【栄養士解説】イノシシの刺身は絶対NG!肉における生食の危険性

NHK『あさイチ』で“イノシシの刺身”を紹介 野生獣の生食許可をめぐりネットで波紋

記事まとめ

  • 『あさイチ』で“猪の刺身”を「生食は保健所が申請を受付けた店のみ提供可」と紹介
  • これにネット上では「野生獣の生食を保健所が許可するのはありえないのでは?」と波紋
  • 福祉保健所に再度確認すると「生食はせず、加熱して食べるよう指導」と言われたらしい

【栄養士解説】イノシシの刺身は絶対NG!肉における生食の危険性

【栄養士解説】イノシシの刺身は絶対NG!肉における生食の危険性

【栄養士解説】イノシシの刺身は絶対NG!肉における生食の危険性の画像

2016年9月27日(火)に放送されたNHKの番組「あさイチ」にて、西表島(沖縄県)の“イノシシの刺身”が「イノシシの生食は保健所が申請を受け付けた店でだけ提供ができる」と番組で紹介されました。

これを受けて野生獣の生食を保健所が許可することはありえないのでは?とネット上で波紋が広がり、担当者が福祉保健所に再度確認したところ「先日の回答は勘違いで、生食はせず、加熱して食べるよう指導している」とのコメントを得たそうです。

そこで今回は栄養士の横川先生にイノシシの刺身のこと、イノシシ以外にも気をつけたい肉の生食について解説をしていただきました。
イノシシの刺身を提供することが法律で禁止されていない?
イノシシの刺身とは、通常のお魚の刺身と同様に、イノシシを生のままさばいて皿などに盛り付けた料理です。

食用とする野生鳥獣(シカやイノシシなど)は、厚生労働省から出されている「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」で以下のように基本的な考え方や取り扱い方がのべられています。

「食中毒の発生を防止するため、中心部の温度が摂氏75度で1 分間以上又はこれと同等以上の効力を有する方法により、十分加熱して喫食すること」

なので、イノシシの生食は牛のレバ刺しのように法律で禁止されているわけではないため、生食用として提供しても罰則などはないのが現状です。

しかし、E型肝炎や腸管出血性大腸菌症の食中毒、また寄生虫の感染のリスクがあることから生食は認められていません。そのため、食品衛生法で食中毒など引き起こした場合は罰せられます。

そのため、保健所で安全を配慮し、お店で生食を許可することは基本的にはありえない可能性が高いと言えます。
食品衛生法で生食が禁止されている食材


牛肉

食品衛生法では牛のレバー(レバ刺し)の生食用として販売・提供を禁止しています。

今後、研究など進み、安全に食べられる方法が見つかれば規制の見直しの検討するようですが、現段階では、牛のレバーを安全に生で食べる方法がないためです。

生で食べた場合、腸管出血性大腸菌による重い食中毒の発生が避けられないからと厚生労働省のホームページでは訴えています。


豚肉

牛だけでなく豚レバーを含む豚肉も禁止されています。劇症化することもあるE型肝炎や様々な食中毒のリスクがあるためです。
イノシシの刺身を食することによって考えられる感染症

E型肝炎

E型肝炎ウイルス(以下「HEV」)の感染によって肝臓に炎症が生じる急性肝炎です。ごく稀に劇症化し、1~2%は死に至るケースがあります。

特に妊婦は劇症化しやすいことで知られ、死亡率が20%に達すると言われているので注意が必要です。

<感染経路>
主にウイルスに汚染された水や食品を飲食することによる経口感染によるものです。

開発途上国で流行する急性肝炎と知られ、国内では、開発途上国等で旅行者が感染する輸入感染と考えられていましたが、最近では獣肉等を生で食べることによる感染例が見られることから、国は注意喚起しています。

<治療・予防>
特別な方法はなく、安静臥床(動かないで静かにベッドで横になっていること)を原則とした自然治癒が基本です。


腸管出血性大腸菌感染炎

O-157などの腸管出血性大腸菌によって引き起こされる感染症です。激しい腹痛と水のような下痢、さらに、嘔吐や血性下痢を引き起こし、重い場合は死に至るケースもあります。

<感染経路>
感染は、菌に汚染された飲食物を食べることや手指による経口感染がほとんどです。少ない菌でも感染し、1996年には、学校給食が原因で大規模な食中毒が発生したことで有名です。

<治療・予防>
治療は、場合によって抗菌剤による治療が行われますが、安静にし水分を十分に摂ることなど、対症療法が基本です。くれぐれも加熱不十分や生肉は食べないようにしましょう。


旋毛虫症(トリヒナ症)

十分に加熱または凍結されていない動物の肉を食べると、旋毛虫と呼ばれる寄生虫に感染し、発症します。

症状は一般的には自覚症状がないものもありますが感染した肉を食べた1週間後くらいに下痢や腹痛が現れ、2日〜1週間ほど続きます。

<感染経路>
一般には食肉とされていない、肉が主のため、野生の動物を狩猟する人たちが食べたことで感染するケースが多いです。

国内の感染源はクマ肉で有名ですが、人獣共通感染症のため基本的には豚、猪、馬、鹿など、あらゆる動物に寄生していることから、海外では馬、猪、豚など感染源と知られています。

<治療・予防>
予防策としては、加熱処理などをしっかりと行なうことが重要になります。


肺吸虫症(肺ジストマ症)

モズクガニやサワガニに寄生する幼虫を食べたことで肺に起こる感染症です。

主な症状は、咳と血の混ざった痰です。悪化すると胸水がたまったり、気胸(空気やガスがたまった状態)を起こし、肺が苦しくなります。

<感染経路>
調理の際、手指や包丁に幼虫が付いたことから発症したりしますが、イノシシの肉の刺身を食べることでも発症が確認されています。

<治療・予防>
治療は、抗寄生虫薬を用い、胸水がたまっている場合には、胸水を抜いてから治療となります。

予防としては、やはり生で食べないようにすることです。また、調理した器具はすぐに洗ったりと慎重に扱う必要があります。
規制はされていないもの、生食にリスクがある食材




鶏肉や鶏の内臓を食すことでの感染が多く見られるのが、カンピロバクターによる食中毒です。

カンピロバクターはわずかな菌数でも発症しやすいため、発生件数が多く、肉の鮮度に関係なく発症するため鮮度が良いから大丈夫!というものではありません。菌が付着している肉を十分に加熱しなければ、食中毒になる可能性があります。


馬刺し

馬刺しは、食後、数時間(4〜8時間)程度で嘔吐や下痢が認められるサルコシスティス・フェアリーによる食中毒になる恐れがあります。

この食中毒は一般に重症化することはなく、比較的軽い症状で回復できます。予防には加工・流通段階で馬肉を冷凍することが、発症リスクを低くすると言われています。


牡蠣

牡蠣から感染するケースが高いのは冬場に発生が多い、ノロウィルスです。

感染力が強いウィルスで、汚染された牡蠣やハマグリ、シジミといった二枚貝を十分に加熱しない状態で食べると、小腸粘膜で増殖し、感染性胃腸炎を引き起こします。

ノロウイルスは熱に弱いため、中心部が85℃から90℃で90秒を目安に加熱して予防するようにしましょう。
肉を生食するさいに注意すべき点
◎肉の生食は避け、十分に加熱してから食べましょう

◎生肉に触ったら、よく手を洗い、次の作業に移りましょう

◎生肉専用の調理器具で調理しましょう。また、使い終わったらすぐ洗い、その後、熱湯をかけると消毒効果があります

◎食べる時には生肉に触れた箸などで食事をしないようにしましょう

◎生の肉を冷蔵庫などに保存する際は、他の食品(野菜など)と分けて保存しましょう
横川先生からのアドバイス
生食は食中毒のリスクがあることを忘れないでください。また食中毒に効果があるのは予防です。

その為、肉を生食するさいに注意すべき点などを把握した上で調理して美味しく楽しい食事時間にして頂ければ幸いです。

(監修:栄養士 横川仁美)

関連記事(外部サイト)