへクーマ族が詰め寄り、「もうだめか」とみんなは観念するが、浅瀬で死んでいる首なしンクルーナを見たリーダー格が快哉を叫び、全員で引き上げていく。どうやら邪神を退治した白人を讃えたのだ。さてアフリカにアリゲーターがいた理由は......何も語られず物語は終了する(え〜)。


 監督のセリジオ・マルティーノは、『パニック・アリゲーター』の直後に同じスタッフと出演者でSF映画を撮ったが、ここでもバーバラ・バックのスケチクが。......気が変わった。次回、ワニ映画第3弾を急遽変更して、H・G・ウェルズ原作の名作『ドクター・モローの島』(77年)をパクった『ドクター・モリスの島 フィッシュマン』をお送りしよう!

(文/天野ミチヒロ)

おまけ:『パニック・アリゲーター 悪魔の棲む沼』のVHSジャケット(VHS廃番/筆者私物》

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