小学生の3割は“老化現象”が進んでいる!? 深刻化する子どもの「運動機能の低下」の実態

子どもの3-4割にからだの硬直や筋力低下など“老化現象”が起こっている可能性

記事まとめ

  • 近年の子どもは運動機能が低下している、すぐに疲れる、などといわれるらしい
  • 子供の3-4割にからだの硬直や筋力低下など“老化現象”が見られる可能性があるという
  • この“老化現象”の原因は、運動器の発達不足、中でも『体幹筋』の未発達にあるらしい

小学生の3割は“老化現象”が進んでいる!? 深刻化する子どもの「運動機能の低下」の実態

小学生の3割は“老化現象”が進んでいる!? 深刻化する子どもの「運動機能の低下」の実態

『跳び箱に手をつき骨折する子ども: 子どもの「運動機能の低下」の実態 (ポプラ新書)』(柴田輝明/ポプラ社)

 近年の子どもは運動機能が低下している、すぐに疲れる、などといわれる。『跳び箱に手をつき骨折する子ども: 子どもの「運動機能の低下」の実態』(柴田輝明/ポプラ社)によると、状況は私たちが想像するより深刻のようだ。

 わが子が次の項目群に多く当てはまるようなら、もしかしたらその子に“老化現象”が始まっているのかもしれない。

□ 挨拶ができない
□ 片脚立ちができない
□ くにゃくにゃして立っている
□ 腕がまっすぐ上がらない
□ しゃがめない
□ 体育座りができない
□ イスにきちんと座れない
□ うつむいて歩いている
□ 歩き方がロボット歩き・不自然
□ 危険を避けることができない(転んだときによけられずケガをする、受け身がとれないなど)

 本書によると、これらは「子どものロコモ」に見られる状態。ロコモとは、正確には「ロコモティブシンドローム(運動機能の低下)」。高齢者に対して使われることが多い。

ロコモティブシンドロームとは

加齢による筋力の低下、関節の病気、骨粗しょう症による骨折などによる身体機能の衰えから、「寝たきり」や「要介護」の危険性が高まる状態。

 つまり、先の項目群に多く当てはまる子どもにはからだの硬直や筋力低下など“老化現象”が起こっている可能性がある、と本書は警告しているのだ。本書によると、ロコモが見られる子どもの割合は、なんと全体の3〜4割にも達する。

 先の項目群の「片脚立ちができない」「しゃがめない」「体育座りができない」「危険を避けることができない」などはロコモによるものと納得しやすいかもしれない。しかし、「挨拶ができない」「うつむいて歩いている」といった、一見運動機能に関係なさそうな状態も含まれているのは、なぜだろうか。親のしつけによるものとも考えられそうだ。

 本書によると、「子どものロコモ」の原因は、運動器の発達不足、なかでも「体幹筋」が育っていないことにある。

体幹筋とは

からだ(体躯)の中心部全体を支え、動かしている筋肉群のこと。腹筋や背筋、腰回りの筋肉全体を含め、運動器の中でも根幹となる部分。

 からだを支える体幹が弱いと、「起きているだけでだるい」「動くと疲れるから家でごろごろしていたい」という状態が続き、毎日が無気力になっていく。すると、生活にメリハリがなくなり、睡眠が浅くなって生活リズムが崩れる。睡眠不足が日中の眠気となり、さらなる疲れやすさや食欲不振、注意力散漫、集中力の低下、さらには突発的なイライラ、大声、暴力などにつながっていく。このように、「子どものロコモ」は生活態度や礼儀作法、そして学習成績にも悪影響を及ぼすというから恐ろしい。

 また、ロコモの子どもが自覚なしに過度な動作や運動を行うことで、思わぬケガや事故に遭う危険性が高まる。本書は、子どものロコモと関連すると思われるデータとして、中学校での骨折事故の発生率を示している(「学校の管理下の災害―基本統計―」独立行政法人日本スポーツ振興センター)。これによると、1970年から2011年の40年間で中学校での骨折発生率は約2.5倍に。中学生になって成長期に入ると、1年間で平均7センチも身長が伸び、からだが大きくなる。しかし、筋肉は骨格が大きくなった後に成長する。「体格はいいけれども、筋力がない」状態で激しい運動をすると、筋肉が痛み、からだの柔軟性が低下する。子どもの骨格は大人よりも軟骨でできている部分が多いため、からだを支える関節や軟骨を大きく痛め、これらが相乗効果的に作用して骨折を招いてしまうのだという。

 では、子どものロコモを防ぐためには、どうすればよいのだろうか。本書は、乳幼児のときから、全身運動である「ハイハイ」をしっかりと行うことで、体幹筋の成長が促されると述べる。近年のマンションに多いフローリングの床では、畳の部屋より滑りやすいため蹴る力を使いにくいが、カーペットを敷くなどの方法を取るとよいそうだ。

 では、ハイハイをあまりしなかった子どもは、ロコモから逃れられないのだろうか。そんな子どもには、遊びや日常のお手伝いの中で、四つ這いになるような運動をできるだけ設ける方法があるという。例えば、お手伝いなら家の中の掃除にぞうきんがけを取り入れる、という工夫が紹介されている。

 また、親子で次のような体幹トレーニングに取り組むのもいいかもしれない。

 本書の「寝たままできる体幹トレーニング」から一部紹介

■ 背伸び運動
仰向けに寝てヘソを見るように首をあげ、そのまま両手を頭の上にのばす。

■ 起き上がり
ひざを立て、両手を頭の後ろに組み、腹筋を使って頭を持ち上げる。

■ バタ足
あごを支えるように腕枕をし、ひざを曲げずに片足ずつ上げる。

■ エアープレーン
両腕、両足をしっかり伸ばし、おなかを中心に反らせる。

■ キャット&ドッグ
四つ這いになり、頭をあげて背中を反らす。猫のように背中を丸める。

 子どもの一日の運動遊び時間は60分が理想とされているが、骨折のリスクが高い者は、これに一日10分の運動を追加するか、1000歩多く歩くと、骨折リスクが13%減少するというデータがあるらしい。本書で紹介されている「寝たままできる体幹トレーニング」をはじめとした体幹筋を鍛える活動や運動を、一日の間にまとめて、または細切れに計10分以上行うことを勧めている。

 超高齢化社会の中で、健康に介護なしで日常生活を長く送る「健康寿命」が重視されつつある。高齢者になったときのロコモ対策にもつながる子どものロコモ対策の重要性を、本書は強調している。

文=ルートつつみ

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