米バイデン政権は“トランプ弾劾裁判”で出はなをくじかれた
2021年02月10日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITAL

コロナ対策は急務だが(C)ロイター
バイデン政権は発足早々、大きなミスを犯したのではないか。トランプ氏に対する弾劾裁判である。
アメリカの大統領は就任後100日間を「ハネムーン」と称し、メディアなどは批判を控えるし、議会での法案審議は容易になる。これを受け、バイデン大統領は4月上旬までにコロナ制圧、景気浮揚の道筋を一気につける戦術(短期決戦)だったと思う。
それが狂った。過去のケースではクリントン大統領の弾劾裁判は決着(無罪評決)までに5週間、トランプ氏の1回目は同3週間を要した。大統領の弾劾は重たいものだ。上院議員の欠席は許されないし、「最優先」での審議を求められる。
それに、弾劾成立の可能性は極めて低い。発議は下院の過半数だが、“有罪”は上院の3分の2以上の賛成が必要だ。現在の議席50対50では共和党に17の造反が必須だ。これはまず、不可能だろう。
弾劾裁判はムダ? まあ、そう決めつける気はないが、それに近い。アメリカの分断に拍車をかける副作用がある。1・9兆ドル規模の新型コロナウイルス対策(American Rescue Plan→ARP)の審議は遅れる。
いや、この法案の成立は怪しくなっている。年初以来、ロビンフッダーの暴走、ゲームストップの乱高下が政治問題化している。カラ売りの多い銘柄を集中的に狙うロビンフッダー(蟻の集団)の襲撃はゲームストップの株価を18倍にし、巨大なヘッジファンド(巨象)を追いつめている。
彼らの資金源は失業給付金の上乗せ分と個人に対する直接給付(昨年1800ドル、今回1400ドル)だ。1人当たりの金額は小さいが、1000万人もの大群となって巨象を襲う。
もちろん、この背景には過剰流動性の存在がある。なにしろ、アメリカは昨今、流動性の供給、財政出動に880兆円を投じた。さらに、200兆円の景気対策である。確かに、株価は急騰した。しかし、貧富の差は拡大し、ウォール街はバブル景気に沸いている。
FRBの政策は正しいのか? 追加の景気対策が必要なのか? そんな声が上がるのは当然だろう。
(杉村富生/経済評論家)