歯周病もアルツハイマー病の原因に! 真犯人「酪酸」が「脳」を侵食する?

歯周病もアルツハイマー病の原因に! 真犯人「酪酸」が「脳」を侵食する?

歯周病もアルツハイマー病の原因に(depositphotos.com)

 厚生労働省の『平成26年度 国民医療費の概況/患者調査の概況』によると、「歯肉炎」や「歯周病」の患者数は331万5000人 (男性137万3000人、女性194万2000人)。歯周病の有病率は20代が約7割、30〜50代が約8割、60代は約9割にのぼる。

 国民医療費40兆8071億円のうち、歯科診療の医療費は2兆900億円(7.1%)を占める。歯が20本以上ある人は72.8%だが、低所得の人ほど健診を受けないため、歯周病の有病率か高まる傾向がある(『厚生労働省 平成26年国民健康・栄養調査』より)。

 このようなデータは周知の事実だが、歯周病は、「狭心症」「心筋梗塞」「脳梗塞」「糖尿病」「誤嚥性肺炎」「骨粗鬆症」などの誘因になり、健康を阻害する重大なリスクファクターになる事実が判明している(日本臨床歯周病学会より)。

 さらに近日、歯周病を放置すれば、約300種類もの歯周病の原因菌が産出する「酪酸」が、「アルツハイマー病」の発症リスクを高めるとする研究が、初めて発表された。

歯周病菌が産出する「酪酸」がアルツハイマー病の真犯人

 日本大学歯学部の落合邦康特任教授(口腔細菌学)らの研究チームは、歯周病とアルツハイマー病の関連性をラットによる実験によって確認し、5月12日に福岡市で開かれた日本歯周病学会で発表した(「毎日新聞」2017年5月27日)。歯周病とアルツハイマー病の関連性を調べた研究は少なくないが、動物の体中で検証した研究は国内初だ。

 アルツハイマー病の発症機序は完全には未解明だが、体内の酸化反応が組織や細胞に危害を与える「酸化ストレス仮説」が有力だ。

 研究チームは歯周病の原因菌(レッドコンプレックス)となるP.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)、T.f.菌(タネレラ・フォーサイセンシス)、T.d.菌(トレポネーマ・デンティコラ)などが生成する「酪酸」が歯周細胞内に取り込まれると、鉄分子(ヘム)、過酸化水素、遊離脂肪酸が過剰に産出されるため、酸化ストレスによって歯周細胞が破壊されることに注目した。

 さらに研究チームは、「酪酸」が動物の脳にどのような影響を与えるのかを調べるために、健康なラット3匹の歯肉に酪酸を注射。6時間後に、記憶を司る「海馬」、ホルモンの分泌に関わる「松果体」と「下垂体」、さまざまな高度な活動を司る「大脳」、運動機能を調整する「小脳」が受けた酸化ストレスを分析した。

 その結果、「酪酸」を注射したラットは通常のラットに比べ、鉄分子(ヘム)、過酸化水素、遊離脂肪酸の濃度が全ての部位で平均35〜83%も上昇していた。

 特に「海馬」での上昇率が最も高く、ヘムは平均79%、過酸化水素は平均83%、遊離脂肪酸は平均81%、アポトーシス(細胞死)を誘導するタンパク質分解酵素のカスパーゼは平均87%も濃度が上昇。さらに、アルツハイマー病の患者の脳神経細胞内で物質輸送に関わるタンパク質の「タウ」の量が平均42%も増加していた。

 落合特任教授によれば、歯周病患者の歯周ポケットからは健常人の10〜20倍もの酪酸が検出されることから、歯周病巣の酪酸が長期間にわたって脳内に取り込まれると、アルツハイマー病を引き起こす一因になるので、早めに治療をすべきだと指摘している。
認知症患者は2025年におよそ700万人を超え、65歳以上の5人に1人

 アルツハイマー病は、記憶や学習に関わる海馬の神経細胞が徐々に壊死するために、脳の機能が失われる認知症(アルツハイマー型認知症)だ。認知症患者は2025年におよそ700万人を超え、65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されている。

 現在、約500万人とされる認知症患者のおよそ70%(約350万人)はアルツハイマー型認知症と推定されている(厚生労働省「認知症施策推進総合戦略 新オレンジプラン」)。

 アルツハイマー病を発症すると、直前の記憶がなくなったり時間や場所が分からなくなる見当識障害や言語障害が起きる。さらには、仕事や家事などができなくなる、人の顔や物の判別がつかなくなる、食事・入浴・着替えなどのADL(日常生活動作)が覚束なくなり、QOL(生活の質)著しく低下するなどの兆候を示す。

 やがて寝たきりになれば、発症後およそ10年余りで急死する。まさに死に至る病だ。

 今回のトピックで明らかなように、歯周病もアルツハイマー病のハイリスク因子になるエビデンスが確かめられている。一刻も早く、これらの難疾患の機序解明や創薬につながってほしい。
(文=編集部)

関連記事(外部サイト)