なぜ脳は気持ちいいことをやめられないのか?

なぜ脳は気持ちいいことをやめられないのか?

@DIME アットダイム

 脳科学という言葉がいつの間にか、一般的なものになった感がある。テレビや新聞、雑誌など、あらゆるメディアで目にすることが多くなった。その背景には、研究が進んだことがあるのだろう。

 とは言うものの、脳科学と聞くとまだ、難解な印象を持つ人も多い。やはり、身近に感じられる行動などとの関係と一緒に解説してくれると、理解しやすいところ。そうしたニーズに応えた入門書的な一冊が、『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』(アスコム刊)である。

 同書は、脳のクセを分析し、どのようにすれば幸せに過ごせるのかを紹介したコミックエッセイ。原案は、テレビや雑誌でもおなじみの話題の脳科学者、中野信子さんが担当。恋愛、食欲、人間関係、などで抱える悩みに対し、脳の仕組みや機能からアドバイスを行なっている。中野さんのコラムが5本挿入されている以外はコミックで構成されているので、難しそうな内容に思えても肩肘張らずに読むことができる。まさに初心者向けのつくりなので、少しでも興味があれば、まずは手に取ってみてもいいだろう。

■脳はだまされる!?

 コミックは、様々な悩みごとや相談ごとを抱えた登場人物たちに、中野さんが脳科学の見知から原因や理由を明かし、解決法なども授けてくれるパターンで進行する。悩みや相談の内容は、身近に感じられるものであることに加え、脳と関連が感じられないものばかり。この関連が感じなれない点が脳科学の面白さだと捉えれば、同書は面白く読むことができる。

 例えば同書では、登場人物の一人が「痩せるにはどうすればいいか?」という悩みを相談している。一見すると、脳とダイエットの関連は見えないが、中野さんはひと言、「食欲をコントロールしている脳をだまし、食べたことにすることができる」。自分が食事したことをリアルに想像してみると、想像しなかった場合と比べて食べる量が20%ほど減ったという研究成果をあることを引き合いに出し、

 空腹を紛らわせると「あ! 満たされた」…と脳がだまされてくれるわけです(※66ページより抜粋)

 と説明する。ダイエットというと、ストイックに取り組み自分を追い込まないと成功しないイメージがあるが、食事したことを具体的にイメージするだけである程度の効果が見込めるとは、目から鱗が落ちる思いだ。

■脳は現実と理想の区別がつかない

 もうひとつ、ダイエット絡みの悩みを例に出すと、途中で挫折し失敗してしまうというものも収録されている。この悩みに対し中野さんは、まずイメージしやすい身近な目標を設定することと説く。その理由は、次の一文から充分理解できる。

 脳は現実と理想の区別がつかないので現実の姿ではなく理想の姿をイメージすることです(※112ページより抜粋)

 理想の姿をイメージするとは、まるでアスリートのイメージトレーニングと同じ。一流のアスリートほどイメージトレーニングがうまくできているものなので、ダイエットもスポーツと同じと考えれば合点のいく話である。また、途中で挫折することなく目標を達成するためには、健康な脳が不可欠で、バランスの良い食事が大切とも強調。脳科学者だから当然なのだろうが、ダイエットに関してここまで脳の役割や働きこだわって話を展開するのには、正直言って新鮮な感覚を覚える。

 ダイエットに限らず誰もが悩みそうなことが、実は脳と深く関係していることが同書を読めば理解でき、一つひとつの話に納得させられる。そして、脳科学のように一般人にとってはまだ難解に感じられるものをわかりやすく紹介する方法として、コミックエッセイは最適だということも思い知らされた。

■関連情報

『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』
アスコム刊
中野信子原案/ユカクマ漫画
1000円+税

文/大沢裕司

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