ビジネス書「資本論」が人気の背景 コロナ禍で貧富の差拡大か

ビジネス書「資本論」が人気の背景 コロナ禍で貧富の差拡大か

ベストセラーに(C)日刊ゲンダイ

【プロはこう見る 経済ニュースの核心】

 ビジネス書の売り上げランキング(ジュンク堂書店大阪本店調査)の第1位に斎藤幸平(大阪市立大学経済学部准教授)著「100分de名著 カール・マルクス<資本論>」(NHK出版)がなった。NHK・Eテレの看板番組のテキストだけに注目を集めたのだろうが、「資本論」は150年も前に書かれた経済学の古典である。それがなぜ今、読者を引きつけるのか。

「まさに混迷の時代だからだろう。日本をはじめ先進国の経済が、いずれも成長力を低下させ、超金融緩和の下で財政赤字を肥大化させながらコロナ禍で呻吟している」と財務省関係者は分析する。

 そうした中で、斎藤准教授はマルクスを復権させるべく経済論壇に颯爽と登場したわけで、「これまでのように成長こそ第一という観点から脱却し、地球環境との調和を進めていくべきことが主張されている」(財務省関係者)と受け止められている。

 資本主義の下では、社会は豊かになっていくが、一部の人々はますます貧しくなっていく。この「富のパラドックス」を鋭く分析したのがマルクスの「資本論」の肝である。コロナ禍で世界的に広がる貧富の差こそ、マルクスを再び呼び起こしているのかもしれない。

■個人投資家vsヘッジファンドも…

 その端的な表れがいま米株式市場で展開されている個人株主によるヘッジファンドの締め上げでもある。標的にされたのはビデオゲーム販売の「ゲームストップ」株や映画館チェーンの「AMCエンターテインメント・ホールディングス」株など、ヘッジファンドがカラ売りポジションをとっていた銘柄で、若者を中心にした個人投資家とヘッジファンドの戦いで、株価はジェットコースターのように乱高下した。

「レディット・ショック」と呼ばれるこの攻防は長年、情報量や資本力で勝るヘッジファンドが個人投資家を食い物にしてきたとの不満が背景にあると指摘される。かつての「ウォール街を占拠せよ」と同じ構図だ。根っこにあるのは不安定雇用、低賃金、格差拡大に対する若者の怒りだ。

 日本でもマルクスの「資本論」が注目され、売り上げランキング1位になるのは、コロナ禍で出口が見えない若者の苦悩を如実に表している。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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