医薬品以外にも拡大する「コールドチェーン」市場 “冷やす技術”が日本経済を底支え

医薬品以外にも拡大する「コールドチェーン」市場 “冷やす技術”が日本経済を底支え

大隅物流の保冷トラック(C)日刊ゲンダイ

高齢者向け新型コロナワクチンの接種が開始。ファイザー製はマイナス75度(プラスマイナス15度)で保管され、解凍希釈後は常温で6時間まで。そのため、接種現場でドタキャンが出ると、供給量不足なのに廃棄せざるを得ない混乱が起きている。

 この厳しい温度管理の医薬品を支えているのが、コールドサプライチェーン(低温輸送網)だ。生産から小売りまで所定の温度に保つ技術である。

 医薬品専門の輸送会社である大隅物流有限会社(茨城県)の山川栄明社長は低温輸送の厳しさについて、こう説明する。

「(温度がマイナス75度という)コロナワクチンはかなり特殊な事例です。通常の錠剤や注射剤はそこまで要求されません。しかし医薬品はワインのように寝かして品質が上がることはありません。品質は下がる一方なので、なるべく温度が逸脱しないようにします。保冷車は満載にせず、別の荷を下ろすたびにトラックのドアを開ければ温度も変わるので混載もできません」

 医薬品についてはGDP(医薬品に関する物流の基準)という厚生労働省が2018年に出した基準がある。大隅物流は、スイス製の温度記録装置を用いて医薬品を輸送する保温車両の荷室内温度の均一性評価を実施し、トラック輸送中の温度記録を証明。ドイツ製の保冷コンテナの管理も実施。そのことでWHOやEUの基準を含む「医薬品輸送国際品質認証制度」を日本陸送業界で初めて取得。

 ファイザー製ワクチンの輸送は米国製の箱と温度計を使っているそうだが、「日本でもいま日本独自の保冷箱や温度計の開発競争が起きています」(山川さん)との動きもある。運送大手ヤマトホールディングスは今年2月にGDP基準を満たす専用の保冷輸送箱を開発、混載も可能にしている。

■厳しい温度管理はワクチンだけじゃない

 コールドチェーンは医薬品だけではない。地酒が日本中に出回るようになった日本酒業界や漁業など食品も同様。船舶用冷凍機製造会社の元経営者、朝堂院大覚氏は当時を振り返る。

「昔はアンモニアを使って5時間かけて零下15度までしか下げられなかった。それをやっていたライバル会社が前川製作所(東京都)でした。前川喜平氏(元文部事務次官)のお爺さんの会社です。マグロ漁船は5、6カ月航海してその間冷凍します。しかしアンモニア冷凍のマグロは臭いがあるといわれていた。それで私が筆頭株主だったダイキン工業で短時間で零下60度まで下がる冷凍庫を開発した。鮮度が上がったことでマグロも倍の値段で売れるようになり、漁師も儲かった。冷凍庫も売れました」

 冷やす技術は経済を底支えしている。

(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)

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