第89回 DCもマーベルもマルチプラットフォームがこれからの主流!

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作の『ワンダヴィジョン』の配信がディズニープラスで始まりました。
『ワンダヴィジョン』は映画ではなく連続ドラマの形をとっていますが、"シネマティック"としてカウントされています。というのも、もともとMCUは映画同士を組みあわせるという画期的な手法で成功しました。アイアンマン、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカの映画を順繰りに公開して『アベンジャーズ』につなげる。『アントマン』で語られた伏線が『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』につながる等です。
それを今後は、映画と映画だけではなく、映画とドラマの連携させていくわけです。映画『アベンジャーズ エンドゲーム』の後の話がドラマ『ワンダヴィジョン』であり、ここから21年末公開予定の映画『スパイダーマン』最新作、22年公開の映画『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』につながるとされています。この先MCUはディズニープラスで新しいヒーローをいくつかデビューさせ(『ミズ・マーベル』『シーハルク』『ムーンナイト』『アイアンハート』等)、人気・知名度を獲得してから映画に登場させていくという戦略も考えているようです。

MCUがディズニープラスの配信ドラマに力を入れるのは、昨今のコロナ禍の影響ではありません。このプランが大々的に発表されたのは19年でしたから、早くから劇場公開作品と配信ドラマの融合を考えていたというべきでしょう。
正直、僕はどこかに"映画とドラマは別物"という偏見があり、これがうまくいくのか「?」だったのですが、スター・ウォーズ物でディズニープラスで展開している『マンダロリアン』が素晴らしかったこと、そして『鬼滅の刃』の成功をみて、これは「あり」だなと思うようになりました。
『鬼滅の刃』について僕は本当に「にわかファン」なのでここで作品について語る資格はありませんが(笑)やはり配信で楽しんでから映画館にかけつけました。好きなアーチストの作品を自宅でずっと聴いている、そしてその人のライブに行くみたいな高揚感がある。従ってMCUも配信で毎日、毎週、習慣として楽しんで、年に何回かイベントとして映画館に行くというスタイルが定着するかもしれない。

つまり配信と劇場映画はファンにとって、コンテンツにとってどっちも大事なプラットフォームになります。また同じヒーローの物語でも2ヶ月かけてじっくり主人公とつきあっていきたい時もあれば、2時間のお祭りとして映画館の大スクリーンでドドーンと楽しみたいエピソードもある。そのお話を伝えるのに最適な手段はなにかということで映画と配信を使い分けていくことは歓迎すべきです。

さてマーベルと並ぶアメコミ・ヒーロー界の巨人DCも劇場作品と配信に力をいれていく模様です。DCにはHBO Maxという配信サービスがあり(いまのところアメリカ国内のみ)、今後は
*予算を書けた超大作は22年から毎年1本ずつ4年にわたって公開
*それ以外の作品(いきなり劇場公開にするのはちょっとリスキーなキャラ/作品)はHBO Maxを使っていく
という方針をうちだしました。

要はバットマンは劇場公開大作、知る人ぞ知るヒーローであるスタティック・ショック(電撃能力を持った黒人の青年ヒーロー)はまだ映画で独り立ちするほどではないから、まずはHBO Maxデビューということです。
大きなビジネス上の考え方はMCUと一緒ですが、作品の作り方に若干の違いがあります。そもそもDCは映画とドラマは別物=別世界観でいい、と割り切っていたのです。

例えばバットマン/ブルース・ウェインについては、映画版ではベン・アフレック、配信ドラマ『タイタンズ』(HBO Maxの前に「DCユニバース」という配信サービスで流れていたドラマ)ではイアン・グレン、TVドラマ・シリーズ『ゴッサム』ではダヴィード・マズーズが、この役をそれぞれ演じており、彼らがほぼ同タイミングで存在していたのです(笑)
必ずしも映画とドラマは連動しなくていい、辻褄をあわせなくていい、映画館で観たいバットマンの冒険とドラマで視たいバットマンの話は違って当然だ、ということですね。
とはいえ、今後のHBO Maxでは今年公開の劇場用映画『ザ・スーサイド・スクワッド』来年公開の『ザ・バットマン』のスピンオフの
ドラマ・シリーズをHBO Maxで配信するらしく、映画とドラマはつながるというMCU的な発想もとりいれていくようですが。

DCがMCU以上に「メディアの特性に合わせてキャラクターの物語を作る」というスタンスなのは、マーベルより早くメディア展開をしてきたからかもしれません。
そもそもヒーロー・コミックの出版社としてはDCの方がマーベルより古く、ラジオ、映画、TVドラマ、アニメ、超大作映画、ゲームと様々なメディアにヒーローたちの活躍を広げる、ということについても一日の長があります。さらにマルチバース(多元宇宙・並行宇宙)という発想で、いろいろなバージョン=世界観のスーパーマンやフラッシュがいてもいい、というアイデアもDCが先でしたからね。
(なお、こうしたDCの足跡を網羅した、大型展示イベントは『DC展 スーパーヒーローの誕生』が日本で初開催されます。6月25日の東京・六本木ヒルズ展望台 東京シティビューでの開催を皮切りに22年まで福岡・大阪・名古屋と巡回していく予定です。楽しみですね!)

https://static.tokyo-np.co.jp/tokyo-np/pages/event/taod/

配信というプラットフォームはエンタメ界に大きな影響を与えました。そしてマーベルやDCにとっては、またヒーローの活躍の場が増えたということです。
様々なマルチバースで活躍するヒーローたちの冒険を、マルチプラットフォームで楽しむ時代が来るのです。

(文/杉山すぴ豊)

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