お金は?ケアは? 入居後の老人ホームとの上手な付き合い方とは

お金は?ケアは? 入居後の老人ホームとの上手な付き合い方とは

ホームにもいろいろな場所があります。不安な点は正直に伝えれば、相手の力量がわかることもあります(※イメージ写真)

 散々苦労してようやく老人ホームに入居できても、そこから発生する問題も多くあります。そこで、週刊朝日ムック『高齢者ホーム2017』に掲載した、「有料老人ホーム・介護情報館」館長の中村寿美子さんの「介護のお悩み相談室」を特別に公開。中村さんにさまざまな悩みに回答いただきました。

*  *  *
【お悩み その1】母が老人ホームから退居したがっている(56歳男性)
 有料老人ホームに入居したものの、母はことあるごとに「家に戻って気ままに暮らしたい」と訴えます。そんな母がふびんです。経済的な援助は私がするので、母の思うようにさせてあげたいのですが、それまで面倒をみてきた姉と妻は「一人暮らしは無理」と取り合ってくれません。こういう場合、どうするのが一般的なのでしょうか。

【回答】
 現在お母さまが元気にお過ごしなのは、安全で環境の整った場所にいて、24時間職員の見守りがあってのことと思います。「一人暮らしは無理」という周囲の意見は、自宅に戻ったところで、家族が振り回されるのが目に見えているからではないでしょうか。

 入居しているホームの質が悪ければ別ですが、多少の愚痴は聞き流して、買い物や美容院など外に出る楽しみを考えてあげるのもひとつの方法です。もっとも、あなた自身が介護離職をしてでも、100%お母さまの面倒をみると腹をくくるのであれば形勢も変わってくるでしょう。

 ただし、この先20年、30年と続く自分たち夫婦の生活に目を向けることもお忘れなく。

 冠婚葬祭のようなことであれば世間の常識という判断も可能でしょうが、「暮らし方」に常識はありません。あくまでもご家族で話し合ったうえで決めるのがよいと思います。

【お悩み その2】母がホームでほったらかしにされている(66歳女性)
 認知症の母を一人で見てきましたが、親戚の勧めもあって、母には有料老人ホームに入ってもらいました。ところが、母はいつもほったらかしにされているようです。ホームに文句を言ってもよいものでしょうか。

【回答】
 自宅で行う1対1の介護と、複数の入居者に対応するホームでの介護は同じではありません。これまで一人で見てきたあなたにとって、ホームの介護が物足りなく感じられるのは仕方のないことだと思います。ただ、いくら職員配置が手厚いホームであっても、「常に母親のそばにいてほしい、特に目を掛けてほしい」というのは無理な注文です。

 ホームに介護力がなければ論外ですが、気持ちに折り合いをつけるためにも、施設長やケアのリーダーにあなたの正直な思いを伝えてみてはどうでしょうか。いかに家族の心情を理解してくれるかどうかで、ホームの力量もわかります。理不尽な要求でない限り、誠意をもって対応する姿勢が見られなければ、ほかに移ることを考えてもよいと思います。

 ホームにとって家族からの意見は貴重なものですが、最近は「お金を払っているのだから」という権利意識の高い家族への対応に苦慮するホームも増えています。認知症の介護は家族だけではいつかは限界がきます。家族のほうも「共に介護を担っている仲間」という意識を持ってホームとお付き合いするのがよいと思います。

【お悩み その3】夫の定年後も義母のホーム費用が払えるか心配(59歳女性)
 在宅介護を経て、姑が有料老人ホームに入って5年になります。何かあれば私がお世話をし、ホームとの窓口になってきました。夫と義姉(夫の姉)は、都合のよいときに訪ねるだけです。また、ホームの費用はわが家の家計から出していますが、夫は来年定年を迎えます。自分たちの生活を考えると不安で、私一人が気をもんでいます。今後どうすればいいのでしょうか。

【回答】
 息子の妻が介護を担っている割合は年々低くなっているなかで、50代という若さで、これまで本当によくやってこられたと思います。昔と違って、きょうだいの数が少なくなったので、夫は夫の親、妻は妻の親の介護をする「介護は実子」というのが近年は増えているようです。

 ホームの費用負担については、お姉さまを含め、家族で話し合う必要があるでしょう。場合によっては、ホームを移ることも考えられます。経済的なことが心配とのことですが、気が休まらないのは、知らん顔の義姉、自分たちの人生設計を考えない夫への歯がゆい思いがあるからではないでしょうか。

 介護の問題は家族の問題であり、夫婦の問題でもあります。夫婦関係がよければ、それほど介護でもめることはありません。以心伝心を期待せず、できないことははっきりと伝え、自分の健康と生活を第一に考えるようにしてください。あなたの苦しさを夫が理解して受け止めてくれるならば、これから長く続く夫婦の生活は心穏やかなものになると思います。

【お悩み その4】どのくらいの頻度でホームに面会に行けばいい?(50歳男性)
 母は実家で一人暮らしをしています。最近、ケアマネジャーから「認知症が進んできた」と言われたので、私たち兄弟で話し合って、母には郊外の老人ホームに入ってもらうことにしました。私も弟も仕事が忙しく家庭もあり、頻繁にホームを訪ねることは難しいのですが、一般的にどのくらいの頻度で面会に行けばよいのでしょうか。

【回答】
 毎日のようにホームを訪ねる家族もあれば、めったに顔を出さない家族もあるので、一概にどのくらいとはいえません。どの家族にもそれぞれの生活があります。必要があればホームのほうから連絡がいくでしょうから、無理はしないことです。

 ただ、たとえお母さま自身が納得してホームに入ったとしても、知らない人に囲まれて暮らす寂しさはあるはずです。家族の顔を見るだけで安心されるでしょうから、どうぞ回数にこだわらず、都合のいいときに顔を見せに行ってあげてください。訪ねたときには、外に連れ出してあげたり、一緒に食事したりすると喜ばれると思います。事前にホームに申し出れば、家族の食事も用意してもらえます。  

 入居に際して、わからないことは決して抱え込まず、ホームに相談しながら少しずつなじんでいかれるのがよいでしょう。

 現場の職員とコミュニケーションを取ることで不安が解消されることは数多くあります。

※週刊朝日ムック『高齢者ホーム2017』

関連記事(外部サイト)