4大学習塾で授業料が最も安いのは「日能研」 それでも塾通いは家計負担が大きい(文・田中幾太郎)

4大学習塾で授業料が最も安いのは「日能研」 それでも塾通いは家計負担が大きい(文・田中幾太郎)

日能研は4年生の授業料が月2万900円(C)日刊ゲンダイ

【受験戦線で要注意の新潮流】

「問題の根深さは日本も変わらない」と複雑な表情を見せるのは学習塾経営者。2021年7月24日、中国共産党と中央政府の国務院は、義務教育の生徒の宿題負担と校外教育負担を軽減していくと発表した。この中でもっとも衝撃だったのが学習塾への規制だった。小学生・中学生向けの学習塾の新規開設を禁止し、既存の塾に対しても非営利化を求めた。その後、中国国内の学習塾は次々に閉鎖に追い込まれている。

 思想教育の拠点でもある学校の地位が、急伸する学習塾に取って代わられると、愛国主義を進める習近平体制を脅かしかねない。今回の規制の狙いが体制強化にあるのは明らかだが、もうひとつの側面もある。高騰する教育費の抑制である。中国紙記者によると、大都市圏の学習塾の受講料は平均で月3000元(約5万円)かかるという。

■中国では教育費に月額17万円をつぎ込む家庭も

「中には子どもの教育に月1万元(約17万円)を超える額をつぎ込む親もいる。その結果、富裕層の子だけがいい学校に進み、いい就職先を得る。ますます格差が広がる元凶となっているのが学習塾なのです」(中国紙記者)

 日本ではさすがに政府が学習塾の規制に乗り出すとは考えにくいが、その状況はよく似ている。難関大学を目指すには、中高一貫校が圧倒的に有利。高い大学受験実績を上げている名門中高一貫校に合格しようと思ったら、学習塾は必須といっても過言ではない。

「うちのような小さな学習塾はともかく、大手は生徒獲得合戦が熾烈で、レベルアップを図るために、優秀な講師を集めたり、アクセスのいい場所の確保、教材の開発と、コストが莫大。その結果、大手の塾の費用は思いのほか、高くなっている」(学習塾経営者)

 最難関中高一貫校への合格者数で断トツの実績を誇るSAPIX小学部に、数年前まで息子を通わせていたという保護者の一人は、次のように話す。

「4年生になった4月から6年生の1月まで在籍しました。私の父に200万円ほど、援助してもらったのですが、結局足りなくなり、追加で100万円出してもらいました」

 その甲斐あって、息子は無事、難関の公立中高一貫校に合格。私立の有名校にも受かっていたが、公立に進んだ。

「父からはカネのことは任せておけと言われていたのですが、老後のための貯金を娘の私が食い潰すのも気が引けるので、公立に受かってくれて本当によかったです」

 SAPIXを選んで正解だったと振り返る保護者だが、費用については想定外だったようだ。どれぐらいかかるのか、4年生以上の場合を見てみよう。通常の授業料は4年生4万1800円(21年度、以下同)、5年生5万2800円、6年生5万9950円。学年が上がるにつれ、金額が上昇していくのは他の大手学習塾もほぼ一緒だ。

■200万円で足りるはずの授業料が100万円も不足

 なお、4大学習塾(日能研、SAPIX、四谷大塚、早稲田アカデミー)の中でもっとも授業料が安いのは日能研で、4年生2万900円、5年生2万6334円、6年生3万2076円となっている。

 息子をSAPIXに通わせた前出の保護者の場合も、通常の授業料だけなら、父親が最初に出してくれた200万円で足りるはずだった。しかし、それでは済まなかった。

「春・夏・冬期の特別講習、特訓、公開模試など、さまざまな場面で、新たな費用がかかってきました。選択しなくてもいいのですが、もしそれらを受講しないことによって、息子が志望する学校に合格できなかったらと不安になってくる。受けられるものはなるべく受けさせるという構えになっていったんです」

 たとえば、6年生の9〜1月の日曜日に行われる集中講座「難関校SS特訓」。14回の授業と4回のテストで27万4450円である。学習塾側から「受験当日に実力をピークに導くため」と言われると、保護者としては「これは外せない」となってしまうのだ。

「日本も中国と同じように、最終目標のいい大学に入るにはカネ次第になっている。もちろん、例外はあるにしても、その中心を担っているのが学習塾だというのはまぎれもない事実です」(前出・学習塾経営者)

 日本教育界をもっとも左右しているのが学習塾だとすれば、少し悲しい気がする。

(田中幾太郎/ジャーナリスト)

関連記事(外部サイト)