宇宙戦争を繰り広げる世界の大金持ちたち それは道楽か?
2021年04月07日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITAL

スペースXのイーロン・マスクCEO(C)UPI/ニューズコム/共同通信イメージズ
(杉村富生/経済評論家)
新たな米中摩擦というか、ここは無法地帯といわれている。一触即発の危機にあるという。アメリカ、中国、ロシア、インドなどの宇宙開発競争のことだ。これは「宇宙戦争(スターウォーズ)」と呼ばれている。
発端は1991年の湾岸戦争だ。米軍のミサイルがイラク軍の軍事施設をピンポイントで次々に破壊した。衛星を駆使した全地球測位システム(GPS)の活用である。
これにはロシア、中国は焦ったに違いない。両国はアメリカに軍事力で対抗するよりも衛星を無力化する方法を選択した。
これによって、敵の衛星を破壊するとともに、通信、サイバー攻撃ができる。
一方、民間サイドによる宇宙ビジネスも活況だ。
宇宙旅行を手掛けるヴァージン・ギャラクティック・ホールディングス、衛星ビジネスのロケットラボはNY市場、ナスダック市場に上場しているし、先発のロッキード・マーティン、ボーイング、さらにはトヨタ自動車、ソニー、キヤノンなどが宇宙ビジネスに意欲を見せている。
それと、宇宙ビジネスに話題を提供しているのはイーロン・マスク氏のスペースX、ジェフ・べゾス氏のブルーオリジン(ともに非上場)の存在だろう。
あらためて述べるまでもない。マスク氏はテスラ、ベゾス氏はアマゾン・ドット・コムのオーナー(創業者)だ。世界有数の大金持ちである。資産は「兆円」を超える。
金持ちの道楽? いや、違う。夢とロマンである。両氏は最終的には「月移住計画」を持っている。「この地球では人口100億人を養えない」と。
もっとも、各社の現在の収益源は衛星の打ち上げだ。スペースXの軌道上の衛星数は1000基に達する。
ともあれ、宇宙は「人類最後のフロンティア」と形容されている。その市場規模は3000億ドルちょっとだが、2040年には1兆ドル(約109兆円)を上回るという。
まさに、「宇宙経済ビッグバン」である。星空はきれいだが、その空間(スペース)では大国、および資産家の激しい闘いが繰り広げられている。